1年ぶりの「ひとり東京さんぽ」特集!『オズマガジン』統括編集長の「今日のよりみち」―― 日常はよりみちのなかにおもしろさ⑤

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更新日:2018/4/11

 雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の編集長によるコラム企画! 今回ご登場いただくのは『オズマガジン』の古川統括編集長です。

 ダ・ヴィンチニュースをお読みのみなさん。こんにちは。オズマガジンの古川です。今年もよろしくお願いいたします。

 このあいだ年があけたと思ったら。いつのまにかもう1月も中盤です。でもしっかり日は長くなりはじめていますし、目には見えませんがかすかに花粉が飛びはじめた気配もしています(はくしょん)。

2017年1月12日発売号「ひとり東京さんぽ」

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 さて、発売中のオズマガジン最新号の特集は「ひとり東京さんぽ」です。実はこの特集、昨年2017年の1月にも同じ特集をさせていただきました。当時は初めての企画だったので、みなさんにどう受け入れていただけるものかと僕らも不安もあった特集なのですが、結果的にこの特集は半月くらいで多くの書店さんの店頭から在庫が消えるほど、ものすごいスピードで売れていきました。ほんとうに嬉しかったのを覚えています。もしこのコラムを読んでいて、ご購入くださった方がいらっしゃったら、この場を借りてお礼をさせていただきます。どうもありがとうございました。

 この特集は読んで字のごとく「ひとり」で「東京をさんぽ」できるように、たくさんの情報を集めています。

 特徴的なのは、降りた駅とは別の駅から電車に乗って帰ることを推奨していること。たとえばさんぽのスタートが浅草駅だったら、さんぽのゴールは蔵前駅。神保町からさんぽをスタートさせて、お茶の水駅から帰る。そんな感じです。

 東京というのは、たくさんの駅と路線が毛細血管のようにクロスしています。そして案外わたしたちはその位置関係を知らないものです。もはや都心には「駅徒歩20分」という概念はほとんど存在していません。ひとつの駅から20分歩いたら、それはもう別のどこかの駅の方が近くなっています。それくらい、東京は移動が便利な場所なのです。

 それなのにわたしたちときたらそういう便利さを忘れて「もっともっと効率的に。面倒くさいのは悪だ」みたいに余裕をなくしています。いったいどうしちゃったんでしょうか。

 青山にいるときに、六本木に移動するの面倒くさいなあと思ったことはありませんか? たとえば外苑前から六本木に行くには「渋谷まで出て山手線に乗り換え、恵比寿まで行って日比谷線に乗って…。もしくは青山一丁目まで戻って大江戸線で。でも大江戸線はホームが深いから面倒くさいし…」なんて具合に。

 でも、そういうときは、歩いたらいいんです。実は外苑前から六本木まで、歩いたら30分もかからないでしょう。電車に乗るのとたいして変わらないのです。

 今回の特集で、そんなふうにみなさんがふだんは歩かない道を歩いてもらえたらと思って、編集部が先に、東京をあちこち歩いてきました。

 そしてもうひとつの特徴は「ひとり」を推奨していることです。

 金曜日まで残業続きで働いて、土曜日に目が覚めたらもう12時近く。掃除をして洗濯をして、お腹が減ったなぁなんて時計を見るともう2時で、なんて経験は誰にでもあると思います。でもそんなときに誰かを誘って出かけるのも急な話だし、なにより誰にも会いたくない日だってある。窓の外はぴっかり晴れていて、土曜日の午後はまだ十分残っている。そして明日は日曜日。

 そういうなんともいえず、少し切なくて自由な気分のときに、この本がそばにいて、役に立てたらと思います。そのひとりの時間に、そっと寄り添えるように。そしてあなたがどこかまだ降りたことのない駅で降りて、ひとりでお茶を飲みながら本を読んだり、ケーキを食べたり。そういう1日のきっかけに僕たちがなれたら、どんなに嬉しいでしょうか。

 東京はまだ、あなたが知らない駅と、あなたが歩いたことのない道と、あなたが会ったことのない人ばかりです。そしてその場所やお店にもそれぞれの日常があり、あなたの知らないところでその日常はちゃんと日常として存在している。わたしたちの日常がたいして代わり映えしないように、その場所でたいして代わり映えもなく。

 でもその「代わり映えなく」の交換は、わたしたちがこの世界で生きていくのを少しだけ肯定してくれるのです。なぜでしょうか? まだ食べたことのないものや、知らない誰かのちょっとした心遣い、笑顔。そういうものが東京の町のあちこちにあって、あなたはそれに出会い、そこからどうしてかまた、生きていく強さをもらうことができる。ときにこの世界の美しさを知ることができる。そして経験的に、それはひとりのときの方が圧倒的に多い。

 ぜひこの本を1年間あなたの近くにおいていただけたらと思います。そしてそういう午後に思い出して引っ張りだして、まだ行ったことのない町を歩いてみてください。この本に載っている情報なんて、その町のほんの一部の一部です。あなたはそこでもっともっとたくさんの「町の息づかい」のようなものを感じることができるはずです。この本はあなたのその一歩目のきっかけにすぎないし、そうやって使ってもらえたらそれでいいのです。

「ひとり東京さんぽ」

 ぜひご覧になって、東京を歩いてみていただけたらと思います。

 では。いい1日を。

『オズマガジン』最新号は1月12日(金)発売!

OZ magazine 2018年2月号
(スターツ出版)

古川誠(ふるかわまこと)編集長

1998年スターツ出版入社。販売部の営業を4年務めたのち、2002年よりオズマガジン編集部に配属。2008年より編集長に。ほかクルミド出版より小説『りんどう珈琲』を出版。2018年には2作目の小説「ハイツひなげし」をセンジュ出版より刊行予定

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▶次回の古川編集長のコラムは、2月12日頃更新予定です!