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あしたの孵化 (かりん叢書)

あしたの孵化 (かりん叢書)

あしたの孵化 (かりん叢書)

作家
辻聡之
福田利之
出版社
短歌研究社
発売日
2018-09-26
ISBN
9784862725882
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あしたの孵化 (かりん叢書) / 感想・レビュー

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kaizen@名古屋de朝活読書会

p.11 誰ですかと問われる声で目覚めればしゅわしゅわという加湿器の音 p.12 洗剤のボトルが最後に着いた場所 水晶浜に雪降りやまぬ p.17 遅れるという声、電話の向こうでは濃紺の雨降り始めたり 水底に眠る海鼠の傍にはしゃぎいてきみがさざなみを産 p.18 通り雨過ぎたるのちの「にじ!」という子どもの声に虹現れぬ p.20 さみしさを分かち合えないさみしさの霧雨はどこまでも霧雨 充電が完了するまで雨よ降れ窓はしずかに開かれていよ

2019/02/03

Timothy

極端にひりついているわけでも、幸福に浮かれるでもなく、終始淡々としているようで、同時におなじ世界で等身大の生活をしている歌人の姿が見えるのがいい。「囁くという字に口よりも耳多くありて呼吸をひそやかにする」「シュガースティックふいに破れて漏れ出ずる感情をうまく押し殺せない」「吾輩は猫でもないし名もあるが猫なら君に飼われたかった」無条件に愛されたいとか世話をされたいとかということよりも、愛情や悲しみや苦しみを(人間相手とは違って)包み隠さず見せてもらえる存在でありたかった、のかも。苦沙弥の猫の扱いはさておき。

2022/04/13

しなの

辻聡之さんの歌集、待ってました!前からちょこちょこ読める機会があるたび、歌集でいっぱい読みたいなあーと思ってた。口語と文語のバランス、わたしの一番好きな感じ。好きな歌を引いてみたいけど、どこをとっても好きだから困る。

toron*

洗剤のボトルが最後に着いた場所 水晶浜に雪降りやまぬ 誰もみなひとりに戻る鍵を持つ油絵の月溶け出す夜に やってらんないすよと後輩 コピー機の排熱ほどの声に触れたり 首すじに触れくる冬の手を払うように新しきマフラーを巻く かつて吾をそらへはこびし肩車に金木犀の花ふる余白 単語、固有名詞の選び方のセンスがすごく良い。社会の中の自分の「ちゃんとしてなさ」を恥ずかしく思っている様子が描かれていて、自分にも非常に覚えのある感覚なのに、誇張された感じも綺麗すぎもしない歌に落としこまれていて良いなあと思った。

2021/04/03

yumicomachi

丁寧で確かな手触りのある歌集と感じた。抑制された叙情で詠まれたさまざまな歌、殊に家族の歌に惹かれるものがあった。〈圏外の長きトンネルさみしいという母のことばを人づてに聞く〉〈かつて吾をそらへはこびし肩車に金木犀の花ふる余白〉など。2018年刊の第一歌集。帯文は馬場あき子、栞文は荻原裕幸、松村由利子、寺井龍哉。〈うまく生きるとは何だろう突風に揉まるる蝶の翅の確かさ〉〈くりかえし春の推敲カーディガン着たり脱いだり約束したり〉〈みずからを誤字と知らざるかなしみを思えば十二月の街の火〉なども印象に残った歌である。

2019/03/06

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