すごいぞヨシタケシンスケ!『MOE』編集長コラム「大人が絵本を読むのって変ですか?」第2回

文芸・カルチャー

更新日:2018/4/11

 9月になると、MOE編集部ではMOE絵本屋さん大賞のアンケートの配布が始まります。と言っても、MOE絵本屋さん大賞についてご存じない方も多いと思うので簡単にご紹介させてもらいます。

 MOE絵本屋さん大賞は、新しい絵本をみなさんに知ってもらうために、年に1度、全国の書店員さん(絵本、児童書売り場担当者)約3000名に今年一番おすすめしたい絵本を選んでもらい、得票順1位~30位まで発表している賞です。年末になると書店の売り場でMOE絵本屋さん大賞フェアなども行っているのでぜひチェックしてみてください。

 そんな、MOE絵本屋さん大賞から生まれたスターを今回は紹介させてもらいたいと思います。その作家の名前はヨシタケシンスケ。昨年で第9回を迎えたMOE絵本屋さん大賞で3度の1位になってしまったという逸材です。

 今年44歳。同年代でいうとイチローさんやGACKTさん、俳優の堺雅人さんなどがおり、多くの方が各界のトップで活躍している年代。現在の実績でいうと同年代の人たちと比べても遜色ないように見えますが、ヨシタケさんは絵本作家デビューしてまだたったの4年。会社員、広告美術の仕事やイラストレーターを経て、40歳の時に絵本『りんごかもしれない』でデビューしました。比較的年齢層の高い絵本作家の中でも遅咲きのデビューと言えます。

 頭は丸刈り、服装はいつも紺色のTシャツ(冬はセーター)にモスグリーンのチノパン。180センチを超える高身長で少し猫背。人を観察するのが好きで、自分の考えを掘り下げていくのも好き。アウトドアが苦手なインドアタイプです。

 では、今回なぜヨシタケさんの絵本を大人におすすめしたいのか? いろんな魅力がありますが、僕はヨシタケ作品を読むと「頭の中がリフレッシュする」と表現させてもらいます。普段、生活の中で僕たちが考えていることって「昼ご飯は何を食べようか?」「仕事めんどくさいな」「あの女の人きれいだな」「お金がほしいな」など本当に日常に沿った表面的なものが多いんですよね。日常はめまぐるしいので、考えた内容もさっさと結論を出すなり忘れるなりしてどんどん過ぎ去っていきます。

 でも、ヨシタケ作品の中では立ち止まって一つのものごとを深く、そしていろんな角度から掘り下げていきます。その行為は、小さな子どもが空想をふくらませて現実逃避するのにも似ているし、演劇のエチュードにも似ています(この演劇のエチュード発言は、女優の室井滋さんがおっしゃってました)。テーマで扱っていることは「りんご」「つまんない」「服が脱げなくなった子ども」など、為になったり勉強になることばかりではありません。

でも、日常最前線を離れて自分が生活していくのに全然関係のない物事をじっくりと考えると不思議と頭がリラックスできるんですよね。ヨシタケ作品を読むときはぜひ「こういうこと考えたことあるよね」とか「これはないだろ」とかブツブツ言いながら、一人部屋にこもってニヤニヤしてください。より効果があるはずです。

 そしてヨシタケ流の発想方法をたまに日常に取り入れてみてはいかがでしょうか? 子どもだと「くだらないことばっか考えてないで、早く勉強しなさい!」と親に叱られてしまいますが、みなさんは大人なので…。大人こそ、ぜひヨシタケ作品を読んでみてください。

 そんなヨシタケシンスケのすべてをまとめたMOEの特集(2017年4月号)がバックナンバーで手に入ると思うのでぜひご購入ください。これは宣伝です。

 ここから10月3日発売のMOE11月号の紹介です。今回、表紙と巻頭で大特集するのは「バムとケロ」「ガラゴ」シリーズ「ぶーちゃんとおにいちゃん」で大人気の絵本作家「島田ゆか」さんです。

 島田さんの絵本には、絵本でできるエンターテインメントがふんだんにちりばめられています。たくさんの個性的なキャラクターが登場し、遊びと仕かけがいっぱい、何度でも繰り返し楽しめる夢のテーマパークです。そんな島田作品のルーツとあくなきこだわりについて、仕事場のあるカナダのトロントでたっぷりと取材させていただきました。

 スペシャルゲストとして工藤ノリコさんが、ノラネコぐんだんと島田ゆかキャラクターのコラボイラストを描き下ろし、桑原奈津子さんが「ぶーちゃんとおにいちゃんのロールケーキ」を作りました。こちらも必見です。

 今回もMOEはお店で買えないスペシャルなふろくを作ってみました!
「島田ゆかキャラクター全員集合!特大A3シール」 
「バムとケロ」「ガラゴ」シリーズ「ぶーちゃんとおにいちゃん」に登場するキャラクターたちの豪華なシールで島田ゆかさんにデザインをしていただきました!

 その他にも、スヌーピーやヒグチユウコ連載「ほんやのねこ」などおすすめがいっぱいです。島田ゆか作品もぜひ大人に読んでほしいのでおすすめします!

『月刊MOE』最新号は10月3日(火)発売!

『月刊MOE』11月号(白泉社)

門野隆(かどのたかし)編集長
1974年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後の1999年に株式会社白泉社入社。青年漫画誌『ヤングアニマル』にて15年、「コンテンツビジネス部」にて2年を経て、2017年12月よりMOE編集部所属および編集長に。MOE編集部に来てはじめて子どものころ意外とたくさんの絵本を読んできたことに気づく。

▶『MOE』公式サイトはこちら

▶次回の門野編集長のコラムは、11月3日頃更新予定です!