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国家をもたぬよう社会は努めてきた: クラストルは語る

国家をもたぬよう社会は努めてきた: クラストルは語る

国家をもたぬよう社会は努めてきた: クラストルは語る

作家
ピエール・クラストル
酒井隆史
出版社
洛北出版
発売日
2021-10-15
ISBN
9784903127323
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国家をもたぬよう社会は努めてきた: クラストルは語る / 感想・レビュー

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松本直哉

ノブレス・オブリージュという言葉の本当の意味は、首長が民に対して負債をもつということなのかもしれない。民が首長に負債を持ち貢納を納める国家において、支配と服従の関係が前提されるのとは反対に、国家を持たぬ社会では、民の代弁者でもある首長が、民に気前よく与え民を飢えさせないことが彼の義務で、その義務を果たさない首長は直ちに引きずりおろされる。そこで首長が命令せず、権力を持たないのは、それによって社会に分断を生じさせないためだった。アマゾンの部族のフィールドワークに基づく視点は革命的なまでに刺激に富む。

2021/12/12

月をみるもの

なるほど「交換形式」を軸として社会のありかたを分析している柄谷行人の「世界史の構造」は、クラストルが元ネタだったのか。。企業というのは最初から商品(労働力)交換が前提の存在であるわけだが、それでもスタートアップの時は互酬が、そして大きくなるにつれて、略取・再分配の割合が増えていってるような気がする。長らく「世代をまたぐ純粋な贈与」の場として人類存続の基盤であった家庭は、これからどうなっていくのだろうか。。。

2022/04/08

roughfractus02

国家に従属する社会から見れば、国家に抗する社会は国家を欠如した未開社会に見える。が、著者は国家に抗する社会の調査を通じて、国家を当然とする社会の従属状況を読者自身の現実として指し示す。国家に抗する社会では戦争状態における戦士とそれ以外の状態の首長を見張る人々が重要な役割を果たす。人々の行為が、権力を求心化する可能性のある両者に遠心化、分散化する力として働くからだ。著者のインタビューを収めた本書は、主に首長に権力が集中しないような社会の努力が語られる。背景には、内なるファスジムに向かう現代社会の危機がある。

2024/02/10

フリウリ

小規模な未開社会においては、政治的権力はむしろ忌避されていたこと、政治的権力は他者に「貢納」を求めるところに発生すること、が述べられています。小規模社会に必要なのはリーダーではなく、お話が上手なスポークスマンであり、他の社会と接触して問題を収められる人であった、ということから、個人的には「学級委員」的な存在を想起しました。権力はいかなる場所にも発生する(リーダーを置かないことは権力を遍在させる意図かもしれない)という前提に立てば、権力一般と政治的権力は分けて考えるべき、ということは、理解できます。7

2024/03/31

Mealla0v0

クラストルのインタビューに、それを越える分量=熱量のある酒井隆史の解説。本文中の訳注も充実しており、理解の手助けになる。「国家なき社会」は「国家に抗する社会」である。そのための首長制と戦争は、決してホッブズ的に解釈してはならない。国家がないために混沌に陥るのではなく、国家を「祓い除ける」ために戦争が行われる。国家なき社会にも権力は流通しているが、それは凝固していない。固定化された権力=支配はない。国家はそれをもたらす災厄――という意味でそれは偶然である――として祓い除けられなければならない。

2021/10/29

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