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殺意

殺意

殺意

作家
ジム・トンプスン
中条省平
田村義進
出版社
文遊社
発売日
2018-03-30
ISBN
9784892571435
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殺意 / 感想・レビュー

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ケイ

『ゲッタウェイ』『天国の南』に続き、トンプスン3作目。どれも作風が全く違うように思うが、唯一共通点として感じるのは、愛し合う者達への羨ましさ、 純粋に愛から求め合うことへの渇望。しかし、文体はかわいていて、素っ気ない。女に巣食う悪意。それを剥き出しにすれぱ、彼女に向ける感情はいずれ殺意とはなるまいか。しかし、殺意は羨ましさ、妬み、また離れたくないという愛情からも生まれる。殺意は少しずつ育まれていったのか、突発的に沸き起こったのか...。ただ働くラルフと、彼に仕事を与えたピートはいいな。おすすめの作品。

2018/06/07

ネコベス

全十二章で構成されたすべての章に異なる登場人物の名前が記され、一人称で語るスタイルの群像劇。各々が自分の主観から見える世界を語るので真相は常に靄がかかって見える。登場人物皆が不遇の人生を歩み町には虚無と絶望のベールがうっすらと被った不穏な空気が張り詰めている。複雑に関係が絡み誰が殺人を犯してもおかしくない中唐突に起こる殺人。ラストはちょっと拍子抜けだが狭い町の中で不満を抱えながら生きざるを得ないやさぐれた苦い世界観はトンプスンの持ち味。ややあっさりし過ぎで狂気や情念が足りないと思うがそれでも十分楽しめた。

2018/06/09

ふう

人口1280人(!)の海辺の町を舞台に、12人男女が語る”殺意”の物語。ミステリーとしてより、ジム・トンプソンを楽しめる一冊。登場人物がもう嬉しくなっちゃうくらい如何にもトンプソン的な人物で、誰もが満たされず、何かを欲してがんじがらめの人生を送っている。解説にもあったが「内なる殺人者」の「おれたちみんな」がここにもいるんだなーという感じ。あージム・トンプソンやっぱかっこいいわ(トンプスンでなくトンプソンのがしっくりくるのはなぜだw)

2018/05/08

hikarunoir

11人の「信頼できない語り手」=「グリフターズ」豪華版、金目当てのケチな顛末は「失われた男」的虚無。この翻訳ラッシュ、三川さん意識してて嬉しい。

2019/11/19

bapaksejahtera

開発から取り残されたNY郊外の小さな町で、おしゃべりなゴシップメーカーの老女が殺される。関係する10人ほどの人物が一人称で次々と登場し、それとともに事態が進行するストーリー。なかなかに斬新な様式である。殺される人間が誰であるかは読者には初めから判るのであるが、犯行は小説の終盤近くになってなされる。実のところ実行犯が誰であるかはかなり曖昧で、本作品の勘所は犯人当てでも謎解きでもない。其々に闇を抱えた人物が登場し、周囲の評価とは大いに異なる思考と行動様式を披露する。社会を支配する闇と暗鬱が主人公なのだ。

2022/01/13

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