世界が海におおわれるまで (現代短歌クラシックス04)
世界が海におおわれるまで (現代短歌クラシックス04) / 感想・レビュー
カフカ
とくべつ心にのこった歌。 「あたらしい寝巻ひんやりひきだしの森林めいた時間を帯びて」 「橙のひとつが空の青に触れやがてたわわに空を照らせり」 「風鈴を鳴らしつづける風鈴屋世界が海におおわれるまで」
2023/11/01
有理数
「てのひらに卵をうけたところからひずみはじめる星の重力」「死後を愛されるわたしはこの夜も青い電気に乳を与える」――葛原妙子の大好きな言葉に「秀でた比喩とは、二つのものの生の相似を瞬間に掴む精神の早業である。」というものがある。佐藤弓生の歌は、歌の冒頭から踏み入れていくと、突如風景が変わる。卵をうけて――星の重力がひずみ、青い電気に――乳を与える。決して隣同士にいそうにない者同士が、圧縮された31文字の中で隣り合い、丸ごと幻想のイメージへ送り返されている。相似を掴み取る精神の早業そのもの。美しい歌集。
2021/02/22
ふるい
"「夢といううつつがある」と梟の声する ほるへ るいす ぼるへす" がやはり最高みありますが、"でたらめな薔薇の園生に風切羽やすめてリルケ、リルケルリ、ルリ" も、とても好きです。あとがきに、いやしの本棚さんのお名前が…!私も、いやしの本棚さんのツイートがきっかけで佐藤弓生さんの作品と出会えたのでした。
2021/01/30
新谷 華央里
韻律が素敵な歌が多く、意味よりも真っ先に心地よい音の響きとして届いてくる。きっと「詩」であることよりも「歌」であることを意識してつくられたのだと思う。モチーフや言葉のチョイスもどちらかと言えば非日常的なものが多く使われていて、甘やかに異世界への旅へといざなってくれる。そしてその語彙の豊饒さに感嘆する。 おびただしい星におびえる子もやがておぼえるだろう目の閉じ方を 会えぬものばかり愛した眼球の終のすみかであれアンタレス
2022/11/06
あや
初版の解説が井辻朱美さんと知る。なるほどお二人の短歌は似ている気がする。
2021/02/14
感想・レビューをもっと見る