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シャティ-ラの四時間

シャティ-ラの四時間

シャティ-ラの四時間

作家
ジャン・ジュネ
Jean Genet
鵜飼哲
梅木 達郎
出版社
インスクリプト
発売日
2010-06-01
ISBN
9784900997295
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シャティ-ラの四時間 / 感想・レビュー

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syaori

表題作は1982年にイスラエル軍監視下で起きた虐殺直後のパレスチナ・キャンプのルポ。テクストは、1970年の祖国解放に立ち上がったばかりのパレスチナ共同体の思い出と「屠殺」と表現された酸鼻を極めるキャンプの光景で編み上げられ、希望に輝く戦士達とその10年後の「死に様も選べなかった」死者達に作者が捧げた愛のような祈りのような美に胸が打たれるよう。同時にジュネは凄惨な死体を通して殺戮者の「憎悪と喜悦」を語ることでイスラエルを鋭く弾劾してもいて、屈辱や反抗、その栄光を綴ってきた作者の面目躍如たる観がありました。

2024/04/05

傘緑

「写真は二次元だ、テレビの画面もそうだ、どちらも端々まで歩み通すわけにはいかない…私が跨いでゆかねばならなかった死体はすべてパレスチナ人とレバノン人だった…私に…生き残った住民たちにとって、シャティーラとサブラの通行は馬跳びのようになってしまった」大文字の国際政治が目を背けた虐殺の場をその足で歩き、「反抗と美」を貫いた詩人の、瞬くようなルポ「別の死体を私は踏み越えた。そしてさらにもう一つ。埃のなか、二つの死体の間にとうとうあった、生命にあふれたもの、あれほどの殺戮のなかで無瑕だったもの…それは義足だった」

2017/02/19

松本直哉

行間から死臭の漂うような。しかしひとりひとりの死者への限りない哀惜が感じ取れる。死体の山を踏み越えながら、惨劇の後の廃墟を描く文章は、不思議に澄んでいる。思えばアブラハムのときにボタンを掛け違えたのだ。彼が奴隷のハガルに生ませたイシュマエルは正妻サラの嫉妬ゆえに母とともに放逐されアラブ人の祖先となり、サラに生ませたイサクがユダヤ人の祖先となった。カインとアベルにしてもエサウとヤコブにしても、旧約聖書は骨肉の争いばかり。その争いが現代の、ともにアブラハムの子孫のはずのイスラエルとパレスチナのそれにまで続く。

2021/05/15

かふ

ガザでイスラエルの空爆を受けるパレスチナの人々を想い、ジュネのこのテキストを再読した。ネットでもそうだが、TVや写真を通してレンズというフィルターが間に入るとそれはフィクションの世界としと認識してしまう。検閲が権力者ではなくとも、目を背けたくなる情景は、主体からカットされるものだ。あるいはその臭い。ジュネが難民キャンプで起きた凄惨なパレスチナ人虐殺事件の現場に飛び込んで行ったとき、すでにイスラエル軍は引き上げた後だったが、おびただしい死臭と蝿が群がる死体の山に出会った。

2021/05/19

Hepatica nobilis

図書館本。パレスチナ人の難民キャンプ「シャティーラ」の虐殺事件。事件直後にキャンプ入りしたジュネはむごたらしい死体の山を目撃する。しかしそんな状況でも、フェダイーンたちは美しいとジュネは書く。それは彼が作家だから?安直すぎるだろうか。それに読後の居心地の悪さ。表題作のほかに、ウィーンでのインタビューや鵜飼哲の論文やパレスチナ国民憲章を収録。

2017/09/13

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