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才女の運命 男たちの名声の陰で

才女の運命 男たちの名声の陰で

才女の運命 男たちの名声の陰で

作家
インゲ シュテファン
松永美穂
出版社
フィルムアート社
発売日
2020-03-19
ISBN
9784845919307
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才女の運命 男たちの名声の陰で / 感想・レビュー

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kaoru

大きな業績を上げた男達の陰で従属的な役割を強いられた才女達を描く。皆が大きな才能を持っていたかはともかく、忍従を強いられたイエニー・マルクスやトルストイ夫人ソフィア、精神的病を抱えた息子の世話に明け暮れたミレヴァ・アインシュタインの生涯は重い。精神病院で30年過ごしたカミーユ・クローデルはある意味でロダンの犠牲者。リルケの妻クララも彫刻家としてのキャリアと結婚生活の両立に苦しんだ。カール・バルトの秘書シャルロッテは「解放の神学」を先取りしつつ脳障害による入院で晩年を送った。女性が抑圧された時代に生きた→

2020/09/15

星落秋風五丈原

二十五年前に刊行された作品の新版にあたって“新版のための前書き”が追加されている。取り上げられた女性のフルネームを見てぴんと来なくても、そのパートナーの男性の名前はよく知っている。それが大方の読者の認識であろう。  例えばトルストイの妻ソフィア。悪妻のイメージが強く、彼の不可解な死の責任まで負わされているが、残された日記からは、ひどい目にあったのはソフィアの方だ。『クロイツェル・ソナタ』『アンナ・カレーニナ』『戦争と平和』作品中で立て続けに浮気に走る人妻を描いてきたが、実は全て自分の事だ。

2020/07/12

くさてる

19世紀後半から20世紀前半にかけて、10人の高名な学者、芸術家の活躍に隠れて生きたその妻やパートナーたち。彼女たちにもまた世に出るだけの才能やエネルギーが存在したというのに、当時の結婚生活や常識、なにより彼女たちの夫たちこそが、その才能の開花を望まなかったことが解説されていて、正直言って読んでいて苦しい。けれど、その厳しい状況の中でもその才能を再評価する人々もいたことが救いかもしれない。ただの犠牲ではないと思いたい。でも、間違いなく犠牲だと思うしかない部分もある。現代でもきっと存在する犠牲の話だと思う。

2020/08/22

三柴ゆよし

良書。知ってる人も知らない人もいたが、みなそれぞれに自分のなかで知らず知らずのうちにバイアスがかかっていたのだということに気付かされた。啓蒙とはこういうことを言うのだろう。カミーユ・クローデル、ゼルダ=フィッツジェラルドの章は読み進めるのが非常に辛かった。日本の近現代文学においては、武田百合子や島尾ミホなどはかなり特異な位置にある人で、それなりに充実した伝記も書かれてきたとは思うけれど、まだまだ本来の才能に見合った評価を受けているとは言い難いのではいか。特にミホは、あの評伝でもぜんぜん片手落ちだと思う。

2020/03/28

ふるい

芸術や学問に打ち込む男たちは、彼らの自由な活動を妨げる家庭生活の面倒すべてを妻やパートナーの女性に押し付けることで、素晴らしい成果を生み出すことが出来るとされた。当時の社会にとって、彼女らの犠牲は当然の義務であった。夫と同じ程の、あるいは夫以上の才能の持ち主であった女性たちは創作や研究から引き離され、退屈な家庭生活に閉じ込められた。彼女らの消耗がどれほどのものであったのか、想像するだに辛い。トルストイの妻ソフィアの日記をはじめ、抑圧の日々に疲れ切り病んでいく彼女らの苦痛と悔恨に満ちた言葉が重くのしかかる。

2020/04/05

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