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満月の夜、母を施設に置いて

満月の夜、母を施設に置いて

満月の夜、母を施設に置いて

作家
藤川 幸之助
松尾たいこ
出版社
中央法規出版
発売日
2008-06-01
ISBN
9784805830192
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満月の夜、母を施設に置いて / 感想・レビュー

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Hideto-S@仮想書店 月舟書房

男が泣いている。声を立てずに、心から血を流して泣いている。誰にも見せなかった手帳の最初の頁に、母は家族全員の名前を書いて寝床で読み返していた。自分のことは【お母さん】と書いた。自分がお母さんである事を忘れてしまわないように。そんな母を満月の夜、兄と二人で施設に置いた。閉まった扉にしがみつく母。「一人で何でもしてしまわないように人の手の長さはできている」と背中を掻いてくれた母は、何にもできなくなった。アルツハイマーになった母の介護の日々を綴った魂の詩。あとがきは谷川俊太郎氏の詩『ただ生きる』。

2015/09/12

おくちゃん🌸柳緑花紅

タイトルだけで苦しくなった。介護未経験の私なのに、苦しくなる権利なんてないのに。満月の夜に母を施設に置いて帰った日のことを思い出すという。第1章「おむつ」母が車の中でウンコをした。きれい事ではなくて介護で苛立ち、腹を立て、そして時間と共に考えや見方が変わっていく様子がストレートに伝わる。介護しながらいつの間にか母を思いやっている自分に気づいたという。嫌だ嫌だ、何故自分が、としか考えられない人、私はどちらだろう。義母の介護が待っているなら何も出来なくてもただそばにいよう。読み終えて今そう思っている。

2017/10/31

竹園和明

認知症となった母親との日々を書いた藤川幸之助氏の詩集。産み育ててくれた母に対する想いと、“壊れて行く母親”に対する苛立ち。そのせめぎ合いの中に身を置きながら葛藤する著者の姿が、読み手の心を真っ直ぐに射抜くようだ。著者のお父様も心から妻を愛していたんだな。年老いた母親を持つ者として正面から対峙しなければならないと思い読んだが、そんな考えは何の意味もなさない。肝心な事は、親に対する無垢な愛と尊敬の念があるかどうかだろう。産み育ててくれた人への真の感謝の念を、果たしてこの先自分ごときが持てるのだろうか。

2020/01/16

てんちゃん

認知症の母を介護する胸中を語った詩集。外出先での排泄の失敗に苛立ったエピソードやお母様を殺してしまおうかと思ってしまう心情など、著書自身の経験に基づいたものなのでリアリティがある。辛さももちろん描かれているが、それ以上に、介護することになってはじめて生じた母との心の結び付きや思いやりなど温かな優しさが溢れだしている。松尾たいこさんのポップで明るい絵が詩の雰囲気とあっている。著書と谷川俊太郎の対談も良いし、巻末の谷川さんの詩も良い。手元に置きたい一冊。図書館で借りて読了しましたが後日買います!

2018/03/04

シュシュ

読み進めるうちに涙があふれてきた。亡くなる数日前の父の姿を思い出した。何もしなくてもいい。お互いにただそばにいるだけでいい。亡くなることと、いることは全然違う。手のぬくみが感じられた。詩集だけれど小説を読んでいるような気持ちになった。いい本だった。

2019/08/28

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