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火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

作家
ジャック・ロンドン
新井敏記
柴田元幸
出版社
スイッチ・パブリッシング
発売日
2008-10-02
ISBN
9784884182830
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火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン) / 感想・レビュー

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buchipanda3

ロンドンの短編集。独白や人物伝の語り聞かせのような物語で、どれも気が付けば息を詰めて聞き入っているような感覚を覚えた。それは著者の文章が簡潔で淡々としながらも隠し立てのない容赦の無いもので、渇望や畏怖といった叫びが直に伝わってくるからではと思った。印象に残るのは厳寒の地を舞台とした「火を熾す」。別版も含めて既読だが何度読んでも入り込む。同じ題材の「生への執着」も対比しながら興味深く読めた。拳闘もの二篇もがっつりと引き込まれる。そして「水の子」「生の掟」は人は元々自然の中に置かれた存在だと言われた気がした。

2020/12/30

どんぐり

映画『マーティン・エデン』を観た後で、まずはこの1冊。柴田元幸翻訳叢書によるジャック・ロンドンの短編小説9篇である。どれも珠玉の作品といってよい。この中から1篇を選ぶとするなら、「一枚のステーキ」だ。若さが自分のものではなくなったボクサーがヘビー級の若いボクサーと死力を尽くして戦う。経験と若さ、知恵と体力、老ボクサーが最後に送り出すパンチの先に、人生の苦さと悲哀を覚えた。そして、リアリズムある文章に唸った。ほかに、酷寒の地を行く「火を熾す」「生への執着」もいい。自然界は酷薄で無情だ。

2021/03/11

(C17H26O4)

理性や生命を保てるぎりぎりの状態に行き着くまでの心理状態、肉体的状況が仔細に語られる。追い詰められていく様が目の前に見えてくるようなのだけれど、意外なことに読んでいて苦しくなりはしない。ある種の男性的なロマンを感じたからかもしれない。他者に向けらていない、あくまでも己に向かう純度の高い苦しさ、苦さ。生き様。

2021/01/30

miyu

火というモチーフは昔から誰もが気にかける永遠のシンボルだ。例えばマッカーシーの「ザ・ロード」やタルコフスキーの「ノスタルジア」、みんな火を「運ぶ」ことに熱中するが、彼はその始まりである「熾す」ことを考え続ける。なんのために?…もちろん最初は金だったり革命だったり一枚のステーキで飢えを癒すために。それがしまいには「熾す」という行為自体に夢中になって我を忘れてしまう。それは生きることそのものだ。人が生まれ落ちてから今日まで「ただ生きること」こそ最も重いテーマだという真実を私たちはいつのまにか見失ってしまった。

2015/04/08

市太郎

柴田編・訳のジャック・ロンドンの短編集。多様な作家らしくなるべく多様な作品群が並ぶ。なかでも、ロンドンのボクシングの短編は読んでみたかったので、よかった。卑劣なグリンコに革命の一撃を!「メキシコ人」老いたるボクサーの葛藤と最後の情熱「一枚のステーキ」ともに熱かった! 「火を熾す」などの極限状態のロードというのはマッカーシーに通じるところがあり、興味深く、そしてのめり込んで読んだ。無駄な説明をしていない、潔い、ある意味男らしい文体はこの作家の特徴と言えるだろう。自然と人ではその勝敗は明白だが、それでも・・・

2015/05/16

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