ヒトはなぜ戦争をするのか: アインシュタインとフロイトの往復書簡
ヒトはなぜ戦争をするのか: アインシュタインとフロイトの往復書簡 / 感想・レビュー
ちゃこばあ
フロイト書簡は予想通り難しい。この往復書簡が第二次大戦前にされていたことに驚き、そしてなおずっとずっと今もなお戦争が続いていることが悲しい。「すべての人間が平和主義者になるまで、あとどれくらいの時間が…」「文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩みだすことができる!」まだまだ続きそう。せめて孫の代には終焉していますように。
2016/10/04
Speyside
ナチス政権誕生前夜の1932年、国際連盟から「今の文明でもっとも大切な問題について、好きな相手と意見を交換してほしい」という依頼を受け、アインシュタインがフロイトと交わした往復書簡。彼が選んだテーマは「人間の戦争からの解放」。「なぜ少数の人達が多くの国民を動かし、自分達の欲望の道具にすることができるのか」「教養のない人よりも知識人のほうが暗示にかかりやすい」等の問題提起は、現代社会に通じる。フロイトの回答は概ね悲観的だが、「文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩みだすことができる」との一文が一縷の望み。
2022/07/26
フリスビー
★★★☆☆アインシュタインとフロイトの書簡よりも、養老孟司の解説の方が長いのは大いに疑問(読み飛ばしました)ですが、最高の知性が紡ぎ出す問いと答えはいたってシンプル。物事というのは、突き詰めるほどシンプルになって行くのだなあとあらためて痛感。専門用語をひけらかしているうちは、下の下、と言うことでしょうね。「沈黙の艦隊」や「寄生獣」が、この問いのひとつの答えにはなっているとは感じました。短いので、ぜひ一度目を通してみて欲しい本です。
2015/03/27
まさ
アインシュタインとフロイトが戦争について書簡を交わす。アインシュタインの問いはシンプルだ。司法に権力を持たせること、各国が主権の一部を完全放棄すること。人間の心の問題、権力欲を制限する、憎悪と破壊への方向を変えること。フロイトの返信では、法と暴力とは一体的なものと捉えている。そして、文化の発展の必要性も。法による支配の限界はすでにわかっていたことなのではないか。解説で養老孟司は、暴力に代わるものを「世間」と考えた。自分たちの約束事と捉えること。知性を持って、意識していかなければならない。
2023/11/05
funuu
私の経験に照らしみると、「教養のない人」よりも「知識人」と言われる人たちのほうが、暗示にかかりやすいと言えます。「知識人」こそ、大衆操作による暗示にかかり、革命的な行動に走りやすいのです。戦後の日本社会は、徹底した平和主義で進んできた。そこではなにわともあれ「暴力はいけない」のである。それなら暴力に代わるもうはなにか。西欧ではそれは権力であり、法であると考えられている。それなら日本では暴力に代わるものとはなにか。「世間という規則」というしかあるまい。
2016/08/21
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