“散歩の達人”発祥の地、大塚へ 『散歩の達人』編集長コラム第4回

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2018/1/22

 こんにちは。月刊『散歩の達人』編集長の土屋です。今月号の特集は「巣鴨・大塚・駒込」。山手線の北、ちょうどてっぺんにあたる3駅の街を紹介しています。ちょっとマイナーなエリアだな、と思われるかもしれませんが、街はそれぞれ見事にキャラ立ちしています。巣鴨はおじいちゃん・おばあちゃんの街(というステレオタイプのイメージだけではありません!)。大塚は妖艶な繁華街をもつ、山手線と都電の乗換駅。駒込は由緒正しきお屋敷街。そして、忘れてはならないのが、この3つの街には元気たっぷりの商店街がそろっていること。だから、どの街も散歩が楽しいんです。

『散歩の達人』2月号(交通新聞社)

 この3つの街の中でも、特に個人的な思い入れが強いのが大塚。じつは大塚駅北口駅前にあった大塚ビルで、平成8年(1996)3月21日、雑誌『散歩の達人』が創刊したのです。まさに大塚は散歩の達人発祥の地。私、土屋も大塚ビルに通っていたのでした。でも今や大塚ビルは取り壊され、あの特徴的だったビルの姿はなく、今後はマンションになるのだとか。ただ、この大塚ビルはすごかった。なんと大塚には池袋よりも先にデパートがあったのですが、それが大塚ビル。「白木屋デパート」として昭和11年(1936)に建築され、第二次大戦中に鉄道省の持ち物となりましたが、戦火を乗り越え、昭和31年(1956)には再度「松菱ストアー」として百貨店の姿を取り戻す。昭和34年に閉店し、翌年からテナントビルとして復活。そこに、後に散歩の達人を作る弘済出版社(現・交通新聞社)が入ることになったのです。

大塚駅北口駅前より。左上の工事中スペースの上の空間に、かつて6階建ての大塚ビルがそびえていた。「散歩の達人」の広告が付けられていた時期も。

 ビル内の大理石造りだったエレベーターホールや階段回りのこと、床が学校みたいに木だったこと、地下には都市伝説が……などなど、大塚ビルの話だけでも書き出すときりがないので、このあたりで止めておきますが、おそらく大塚にゆかりがあるなら、思い入れのあった人も多かったことでしょう。それくらい大塚のランドマーク的存在だったのです。

 当時はそんな大塚ビルを拠点に、ランチを食べたり、夜の酒場を巡ったり、北口も南口もいろいろと歩き回ったことを思い出します。ランチで忘れられないのは、三業通りのとんかつ屋、南口の商店街の天ぷら屋さんなどなど、これもいろいろあるのですが、今回誌面で紹介している中では『キッチンABC』。ABCはかつて北口にもあって、どちらかというとそっちのほうによく行っていたのですが、頼んでいたのは8割方オリエンタルライス。オリエンタルライスとはABCの名物で、肉とニラとタマネギがニンニクダレで炒められ、玉子の黄身とともにご飯の上にのっている、ごはんが進む一品。ニンニクの匂いが強いので、ちょっとその後の仕事に差し障る場合は避けましたが、つい頼んでしまう料理でした。

『キッチンABC』の名物料理、オリエンタルライス680円。セットにすると、プラス120円でメンチカツなどの揚げ物が付く。

 また大塚といえば、都電と天祖神社は外せません。山手線の下を都電がくぐる「大塚駅前電停」のところは、レンガ造りのガードが残っていて、一見の価値があります。また、都電沿いには今ではボランティアによりバラが育てられていて、5月と10月にはきれいに咲き誇るそう。取材時の冬でも数輪咲いていました。天祖神社は大塚の街の鎮守。町の人みんなに崇められているけれど、OLさんたちが境内の本殿脇でコーヒーを飲んでいたり、おじさんが新聞を読んでいたり、地域の憩いの場になっているのもいい。私も大塚に行くと必ずお参りするようにしています。

大塚の鎮守、天祖神社。いつ行っても心落ち着く場所だ。大塚駅南口を出るとすぐに天祖神社と書かれた石碑が出迎えてくれる。

 さらに大塚には『ぼんご』のようなおにぎり専門店があったり、銭湯の脱衣所の天井に宇宙の絵が広がっていたり、ちょっと風変わりな街の側面がありますが、『ペンギン堂雑貨店』も街のオモシロ物件の一つ。何を隠そう、散歩の達人の創刊以来のライターさん(ガラス職人さんでもある)が経営している雑貨店なのですが、店内にはペンギングッズがたくさん。現在は仮店舗だが、5月からは大塚に開業する星野リゾートのホテル「OMO(おも)5」に入るそう。お店の情報などは誌面でご確認を。

ペンギングッズ専門店『ペンギン堂雑貨店』のもう一つの顔が『高野硝子店』。じつは店主はガラス職人でもあるのだ。

 大塚ビルがなくなっても、喫茶店も銭湯も飲み屋も多く、歩く楽しみがたくさんある大塚。ぜひ本誌を持って出かけてほしいと思います。

 ほかにも誌面では、巣鴨や駒込の情報もたっぷり。また、喫茶店やグルメ、酒場情報のほかに、「巣鴨地蔵通り商店街で地蔵菓子&赤いプレゼント探し」「もっと知りたいファイト餃子」「大塚の名日本酒店」「現役の花街・大塚三業地の今昔」「駒込の4銀座商店街イラストマップ」など企画ページも盛りだくさん。巣鴨・大塚・駒込にゆかりのある人も、新たに興味を持った人も、どうぞ一度、本誌を手に取ってみてください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

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