堕地獄仏法/公共伏魔殿 (竹書房文庫 つ 3-1)
「堕地獄仏法/公共伏魔殿 (竹書房文庫 つ 3-1)」のおすすめレビュー
「こんなこと書いちゃって大丈夫?」筒井康隆による皮肉とユーモアの極上SF短編集
『堕地獄仏法/公共伏魔殿』(筒井康隆/竹書房)
この本は、猛毒だ。「危険」と注意喚起しても良いくらいだ。ドキッとしてしまうような皮肉とユーモア。その刺激がいつの間にか病みつきになってしまった。その本とは、筒井康隆による『堕地獄仏法/公共伏魔殿』(竹書房)。
筒井といえば、『時をかける少女』や『パプリカ』などで知られるSF小説界の鬼才。この本はSFの短編集だが、多くの作品には世の中への風刺が混ぜ込まれている。最初は、「こんなこと書いちゃって大丈夫なの?」と恐る恐るページをめくっていたはずだったが、いつの間にか、この本の世界に身体中を侵食されている自分に気づかされた。
某組織を皮肉り、諸事情によりあらすじさえ書けない「堕地獄仏法」。巨大な権力をもった某公共放送の体制を描き、読めば、恐ろしさから受信料を払わずにはいられなくなりそうな「公共伏魔殿」…。その他、この本に収載されているのは、筒井康隆の初期傑作短編16作。どの作品も1960年代に書かれたものだが、今発表されたとしても納得の内容だ。
たとえば、短編「やぶれかぶれのオロ氏」は、今の日本の政治への皮…
2020/4/17
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TikTokで話題になった『残像に口紅を』だけじゃない! 今だからこそ読みたい、筒井康隆作品おすすめ3選
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2021/8/23
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堕地獄仏法/公共伏魔殿 (竹書房文庫 つ 3-1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
世界で二人ぼっちな「いじめないで」。相手が一人しかいないのにその相手が機械だとなるとつけ上がり、虐める人間にゲンナリする。ほんま、なんで人間は「人間」ってだけで他よりも一等、偉い、思うん?「血と肉の愛情」でのトーノは『ミッド・サマー』のサイモンを思い出した。そしてずっと気になっていたけど、図書館では見つからなかった「懲戒の部屋」をやっと、読む事ができましたが…。こんな報復は厭だ…(´;Д;`)題名がよく、分からないものもあったが、「色眼鏡の狂詩曲」は目糞鼻糞を笑うで思わず、笑ってしまった。イカン、イカン!
2020/05/08
たぬ
☆4.5 筒井氏36冊目は1962年~68年に発表された短編16作。愉快なグロテスク(「慶安大変記」他多数)と意思疎通ができない相手へのイライラ(筆頭は「うるさがた」)が可笑しくてたまらない。ラストの「色眼鏡の狂詩曲」は訳註で面白さ倍増。電車内で読んでて失笑しっぱなしでした。マスク生活で本当よかったね。
2021/09/22
geshi
初期作品ゆえかスラップスティックは抑えめだがブラックなアイデアで人間の愚かさを嗤って、欝々としそうな心にカンフル剤を叩きこまれた気分。表題作ふたつは特にトンデモない。『堕地獄仏法』は公〇党と創○学会という日本最大級のタブーをディストピアもののフィクションだから書いてしまえる力技。『公共伏魔殿』はN○Kを徹底して露悪的に描きつつ第四の権力であるマスコミへ切っ先鋭く挑んでいる。『しゃっくり』や『やぶれかぶれのオロ氏』みたいに人間の虚飾を剥ぎ取る話がやっぱり好きだなぁ。
2020/04/30
Fondsaule
★★★★☆ 「いじめないで」「しゃっくり」「群猫」「チューリップ・チューリップ」「うるさがた」「やぶれかぶれのオロ氏」「堕地獄仏法」「時越半四郎」「血と肉の愛情」「お玉熱演」「慶安大変記」「公共伏魔殿」「旅」「一万二千粒の錠剤」「懲戒の部屋」「色眼鏡の狂詩曲」16編の初期の短編集。2020年に出版されるのだから、そういう作品を選んだのだと思うが、昨日書かれたと言われてもわからない程、時代を超えた作品。それにしてもこんな事書いても大丈夫なの?と思わせる。日本にいる幸福はまさにこれだと思う。
2020/10/05
阿部義彦
色んなアンソロジーから埋もれがちだった筒井康隆の初期短編を日下三蔵さんが他の文庫との重複がないように編み直したアンソロジーの様です。「ベトナム観光会社」「アルファルファ作戦」「東海道戦争」からの短編達です。もちろんこれらは過去に中公文庫で読みましたが、今回新たに読んでも半分位は忘れてまして楽しめましたあ!好みは「うるさがた」「旅」「懲戒の部屋」「色眼鏡のラプソディ」ですかね。とにかく今読んでも色褪せない傑作の数々。「堕地獄仏法」なんて良く載せてくれましたよね、自民公明の今の世にこそ問いたいですね。
2020/08/21
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