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ゾラ・セレクション 2

ゾラ・セレクション 2

ゾラ・セレクション 2

作家
エミール・ゾラ
´Emile Zola
朝比奈弘治
出版社
藤原書店
発売日
2003-03-01
ISBN
9784894343276
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ゾラ・セレクション 2 / 感想・レビュー

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NAO

「ルーゴン・マッカール叢書」第3巻。パリの全市民の胃袋を支える公設市場を舞台に裕福で帝政に満足している人=太った人と、裕福ではなく社会に不満を持っている人=痩せた人の対比を通して、帝政当時のパリの食事情と、市場周辺で繰り広げられる人間喜劇、そして帝政の陰でうごめく人々を描いている。この太った人、痩せた人の違いが実は紙一重で、痩せた人も富を得ることを狙ってパリから離れることができないというところが、ゾラが描きたかった人間の性なのだろう。太った人の代表リザは、『居酒屋』のジュルヴェーズの姉。妹との違いがすごい

2016/04/16

白のヒメ

ページを開くと、怒涛のように飛びかかってくる19世紀に隆盛を極めたパリの中央市場の喧騒。ありとあらゆる食べ物、色とりどりの新鮮な、あるいは腐った野菜や果物、殺された動物の血の滴る肉や臓物、海や川の生臭い魚が、私の嗅覚に視覚に触覚にありありと迫ってくる。市場で働き、でっぷりと肥えて暮らす人間達の暮らしの根底にあるリアルな卑しさが、飽和する豊かな食物の上に浮き上がる。これは俯瞰してみれば、一つの大きな生き物「パリ」の胃袋の部分にあたる物語。始終圧巻されてしまった。

2014/10/12

ラウリスタ~

ほとんど一年後に再読か、仏語。「太っちょ」と「やせっぽち」の対立がずっと展開されている。パリ中央市場の豊穣さとは、食→排泄物、ゴミ→堆肥→作物という生と死の連鎖、回転が集約された場所だから。そのあまりの生命力の強さ(性欲、食欲)は、子供っぽい「純粋さ」を持ち続けるやせっぽちに吐き気をもたらす。第二帝政が終わった直後に、あったかもしれない「反乱」のあまりに幼稚な企てとその失敗を描く、当時としては政治色満載だったろう小説でもある。魚の名前とかチーズの名前とかそんなにぽんぽん出されても知りませんがな。

2017/02/11

kthyk

鉄とガラスの建築はロンドン万博の水晶が始まりだが、オルセー駅、エッフェル塔、中央市場(レ・アール)と、まさにパリが近代建築のスタートを切った。この物語はそんな時代の時間と空間、中央市場に展開される庶民の生の世界を、ことごとく言葉に置き換え描いている。言葉の世界だが、それは決して文字でも音でも絵でもない。観るもの聴くもの、映画でもなく、総てがあるがまま、生の人間世界。つまり、この小説が描いた世界は視覚・絵画的であるより、悉くが聴覚的・触覚的。知覚的に響くものが在るとしたら、それは今を生きる、生の人間世界だ。

2023/01/17

ラウリスタ~

1873年の作品。割と前期にあたる。肉屋の女将さんのしょうもない恋愛模様でも描かれているのかと思ったら全然違う。ゾラの芸術小説といえば『制作』と相場が決まっているのだが、実は、この『パリの胃袋』こそがその手法において高度に芸術家小説しているのだ。豚肉屋のショーウインドーの静物画、チーズ屋の悪臭によるハーモニー(匂い、音楽、絵画が文学において交感している)、ゾラってこんないい文章書けるんだ、と驚く。

2016/02/14

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