ぼくはただ、物語を書きたかった。
ぼくはただ、物語を書きたかった。 / 感想・レビュー
Roko
酷い言葉を彼に投げつける人たちは、自分がどんなに酷いことを言っているのか理解していないことが多いのです。自分がそう信じているから、ただそれだけの理由でアラブ人はこうであるはずだとか、お前はドイツ語で作品を書く資格はないとか、故国へ帰れ、などと言うのです。そういう人たちと関わるのがいかに嫌なことか、でも何と言われようと、自分はこうして生きて行くしかないのだとラフィク・シャミは語るのです。
2022/06/19
かもめ通信
シリアからの亡命作家ラフィク・シャミが2017年にドイツで出版した自伝的エッセイの翻訳版。 1971年3月、3分の1がぎっしり書き込まれたノートで占められているスーツケースを持って、作家はフランクフルトの空港に降り立った。もう二度と祖国には戻れないと覚悟して。 一つ一つの文章は短く、難しい言い回しもないが、とても読み応えがあって、あれこれ考えずにはいられない、素晴らしいエッセイ集だった。
2022/04/07
spatz
静かな怒りと闘志に溢れた本だったように思う。 著者はドイツでは有名なシリア出身の作家。<筆名の「ラフィク」は「仲間・友人」、「シャミ」は「ダマスクス人」の意>とwikiに出ていた。ダマスカスの人、という意味だったのか。なぜダマスカスという地名が随所に出てくるか腑に落ちた。亡命作家の苦悩。言語と自分との関わり。アイディンティティ。名前だけ知っていて物語を読んだことがなかったので、まず、彼の作品を手に取ってみなければと感じる。 副題にモザイクとあるように、断片的な思考の数々。
2022/10/02
みそさざえ
タイトルにひかれて手に取る。初めての著者だが、亡命作家としてのアンビバレントな様々な感情が強くまた時には皮肉な口調で綴られる。越境作家の中でも亡命作家は特別な感情があるのだろう。本来の「語り部」として書かれた童話も読んでみたい。
2022/10/13
ののまる
語り部の著作、本当に好きだった。亡命後のドイツでも同業者、同じ亡命者、ドイツ文学学者などなどから、こんな差別や嫉妬という苦難が… 「部族」の解説がいまの中東世界を理解するのにピッタリ。
2022/09/02
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