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上林暁傑作小説集『星を撒いた街』

上林暁傑作小説集『星を撒いた街』

上林暁傑作小説集『星を撒いた街』

作家
上林暁
山本善行
出版社
夏葉社
発売日
2011-07-04
ISBN
9784904816035
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上林暁傑作小説集『星を撒いた街』 / 感想・レビュー

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現在葬送のフリーレンのコスプレ中・寺「葬送のフリーレンて何や!」

良い小説集だった。装丁も良い。上林暁の力ではあるが、同じくらい選者である山本善行の力だと思う。巻頭の『花の精』のクライマックスは私も花に酔うようだった。『和日庵』は老いた鳴海要吉の文学を愛する気持ちと、その尊い経験と学識にリスペクトする上林暁の素敵さに私の心が勝手に共鳴して、気付くと泣いていた(乃木坂46の『シンクロニシティ』みたいだが)。文学者が多数登場する『青春自画像』、『聖ヨハネ病院にて』に読み進めたくなる病妻物『病める魂』『晩春日記』も涙。詩人・高台鏡一郎を偲ぶ『諷詠詩人』、最後に表題作。お薦め。

2019/08/27

ユメ

上林暁、という作家を、クラフト・エヴィング商會が紹介していたことで知った。好きな作家の好きな作家を読める、という無類の歓び。詩人のような、美しくて物哀しい言葉を紡ぐ人だ。夏葉社の丁寧な造本がよく似合う。表題作の中に広がる星を撒いたような街の灯の清らかさにはっと胸を突かれる。貧しい友人の家から見た夜景に主人公がこれほど感嘆するのは、ひとつひとつが生活の灯だからなのだ。人々の清貧な魂の煌めきだからなのだ。主人公が病床の妻への想いを月見草に寄せる「花の精」も好ましい。他の短編からは昭和の文士たちの交流も覗ける。

2018/05/14

kawa

夏葉社、出版初期(3作目?)の私小説集。私小説自体があまり得意でなく本作も途中で読みが止まっていた。しかし、視界の隅でチラチラと「私をどうしてくれるのよ…」の如き微熱閃を感じ、「仕方ないなあ」と手に取るとアラ不思議するする読了。何気のない人生の一コマの味わいや苦み、そんな描写がはまっていくのだろうか、癖になりまた手に取る作品なのかも。こういう世界を味わえる読み手になれば、また幸せだと思うのが今の現状。武田泰淳「目まいのする散歩」を思い出した。

2020/02/25

Y2K☮

夏葉社の本。太宰治チックな「花の精」がいきなり傑作。この人にも月見草がよく似合う。1年7か月も会えなかった奥様とのエピソードを描く2作は胸が苦しくなる。「命の家」も読みたい。著者は多くの私小説作家がそうであるような自己破滅型ではなく、社会と折り合いを付けられぬ気難しい芸術家でもない。だが底辺に近いところで懸命に生きる人たちとの接点に材を採った作品の筆致はどれも温かい。野暮天と見られたくないがゆえに理解を装う輩もいるけど上林暁は違う。不条理に翻弄される生涯の中で健やかな魂を失わぬ人間性に惹かれた。重版希望。

2023/11/21

ワッピー

夏葉社2冊目。一昨年ぐらいから読み友さんの話題に上がっていて気になっていた初読の作家。月見草とノヴァリス「花の精」、鳴海仙吉氏の思い出「和日庵」、改造社時代の思い出「青春自画像」、病妻との久しぶりの面会「病める魂」、病妻の帰宅「晩春日記」、高台鏡一郎氏の半生「諷詠詩人」、思いがけない再会と美景「星を撒いた街」を収録。文学で身を立てるということを身をもって実践し、夫人の入院により大変な苦労をされたということを読後に知って「病める魂」「晩春日記」に表れた心情にふたたび打たれました。描写の静けさが身に沁みます。

2020/04/01

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