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現想と幻実: ル=グウィン短篇選集

現想と幻実: ル=グウィン短篇選集

現想と幻実: ル=グウィン短篇選集

作家
アーシュラ・K・ル=グウィン
大久保ゆう
小磯洋光
中村 仁美
出版社
青土社
発売日
2020-08-25
ISBN
9784791773022
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現想と幻実: ル=グウィン短篇選集 / 感想・レビュー

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紅はこべ

前半の現想篇で、ヴァージニア・ウルフっぽいと思ったら、解説で実際にウルフの影響を受けていると知った。SFが苦手でもこの作風なら全然読める。ラストの「水甕」が気に入った。「ハーメルンの笛吹き」「いばら姫」アダムとイヴの神話など既存の物語を下敷きにした作品が巧み。実はル・グウィンは初読。お恥ずかしい。子供の頃から図書館の児童書コーナーでは見慣れた名前だったのに。『ゲド戦記』、手に取ってみようかなと言う気になった。

2021/06/25

ケイ

短編11 彼女のファンタジー哲学をもっと知りたくなった。好きな順に。『ホースキャンプ』解説にあるル=グウィンの言葉がまさにその通り。自由の叫びと罠にかかった悲鳴が同時に聞こえる。 『背き続けて』少し闇の左手みたい。族長と老いた孤独な女。エンディングもいい。『狼藉者』sleeping beautyが眠ってる間に…。『水甕』砂漠を水甕をもって往復する使者。行った先にいた手足のない男の意味だとか…。ル=グウィンの心の世界かな。『4時半』人間関係を把握出来なくなってきた…と思ったら、素敵な構造のお話だった。

2020/11/08

藤月はな(灯れ松明の火)

「夢に遊ぶ者たち」の語り手達は皆、エゴイストで家族であれ、信頼していない。一方で程よい距離を保つエヴァに対しては信頼を無意識であれ、抱いている。しかし、彼女ら彼らの都合の良い無関心を貫ける「他者」であるエヴァも自分の秘密を抱えている。その描写に思わず、ドキリとさせられる。私たちは心地よい「他者」を一人の人間ではなく、自分の背景として見ているのではないかという不誠実を突き付けられたように思うから。「四時半」の男性の言い分のみみっちさに諦念を覚える。庶民から見た『眠れる森の姫』の裏話な「狼藉者」が好きです。

2020/10/31

shiman

前半の現想編よりもやはり後半の幻実編がしっくりくる。「背き続けて」で炉辺で語り合う隠居の二人にゲドとテナーを思い出す。「水瓶」をもち行きて帰る砂漠の旅にまとう静謐さがとてもよい。

2024/02/23

くさてる

最初の「ホースキャンプ」で面食らい(解説を読むまで意味が分からなかった)、どうかな……と読み進めたのだけど「夢に遊ぶ者たち」からぐいと引き込まれた。ある意味でなにも起こらない、派手な仕掛けも奇をてらう展開もない。けれど、わずかずつずれていく人間の意識や立ち位置、語られ語ることによって生まれるひとのかたち。そんなものが、まさにこの世のものでない幻想的なイメージとなる。素晴らしい。一番好きなのは登場人物がどんどんズレて違った人物になっていくけれどすべて物語になっている「四時半」。しみじみと良い短編集でした。

2020/10/03

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