全部を賭けない恋がはじまれば (ひろのぶと株式会社)
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性と生を赤裸々かつ繊細に綴るWeb作家が満を持しての書籍デビュー『全部を賭けない恋がはじまれば』稲田万里インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』12月号からの転載になります。
「正月がはじまって、終わった。」「股間にドラマがある日々だ。私の話だ」「10月末日にやることなんて決まっている。セックスだ」 どの収録作品も、最初の一行でまず、こちらの鼻づらを取って引きまわす。語り手である「私」が体験する、多くの出会いと別れ。性と生に彩られた事件の数々。これは実体験を赤裸々に描いた私小説なのか、それとも私小説の態をとった虚構なのか? いずれにせよ著者の稲田さんは自らについて、このように語る。「ものすごい事件が起こりまくる人生を歩んできました」と。
(取材・文=皆川ちか 写真=冨永智子)
「20歳で上京してデザインの専門学校に入り、デザイナーの佐藤亜沙美さん─私は師匠と呼んでいるのですが─の事務所に押しかけ的に弟子入りしました。スイカと一升瓶を持参して」 そんな“物語の主人公”のようなインパクトのある手土産を携えた稲田さん。その後は師匠にかわいがってもらいながら、多彩な人びとが出入りする職場での仕事を楽しんでいたものの体調を崩してしまい退職することに。その際、佐藤…
2022/11/5
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全部を賭けない恋がはじまれば (ひろのぶと株式会社) / 感想・レビュー
夢追人009
田舎から都会に出てきた女子が恋をしては失って、また新たな恋をしては失ってゆく男性遍歴とバイト生活と過去を描いた短い18編の人生物語。冒頭からこれでもかと性愛描写が続きますが底抜けに明るくあっけらかんとしてイヤらしさは全くなく今が楽しければそれでいいやというノリのコメディータッチの漫才風恋愛ドラマですね。最後は喧嘩別れだったりしますがヒロインは明るく楽しかった部分だけを記憶に留めて祭りが終っても悲しく落ち込んだりはせず常に陽気に生きています。彼女は全部を賭けない恋を意識して幸福な結婚を避けているのでしょう。
2023/06/01
one_shot
読み友さんから。思いのほか楽しく読了。田舎の息苦しさから逃げて東京デビューした少女のお話。全篇セックスの話をアケスケにしているのに、下品さがない。ジジイはその一点に賭ける。10代の恋と20代の恋はなにが違うのかなんてもう忘れたが、慣れるまではやはり全てを賭けて、いつの間にか相手への依存がひどくなってその都度傷ついていたように思う。ギャンブルも株も恋愛も、消してフルベットしてはいけないのだと知ったのは、もう四十路が見えてきた頃だった。遅い。もし20代にこの本と出会っていたら何か変わっていただろうか。
2023/06/15
あまつ
どれも明け透けな話だが、文体が軽妙で読ませる。面白い。刹那的な印象の恋バナが読了後に積み重なる。
2023/08/30
山のトンネル
テーマが山内マリコの作風に似ているけれど、どこか深夜の雰囲気が漂う生っぽさがある。
2024/02/22
ほのみ
え?なんて?って読み返してしまうような一文から始まり唐突にストンと終わる。特に不快感もなく後に何も残さないいろんな女の子のちょっと変わった日常の性愛の話。‥途中からなんだか生きていくって辛いよなって感じるようになり、この「私」ってみんな同一人物?って理解できる。ありえなそうなエピソードもどこかリアルですぐそこで起きている日常にも思える。
2023/05/02
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