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幻滅―メディア戦記〈下〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション)

幻滅―メディア戦記〈下〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション)

幻滅―メディア戦記〈下〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション)

作家
バルザック
Honor´e de Balzac
野崎歓
青木 真紀子
出版社
藤原書店
発売日
2000-10-01
ISBN
9784894341975
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幻滅―メディア戦記〈下〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション) / 感想・レビュー

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ケイ

メディアに良心はあるか?活字は 、たやすくヒーローを作り上げ、また陥れることもできる。またそれを信じる人の愚かさよ。良心を持っての告発か、それを報じることの裏側には何があるかを考えてみよ。これはバルザックからの警告だ。例を作ってみせてくれている。そして、悪とは何か。小狡い悪人たちをも超越するような悪は、ときに善にしかみえない。潔く、詐欺まがいなことはしない。もっと大きな目的があるのだ。それを体現するヴォートラン。颯爽と登場し、美しく才能があり誘惑に弱いリュシアンを馬に乗せてさらって行った。

2018/03/10

NAO

リシュアンを仲間として対等に扱い共に成功を目指そうと励ますセナクールの面々も、ジャーナリストとしてあることないこと書きまくるルストーも、物書きという人種の象徴的な姿だ。そして、自分に甘く世間に流されやすく、心の中は見栄と虚栄心ばかりのリシュアンもまた文学を目指す人間の一つの姿なのだろう。破滅したリシュアンが帰郷すると、故郷では、自分が描いた偽造手形のせいで妹夫婦が大変なことになっていた。上巻ではジャーナリズムの世界を、下巻では印刷所に関する訴訟をと、メディアの世界が徹底的に描かれている。

2016/05/21

syota

いわば作家から見た業界内幕話だが、出版産業やマスコミが勃興し、文学が王侯貴族の庇護を離れて自立しはじめた時代の姿が、驚くほどリアルに描かれている。バルザック自身が作家業の傍ら記者や新聞発行人、印刷業にまで従事していたとのことで、実体験が基になっているからこそ、これだけ詳細な迫力ある描写が生まれたのだろう。大量の登場人物が類型化せず、それぞれ個性豊かなのもさすが。内容的には、やはりパリを舞台にした第2部(上巻後半と下巻前半)が最も輝いている。ずっしりとした読み応えの大作だ。[G1000]

2016/04/29

みつ

権謀術数渦巻くパリの出版界において得意の絶頂にあったリュシアンも、やがて失敗続きに。もともと甘やかされて育った彼のこと、好意(実は策略)により幾許かの金を得るとすぐに散財し或いは賭博に費やすなど、生活破綻者に近い状態になってくる。金策に走り回る中、田舎の妹夫婦を巻き込み、今度は上巻冒頭に現れた印刷用紙の発明の権利を巡る思惑が交錯する。リュシアンをひたすら信じる友人にして義弟のダヴィッドもその餌食に。物語はどんどん加速するが、終わりがけにまたもや怪しい人物が現れ、リュシアンの運命は閉じることがない。➡️

2022/03/14

saeta

「人間喜劇」と副題があるので大団円のハッピーエンドで終わる小説家かと読み進めていたが、何だか玉虫色の決着という印象だ。後半謎めいたスペインの神父が出て来た辺りから新しいエピソードが始まる予感がしたが、どうやらこのリシュアン物は続きがあるようなので、このまま読み進めてみます。一つだけ残念なのが、4月からこの「幻滅」の映画を上映していたようだ。調べてみたらほとんど上映も終わっており、もう少し早く読み始めれば良かった。

2023/07/21

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