漫画編集者の仕事は“作品の伴走をする”こと――『BE・LOVE』編集長が語るその裏側【編集長コラム第2回】

アニメ・マンガ

2017/11/15

 ダ・ヴィンチニュースは、雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の「編集長コラム」企画をスタートしました! 今回ご登場いただくのは『BE・LOVE』の岩間編集長です。

 漫画編集者の仕事は、私が入社したころに比べ、格段に種類が増え、ひと言ではその全容をうまく説明できない状況ですが、あえてひと言で表現するなら「漫画家さんが描く作品の伴走をする」こと。コラム第2回は、その「伴走」について、少し紹介をさせていただきます。

「伴走」のメインは、やはり漫画家さんとの「打ち合わせ」。アイディアやネーム(漫画の設計図)のブラッシュアップを目指すことがメインになりますが、こちらからアイディア出しをすることもあります。

 たとえば、私自身が担当している『ギャルボーイ!』という作品。最新23号に載っているエピソードは、打ち合わせの席で「普段やっている家事といえば、冷蔵庫の賞味期限切れをチェックすることなんですよ。これが妻には嫌がられてまして」という私の身の上話がきっかけになっています。これは、アイディア出しというより、自分の恥をさらしているだけですが、作者の中村真理子先生が「それだ!」と(笑)。入社当時は、打ち合わせの席で自分をさらけ出すことは、ほぼできませんでした。単純に恥ずかしくて…。当時のK編集長に「漫画家さんの前では、もっと心を開けよ!」と毎日のように言われたことが、今でも生きているような気がしています。
 もちろん、「打ち合わせ」は多種多様。このような世間話ばかりではありませんので、あしからず。

男まさりの妻・晃と、夫・友弘は、何から何まで対照的…。

 あと、「BE・LOVE」には、いくつか動物漫画があるのですが、そのうちのひとつ、こなみかなた先生の猫マンガ『スーと鯛ちゃん』では、担当編集者の絵コンテが、打ち合わせの出発点となっています。

担当Yが描いたBE・LOVE23号掲載分のコンテ。これをこなみ先生がどう解釈し、表現するのか。発売中の23号にその答えが!


「鯛ちゃん」のような動物ショートは、言葉のやり取りより、イメージを具体的に共有することが大切。そのために、こうしたコンテは有効のようです。担当曰く「私の拙いコンテを、こなみ先生はいつも数十倍の面白さ、かわいさで返してくださる。そこに毎回感動しています」。

 打ち合わせ以外にも「伴走」はあります。作品づくりの取材に同行、資料収集もありますね。そして「伴走」は、原稿が仕上がってからも続きます。たとえば、でき上がった作品に“あおり”をつける作業。ここは、担当編集者の個性が出るところ。とにかくにぎやかにあおるタイプや、画面を邪魔しないようにあえて控えめにするタイプなど。

 私は小学生のころ、愛読していた某少年誌のタイトルページ(扉ページ)を、毎週全作品切り取って、ノートに貼りつけることを趣味という名の日課にしていました。単純な“スクラップ”のつもりでしたが、その頃からどの作品のタイトルページがかっこいいか、見比べていたのも事実。もちろん当時は、それを編集者が担当しているなど知りませんでしたが…。パッと見で目に付くかどうかは、あっという間に読み終えてしまう雑誌においては、今も大切だと思っています。また、目立つためだけでなく、作品の魅力を端的に表すあおりは、作品への導入にも一役買うことがあります。

いま話題の『傘寿まり子』のタイトルページ(BE・LOVE23号より)。80歳で攻めの人生を謳歌しているヒロインを象徴する、ポジティブなあおり。

 編集者には、漫画家さんが〆切ギリギリまで頑張って描いた作品を、一人でも多くの方に読んでもらいたいという気持ちがあります。そのためには、どこまでも“あがく”。なにせ、タイトルページや欄外のあおりは、その思いの表れと言っていいでしょう。「BE・LOVE」も作品によってあおりのテイストが違いますので、ぜひ見比べてみてください。

「伴走」は、作品が世に出てからも続くのが、今の特徴かもしれません。雑誌掲載を経て、単行本になり、店頭に並ぶ。新刊ラッシュの荒波のなかで、作品の魅力をどうお客様に伝えられるか。1巻目だと、名刺代わりの試し読み小冊子やPOPなどを作ることがありますが、2巻以降はいわゆる“ちゃんとした”宣伝物をなかなか作れません。なので、編集者はここでも“あがき”ます。

 長い巻数となっている『ちはやふる』の例ですが、毎巻毎巻の魅力を手作りPOPに書いて、書店さんに配ることがあります。「夜なべして編んだ手袋」の世界ですね。

『ちはやふる』29巻刊行時の手作りPOP。想像以上にヒョロくんが店頭で映えた(笑)。

 雑誌によって、また出版社によって、その「伴走」の形は違います。できることも限られています。ですが、私自身は「神は細部に宿る」を信じているので、日々の細かいサポートがチリツモとなり、いつかいい結果につながると思っています。

 言わずもがなですが、漫画家さんのお仕事にも「神は細部に宿って」います。今も昔も、完成原稿をいただく時に思うことで、「BE・LOVE」のような月2回刊というタイトなスケジュールの中で、毎回ここまでこだわっていただけることが本当に嬉しく、だからこそそれをもれなく読者の皆さんに伝えたい、そういう気持ちでいます。

 その“神”は、雑誌だけでなく単行本にも宿っています。十数年前から装丁にこだわるようになり、今は「ジャケ買い」が当たり前の世の中です。漫画家さんも、素敵なイラストを描いてくださったり、巻末のおまけページにこだわってくださったりで、どの単行本も魅力満載でお届けできていると思います。ここでは、ちょっと前の作品ですが、漫画家さんのこだわり例として『千年万年りんごの子』(田中相先生)を挙げてみます。

 ITANコミックスは、創刊当初からそのこだわりを売りにしてきましたが、『千年万年』のカバー裏は“絶品”です。このような楽しい試みを、これからも機を見て実践していけたらと考えています。

カバー裏の「津軽林檎新聞」。作品の世界を深く楽しめる企画で、好評だった。

 以上、漫画編集者の仕事をのぞき見いただく回となりましたが、少しでも伝わりましたでしょうか? これ以外にもいろいろありますが、今回はここまでということで…。

 最後に、今回も当コラムのテーマに合ったオススメ本を、一冊ご紹介したいと思います。
『久米宏です。 ニュースステーションはザ・ベストテンだった』(世界文化社刊)。


 どうせやるなら、これまでの常識を覆すことをやりたい。そのためには(ニュースステーションなら)テーブルの形、手に持つペンまでをこだわりぬいた久米さんの姿勢。当たり前のようにテレビで見ていたものが、周到な準備によってできあがっていたというエピソードは、とても刺激的です。前回のコラムでも「先入観を壊す」ということに触れましたが、まさに同じこと。それは、細かいことの集積ででき上がっていることを、心に留めておきたいところです。

 BE・LOVE最新23号、絶賛発売中! 次の24号は12月1日発売です。24号より3号連続新連載が始まりますよ!

『BE・LOVE』最新23号は絶賛発売中! 次号24号は12月1日発売!!

BE・LOVE』23号(講談社)

岩間秀和(いわまひでかず)編集長
1993年講談社入社以来、BE・LOVEひと筋。2012年2月より編集長に。
BE・LOVE編集部では、新・想像系コミック誌「ITAN」も編集しています。

▶『BE・LOVE』公式サイトはこちら

▶次回の岩間編集長のコラムは、12月15日頃更新予定です!