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本多猪四郎 無冠の巨匠

本多猪四郎 無冠の巨匠

本多猪四郎 無冠の巨匠

作家
切通理作
出版社
洋泉社
発売日
2014-11-06
ISBN
9784800302212
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本多猪四郎 無冠の巨匠 / 感想・レビュー

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パトラッシュ

レンタルビデオ店から本多作品を集中的に借りていた頃を思い出す。ゴジラ、ラドン、モスラなど巨大怪獣の脅威に目を奪われるが、彼らもまた生きるため人と闘っているのだとの描写を忘れない。突然現れて日常を破壊する液体人間やガス人間、マタンゴの恐怖は、コロナ禍の不安に晒される現代人には映画以上の現実味を帯びてくる。クロサワ、オヅの難解な「名画」よりも、本多猪四郎こそ昭和の子供にとって映画の面白さを教えてくれた巨匠だった。この人にもっと多くの特撮映画を撮らせてあげられなかったのは、日本映画史上の深刻な損失だと確信する。

2021/06/02

まえすとろ

子供の頃に初めて映画に接点を持った作品は、巨大な獣の跋扈する世界。そして夢中になった映画スターは皆、その名に濁音や最後に「ラ」の文字が付く巨大で異形な容姿の俳優たちでした。歳を重ね、ドラマや演出といった映画を咀嚼する『見方』が少しずつ解るようになって、次第に心の中で大きくなった監督の名前は本多猪四郎。その本多監督の戦争体験、復員し、戦後日本の原風景を通した半生、類まれな科学志向とその理想郷ともいえる世界を描いた数々の映画作品の視点と思いを再考察して大好きな日本の映画監督『本多猪四郎』を読み解く評伝書。

2015/10/03

たか厨

『ゴジラ』を始めとする多くの東宝特撮映画の本編監督を務めた本多氏の評伝。監督が亡くなって、早20年という記述に、監督の葬儀にお線香をあげに行ったことが昨日のように思い出された。数ある東宝特撮映画の中で、何故、本多作品が突出して面白いのか、その秘密を論理的に、あるいは情緒的に解き明かした一冊。我が最愛の映画『ガス人間第一号』に多くの頁が割かれているのもポイント高し。監督の人間性や脚本へのこだわり、知られざる軍隊時代の話、某田中プロデューサーの非道な仕打ちなど初めて知るエピソードも多く、読み応えがありました。

2015/08/05

マーブル

世界の黒澤。そして特撮の神様円谷英二。あまりに有名な二人に比して語られることの少ない本多猪四郎。しかしその仕事は、世界の怪獣マニア、SF映画ファンに多大な影響を与えている。まさに無冠の巨匠。20年の時間をかけて書かれた本作。本多氏が手がけた作品の映画とその脚本との異同の分析や、本人の残したスクラップやメモ、当時を知る人々の証言、過去のインタビュー記事等からの引用。そして故郷への取材。妻や息子からの聞き取り。多層的に形作られていく本多氏の姿が実に生き生きと目の前に迫り興奮を禁じ得ない。

2022/05/03

みのくま

本書は「本多猪四郎」という明治生まれで昭和の激動期を生きた男の思想を、彼の映画作品から追ったものといえるだろう。それは、まさに本書の帯にも書かれているように「戦争、科学、怪獣」から人間を描いたものといえる。本多は8年間の軍務生活による多面的な戦争経験を積んでおり、また科学に対する愛(主に映画そのもの)と恐怖(核爆弾)を持つ。そして怪獣は、都市を焼き払う「戦争」と「科学」の象徴だ。そしてこれが本多の深みだが、怪獣(=戦争=科学)自体は一概に「悪」とはいえない。あくまで人間の受け取り方次第だということなのだ。

2015/05/07

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