四月の魚 (現代短歌クラシックス03)
四月の魚 (現代短歌クラシックス03) / 感想・レビュー
匙
ロマンチックで衒学しててスムースで透明感があって軽い。白眉はやっぱり「きみがこの世でなしとげられぬことのためやさしくもえさかる舟がある」。ネット上の感想で「ファッショナブルな知性」と評してる人がいて友達が「disってるつもりじゃないだろうけどdisってるぽい」と言ったせいで頭から離れない…ファッショナブルな知性…うう…。その時のその人からしか生まれない、短歌はその人の青春の記録だと読むたび思う。
qoop
作家名などを詠んだ趣味性の強い歌に目を奪われるのは仕方ないだろうなと思ったが、再読でも印象変わらず。こうした固有名詞に仮託するものを共有することは難しそうだ、というところから、歌の理解/共感をどう捉えるかへと思いが進む。/ダスト・シュートにコナン・ドルが幾冊か捨てられて水けむるビル街/空割れんばかりの拍手さめぎわの夢にきく 雨のケストラー忌/映画雑誌のタルコフスキー特集で八月の陽をさえぎり歩め/暗闇の中のディズニー・ランド きみ、制服をわずかな金に替え/空は八月海は五月の色をして十月一日もの狂おしけれ
2020/08/30
Cell 44
短歌に興味を持ち始めた最初の方、この歌集に強く憧れたことを思い出した。私にとって米文学の洒脱さと泥くささを抱えた書物であり、富澤赤黄男の『天の狼』のような峻厳とした詩情で立った歌群であり、俳句と現代詩には興味を持てても短歌にはあまり強い関心が持てなかった自分を動かしてくれた強い一冊だ。ただ、「四月の魚」と「風色合衆国」に重複している歌があるのは……。
2020/10/12
ひじき
1990年に発行された歌集の復刊。全体にうっすらとSFやファンタジーの雰囲気を感じる。ちょっと古い早川とか創元の文庫の表紙みたいなイメージだ。ぱっと見るとすごい破調なのかと思いきやきちんと読んでいくとほぼ定形だったりしておもしろい。カタカナの長い単語が使われていたり、漢字がかなりひらいてあって一行が長かったりするのが原因なのかなとも思うけど、ちょっと不思議な気分になる。
2020/08/23
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