暑さと密をうまく避けつつ、地下さんぽ&百貨店さんぽへ!『散歩の達人』編集長コラム最終回

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公開日:2022/7/26

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散歩の達人』8月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 梅雨が明けたと思ったら、晴れたら猛暑、曇りや雨でもムシムシして、散歩に不適な日々が続きます。そんな中、月刊散歩の達人はこの8月号から新連載「首都圏お笑い劇場案内」を開始。表紙もちょっと豪華にして、装いも新たにリニューアルしました。表紙は亀戸出身の俳優、田中圭さん。表紙を眺めているだけで爽やかに感じる一冊です。

 大特集で紹介する街は、城東一の繁華街・錦糸町に、駅前がさらに華やかになった亀戸、名店が点在し、東部の穴場と名高い平井。新陳代謝を繰り返し、エネルギッシュな個性を発揮している三者三様の街ですが、根っこには下町らしさがしっかり息づいています。産業を下支えする町工場に、情緒たっぷりの個人商店。東西南北を血管のように流れる小さな水辺のそこかしこでは、無邪気な子供たちの声も響く。そんな人懐こさも愛しい城東ワンダーランドの今をご案内します。

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 今号の大特集は錦糸町・亀戸・平井エリアですが、もう一つの特集では「東京地下さんぽ」を掲載。暑さを避けつつ、東京を歩くのにぴったりの特集です。今回のコラムでは、夏でも楽しめる散歩術として、個人的におすすめしたい「地下さんぽ」、そして「百貨店さんぽ」について少しだけご紹介します。

 まず特集で紹介している「地下さんぽ」では、特集内では「東京駅周辺」「新宿駅周辺」を主に紹介しています。東京駅周辺だったら、大手町駅から東銀座駅まで約3キロ。新宿駅周辺だったら、西新宿駅から新宿三丁目駅まで約2.5キロもある(共に編集部調べ)、日本屈指の長さ。地下だけで十分散歩を楽しめるのです。特集内には東京駅周辺、新宿駅周辺のイラストマップも掲載! ぜひイラストマップを眺めながら地下散歩を楽しんでみてください。

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今号では「東京駅周辺」「新宿駅周辺」のイラストマップをそれぞれ見開きで掲載。どこからどこがどうつながっているかが一目瞭然だ。

 ところで、日本で一番古い地下街ってどこにあるかご存じでしょうか? 現存する日本最古の地下街は浅草地下商店街ですが(昭和30年[1955]開業)、じつは浅草は3番目の開業。日本で最初にできた地下街は、昭和9年(1934)開業の地下鉄神田駅の地下街で「須田町ストア」と呼ばれていました。この地下街、もうお店はないのですが、地下鉄銀座線の神田駅を降りて、須田町方面の改札を出ると地下街跡の通路を通ることができます(地上へは6番出口に出ます。ちなみに2番目にできた地下街は銀座三原橋)。お店があったことが信じられないくらい狭い通路ですが、ガラス越しに当時の壁を見学することができます。お近くに行った際はぜひ見てみてください。

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神田駅地下街跡を示す説明板。当時の壁も保存されている。

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地下鉄神田駅6番出口へ抜ける通路。ここが日本初の地下街だった。

 続いては「百貨店さんぽ」。ここは冷房も効いているから、より快適に散歩を楽しめます。中でもおすすめは日本橋の2大百貨店、髙島屋と三越。この2店は館内も複雑で、歴史もあるから、お店だけじゃなく、様々な見どころにあふれています。例えば日本橋髙島屋は百貨店初の重要文化財なので、建築自体が貴重。コンシェルジュと回るツアーも定期的に開催されています(要予約)。館内には案内係もいるレトロゴージャスなエレベーターのほか、大理石の壁の中にはアンモナイトなどの化石も! 日本橋三越といえば、なんといっても本館1階ホールに鎮座する天女像ですが、本館6階の三越劇場のシブかっこよさもたまらない。なんと内装は昭和2年(1927)以来変わらないとか(座席以外)。また、ステンドグラス風の表示板が印象的な地下鉄入り口も穴場感があっていい! エレベーター専用入り口ですが、ここから地下へ降りて、三越前駅構内の金色のエスカレーターでホームまで行けば、まるでタイムスリップ気分です。

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日本橋髙島屋は外観から見事。コンシェルジュと巡るツアーも体験したい。

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日本橋三越本店のライオンがいる入り口のすぐ近くの角を曲がると見える入り口。地下1階食品売り場、地下鉄改札階につながる。

 そしてどちらも特別食堂がすごいんです。三越だったら、和食、寿司、洋食。髙島屋だったら、帝国ホテルの洋食に、野田岩のうなぎ、大和屋三玄の和食から注文することができます。例えば、野田岩のうなぎを食べた後のデザートに帝国ホテルのチョコレートサンデー、なんて贅沢なこともできちゃうのです。
というわけで、百貨店の中だけでも十分散歩を楽しめるはず。今回紹介した百貨店さんぽ、地下さんぽ、ほかには水上バスに乗って水辺を感じる散歩もおすすめ。水分補給も忘れずに、東京ならではの夏の楽しみを探してみてください。

 また、今号の大特集「錦糸町・亀戸・平井」の方も酒場やグルメはもちろん、さまざまな企画がてんこ盛り。表紙に登場していただいた田中圭さんのインタビューをはじめ、ウルフの愛称で親しまれた元横綱・千代の富士と九重部屋ゆかりの街について取材した「ウルフに捧ぐ! 九重部屋の愛した錦糸町」「祝40周年、錦糸町河内音頭大盆踊りへ」「下町ひんやりおやつ図鑑」「コーヒーと〇〇のステキ空間」「石鹸の街としての軌跡をたどる」「カメイドクロック、チクタク営業中!」などなど盛りだくさん。

 この夏も厳しい猛暑が続き、新型コロナウイルス感染拡大も予断を許さない状況ですが、三密や暑さをうまく避けつつ、本誌を参考にして散歩を楽しんでいただけるとうれしいです。

 そしてじつは私土屋はこの8月号を最後に編集長を交代することになりました。編集長になってから、毎月書かせていただいたこのコラムも今回で最終回。でも散歩の達人編集部は新体制になってまだまだ続きます。今後とも街歩きされる際には『散歩の達人』を思い出していただければ幸いです。5年間ありがとうございました!

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より2022年8月号まで同誌編集長。

『散歩の達人』最新号は 7月21日(木)発売!