絶体絶命文芸時評
「絶体絶命文芸時評」のおすすめレビュー
まだ見ぬ文学の深い森へ…希代の批評家・佐々木敦が先導する『絶体絶命文芸時評』
『絶体絶命文芸時評』(佐々木敦/書肆侃侃房)
以前、知人が佐々木敦について「ザ・批評家」だと形容していて、得心したことがある。佐々木氏は映画監督のゴダールを論じた本でデビューし、その後音楽レーベルを立ち上げて海外の音楽家の招聘も行い、国内では□□□(クチロロ)や蓮沼執太らの作品をリリース。編集長を務めた『エクス・ポ』という900ページにもわたる雑誌では、大々的に演劇を特集していた。
そんな佐々木敦氏の『絶体絶命文芸時評』(書肆侃侃房)は、文学に関する著作も多い佐々木氏が5年間続けた文芸時評を中心に、論考や対談を加えたものだ。
書名にもある「文芸時評」とは、主要な文芸誌を毎号すべて読み、そこで取り上げられた小説や特集について論じる記事のこと。複数の新聞に同時掲載されるもので、今ではネットでも読むことができる。だが、大学でも教鞭を執る著者が生徒に聞くと、文芸誌の存在すら知らない生徒がほとんどだという。それほどニッチな世界だと言ってもいい。
小説を掲載する文芸誌は昨今、特集の占める割合が増えている。『文藝』2019年秋号では、「韓国・フェミニズム・日本…
2020/9/27
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