「かっこいい絵本、モテる絵本」『MOE』編集長コラム「大人が絵本を読むのって変ですか?」第6回

文芸・カルチャー

2018/2/2

 雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の「編集長」によるコラム連載。今回は、絵本の雑誌『MOE』の門野編集長です!

 もう2月なのですが、2018年一発目ですのでご挨拶を。本年もどうぞよろしくお願いいたします!今年も絵本について少しでも楽しさを知っていただくためにコラムをコツコツ書かせていただきます。

MOE絵本屋さん大賞贈賞式とともに1年がスタート!

 もうすぐバレンタイン、そしてホワイトデー、新入学、新社会人と贈り物をするにはぴったりの季節です。そこで、誰かへ贈るのにぴったりの絵本をご紹介…と思ったのですが、それは2月2日発売のMOE3月号に掲載しておりますので、そちらをご覧ください。

 代わりと言ってはなんですが、今回は「大人が読んでかっこいい絵本、モテる絵本」を独断で紹介したいと思います。絵本を読む動機なんてなんでも良いのですが、せっかくだったら他人に話したときに「かっこいい」と思われたくないですか? 絵本について語る意外性+かっこいい絵本できっとステキな大人に見えるはずです。

 ということで、かっこよく見える絵本だと思われる条件を考えてみました。

①外国作家の絵本である
②絵柄が大人っぽい
③作家について語れるうんちくがある
④知的に見える
⑤夢やロマンがある
⑥解釈が難解であるように見える(実は正解がない)
⑦本の装丁デザインが優れている

などなどですかね?

 では、おすすめの絵本を具体的に見ていきましょう。

『ハリス・バーディックの謎』C・V・オールズバーグ/絵と文 村上春樹/訳 河出書房新社

【著者について】
 訳者はなんとあの村上春樹。実はオールズバーグ作品の訳を村上春樹さんが多く手がけています。これだけでちょっと文学のにおいもしてきますね。クリス・ヴァン・オールズバーグは、コールデコット賞(アメリカで最も権威のある児童書の賞のひとつ)を2度受賞しているアメリカの絵本作家で映画化された「ジュマンジ」「ポーラー・エクスプレス(急行「北極号」)」「ザスーラ」の作者。ちなみに大学では彫刻を学び、美術の修士号を取得している。

【作品について】
 ファンタジーの名手が贈る挑戦状と言うべきか、想像力トレーニングの教科書というべきか、明確なストーリーのない作品です。出てくるのは14枚の印象的なイラストと各絵をひも解くカギとなる短い文章。それぞれの絵から膨らむストーリーを読者に委ねる作品。正解のない「謎」を解くことを楽しみながらミステリアスでかっこいい大人を演出してください。

『アライバル』 ショーン・タン/著 河出書房新社

【著者について】
 オーストラリアの絵本作家、イラストレーター、映像作家。アニメ『ロスト・シング』でアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞し、『アライバル』でアストリッド・リンドグレーン記念文学賞、アングレーム国際コミック・フェスティバル最優秀作品賞、世界幻想文学大賞、ヒューゴー賞、ディトマー賞最優秀芸術部門などを受賞し、世界的に高い評価を受けている。

【作品について】
 この作品は、カバーのそでに紹介されている通り、究極の文字なし絵本。出稼ぎのために、家族と別れて遠い異国へ旅立つ男。古いヨーロッパの話かと思ったら、そこからファンタジーの世界へ。新しい環境への戸惑いと、つらい過去を持つもの同士のいたわりあい、不思議な生物との共生など、生きる者たちの声をショーン・タンが描き出す緻密な画面が臨場感たっぷりに語りかけてきます。絵もストーリーも語りたくなる内容であふれています。装丁もかっこいいので部屋に飾ってもおしゃれです。

『シャクルトンの大漂流』 ウィリアム・グリル/作 千葉茂樹/訳 岩波書店

【著者について】
 イギリスの絵本作家、イラストレーター。『シャクルトンの大漂流』で2015年にケイト・グリーナウェイ賞を史上最年少25歳で受賞。ハロッズの広告イラストレーション、ニューヨーク・タイムズなどでも活躍。

【作品について】
 20世紀初頭、南極探検に挑んだ冒険家アーネスト・シャクルトンの実話をもとにした伝記絵本。作品を通して男たちが困難と立ち向かう様が克明に描かれている。絵は色鉛筆でシンプルに描かれているが、小さい絵と見開きの画面を効果的に使って南極の広大さと隊員たちの様子をリアルに伝えています。この作品、何よりしびれたのは最後のシャクルトンの言葉「未知の世界へ乗りだす冒険を求める心は、人間の本能なのだと信じている。たったひとつの真の失敗とは、そもそも冒険をしようとしないことだ」。これを座右の銘にしている人は絶対にかっこいい大人ですよね。ちなみにカバーをはずした装丁が秀逸です。

『The Doubtful Guest』 by Edward Gorey
邦題『うろんな客』柴田元幸/訳 河出書房新社

【著者について】
 世界的に熱狂的なファンを持つアメリカの絵本作家。かっこいい大人の絵本作家の最高峰といっても過言ではないでしょう。『うろんな客』『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『華々しい鼻血』など名作は多数。毛皮のコートにタートルネックとスニーカーという独特の風貌で、6匹の猫とと暮らし、愛読書は『源氏物語』、バレエの大ファンでした。知れば知るほど興味深い人物です。ゴーリーをかじればかっこいいをほぼ8割手に入れたようなものかも。それぐらい影響力と知名度がある作家です。

【作品について】
 最後はあえて洋書での紹介です。理由は知的な感じがするからだけですが。柴田元幸さんの訳がすばらしいので日本語版とあわせて読むのがおすすめです。この作品は、ある日、あるお屋敷に奇妙な生物がやって来て、そのまま17年以上も住み着いて出ていく気配もないという変なお話。訳のわからない行動をする奇妙な生物の生態を描きながらストーリーが完結を迎えます。「奇妙な生物=子どもとの比喩的解釈もありますが、これは一つの例に過ぎない」と訳者の柴田さんも解説しています。後輩社員や結婚相手などいろんなものになぞらえてみるのも面白いですね。

 ちょっと、男性向けの絵本チョイスなってしまいましたが、どの作品も女性でも楽しんでいただけるので是非ご覧になってみてください。

 ここから2月2日発売のMOE3月号の紹介です。今回、表紙と巻頭で大特集するのは馬場のぼる先生が描いた名作「11ぴきのねこ」です。

 1967年~1996年の29年という長きにわたり発表された「11ぴきのねこ」シリーズ。大きな魚の骨とおなかパンパンのねこたち、あほうどりとおいしそうなコロッケを覚えていますか? なつかしいと思った方はぜひ手にとってみてください。この作品は間違いなくすごい名作です。 馬場先生とともに11ぴきのねこを生み出したこぐま社の佐藤英和さんは、この絵本には人生で出会う希望、挫折、裏切り、友情、いろんなものが全部あると語っていますが、まさにその通りです!馬場のぼるの貴重なスケッチや人気作家(コンドウアキ、シゲタサヤカ、ヒグチユウコ、三浦太郎、やぎたみこ、山田美津子 敬称略)が描きおろした11ぴきのねこも必見です。ぜひご覧ください!

 今回もMOEが誇るスペシャルなふろく!
「11ぴきのねこのクリアファイル」(A4変型サイズ)
シリーズ1作目『11ぴきのねこ』のイラストを使用してちょっぴり大人テイストなクリアファイルができました! 完全MOEオリジナルデザインです。買い逃し注意!!

 その他にも、読者に大人気の「なかしましほ 本とおやつのレシピ」は今回で最終回。今回のテーマは赤毛のアン。BOOK in BOOK16Pでお届けします。その他、ルドルフ2世魔法の絵画コレクションや人気デザイナーのアンナ・ボンドからかこさとしの新作絵本まで盛りだくさん。もちろんヒグチユウコ連載「ほんやのねこ」も! などなど今回もおすすめがいっぱいです。

『月刊MOE』最新号は2月2日(金)発売!

門野隆(かどのたかし)編集長
1974年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後の1999年に株式会社白泉社入社。青年漫画誌『ヤングアニマル』にて15年、『コンテンツビジネス部』にて2年を経て、2017年12月よりMOE編集部所属および編集長に。MOE編集部に来てはじめて子どものころ意外とたくさんの絵本を読んできたことに気づく。→『MOE』公式サイトはこちら

▶次回の門野編集長のコラムは、3月初旬更新予定です!

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