2017年絵本屋さんにもっとも評価が高かった絵本は?『MOE』編集長コラム「大人が絵本を読むのって変ですか?」第5回

文芸・カルチャー

更新日:2018/4/11

 雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の「編集長」によるコラム連載。今回ご登場いただくのは『MOE』の門野編集長です!

 毎年1年を締めくくる12月末、「MOE絵本屋さん大賞」が発表されます。第2回の連載でも触れさせていただきましたが、新しい絵本をみなさんに知ってもらうために、年に1度、全国の書店員さん(絵本、児童書売り場担当者)約3000名に今年一番おすすめしたい絵本を選んでもらい、得票順に1位~30位まで発表している賞です。

 そんな「MOE絵本屋さん大賞」が今回でめでたく10回目を迎えることができました! 最初はMOE読者に向けた小さな企画として始まったものが、今では3500店を超える全国の書店や数多くのWEBサイトなどでフェアを行うことができるようになり、読者に最も信頼される絵本賞のひとつに成長できました。「すごくうれしい」のひと言につきますが、ここまで成長できたのはご協力いただいた皆さまのおかげですので、この場を借りて御礼申し上げます。

それでは第10回MOE絵本屋さん大賞2017のランキングを発表させていただきます!

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第1位 『なつみはなんにでもなれる』
ヨシタケシンスケ/作・絵 PHP研究所


第2位 『いっさいはん』
minchi/作・絵 岩崎書店


第3位 『つまんない つまんない』
ヨシタケシンスケ/作 白泉社


第4位 『おいしそうなしろくま』
柴田ケイコ/作・絵 PHP研究所


第5位 『ノラネコぐんだん あいうえお』
工藤ノリコ/作 白泉社


第6位 『生きる』
谷川俊太郎/詩 岡本よしろう/絵 福音館書店


第7位 『ノラネコぐんだん そらをとぶ』
工藤ノリコ/作 白泉社


第8位 『おじいちゃんとパン』
たな/絵・文 パイ インターナショナル


第9位 『いらないねこ』
ヒグチユウコ/作 白泉社


第10位 『アームストロング 宙(そら)飛ぶネズミの大冒険』
トーベン・クールマン/作 金原瑞人/訳 ブロンズ新社


第10位 『そらの100かいだてのいえ』
いわいとしお/作 偕成社

※第11位~第30位はMOE2月号(2017年12月28日発売)をご覧ください。

 皆さんご存じの作品はありましたか? 今回のランキングを見て「絵本も時代を反映するのだな」とつくづく思いました。2017年は「絵本ブーム」という言葉が各メディアに取り上げられ、MOE編集部にも多くの取材依頼がありました。今まで絵本を忘れていた大人たちが、絵本という存在を意識するようになってくれたのです。これは僕がこのコラムで目指していることですし、非常にありがたいことです。その「絵本ブーム」の立役者であり、興味のなかった多くの人を絵本の世界に連れてきてくれたのが、今回で4回目の第1位に輝いたヨシタケシンスケさんです。またまたまたとなりましたが、おめでとうございます!

 アンケートを書いていただいた書店員さんからも、「同じ作家に投票することは勇気がいる」という話が聞こえてきました。それでも選ばれてしまうヨシタケシンスケさん、絵本に興味がなかった大人たちをも巻き込んだ「絵本ブーム時代」を象徴する存在なんですね。

撮影/黒澤義教

 上位の作家陣を見てみると、minchiさん、柴田ケイコさん、たなさんなど新人の絵本作家が選ばれていることも特徴です。これらの作家さんは、テーマ、企画、絵柄も含め読者へのアピールが強い作品づくりに成功しています。作品性を高めながらも、より多くの人が気軽に手に取って、その素晴らしさと楽しさを味わってもらいたいという作り手側の意図と工夫が伝わってきました。

 驚いたのは、昔から親しまれている定番である物語絵本が少ないことです。私の分析ですが、物語絵本のジャンルでは名作と言われるロングセラー絵本がたくさんあり、その超強力なロングセラー作品が新しい物語絵本を目立たせづらくさせているところに要因があるのではないかと考えます。現代の若手作家たちが生み出す新しいジャンルの絵本名作ぞろいのロングセラー物語絵本、その両輪がうまくバランスを保っているのが今の絵本界の現状なのだと思います。もちろん新しい物語絵本は生まれていますし、それらの作品が次なるロングセラー作品に成長してほしいと願っています。

 「MOE絵本屋さん大賞」は、みなさんが絵本に親しむきっかけづくりになることを目指しています。2017年ランキングには大人も子どももそれぞれの立場で楽しめる絵本がいっぱいです。まずは、MOE2月号(2017年12月28日発売)絵本屋さん大賞の特集号をご購入いただき、気になった1冊から手に取ってぜひ読んでみてください!

©Yuka Shimada/Ojigi Bunny Inc

MOE2月号はMOE絵本屋さん大賞のシンボルキャラクター、島田ゆかの「ぶーちゃんとおにいちゃん」が目印です!

そんなMOE2月号には、定番となった大人気ふろくが…!
ヒグチユウコ「いらないねこ」カレンダー 2018

大きい声で言いたいのですが、
ヒグチユウコのカレンダーが手に入るのはMOEだけです!」
そう、ヒグチさんのカレンダーは売ってないのです。描きおろしの絵も収録されたカレンダーが今年も素敵に出来上がりました。かなり人気ですので、買い逃しのないようにお願いします!!

『月刊MOE』最新号は12月28日(木)発売!

『月刊MOE』2月号(白泉社)
リンク先アドレス:http://www.moe-web.jp/moe/20182.html

門野隆(かどのたかし)編集長
1974年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後の1999年に株式会社白泉社入社。青年漫画誌『ヤングアニマル』にて15年、「コンテンツビジネス部」にて2年を経て、2017年12月よりMOE編集部所属および編集長に。MOE編集部に来てはじめて子どものころ意外とたくさんの絵本を読んできたことに気づく。

▶『MOE』公式サイトはこちら

▶次回の門野編集長のコラムは、2月初旬更新予定です!

「大人が絵本を読むのって変ですか?」『MOE』編集長コラム第4回
「大人が絵本を読むのって変ですか?」『MOE』編集長コラム第3回
「大人が絵本を読むのって変ですか?」『MOE』編集長コラム第2回
「大人が絵本を読むのって変ですか?」 『MOE』編集長コラム第1回