「MOEの展覧会はなぜすごいのか?」『MOE』編集長の「大人が絵本を読むのって変ですか?」第8回

文芸・カルチャー

更新日:2018/5/2

 1回コラムをさぼってしまいましたが、また復帰させていただきます!

 早速ですが、いま「MOE40th Anniversary 島田ゆか 酒井駒子 ヒグチユウコ ヨシタケシンスケ なかやみわ5人展」という絵本原画展が東京・松屋銀座にて開催(~5月7日(月)まで)しています。

 雑誌『MOE』がまもなく迎える40周年を記念して行われている展覧会で、私の予想をはるかに超えた多くの方にご来場いただいております。ありがとうございます!

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「すごく貴重ですばらしい展覧会なのでぜひ観てもらいたい!」ということで、会期もあとわずがですが、その魅力をレポートします。

 ちなみに、松屋銀座のあとも全国を巡回しますのでご安心ください。

詳細はこちら>MOE 40th Anniversary 5人展

■現在(いま)の絵本ってこんなに面白い!

 絵本でまず思いうかべるのは『ぐりとぐら』『ノンタン』『はらぺこあおむし』などロングセラーの数々。でも、現在も新しい絵本が毎年たくさん発売されているし、秀逸な作品がいっぱいある。今回はそれを伝えたかったのです。

 そこで「現在(いま)の絵本ってどんなものがあるの?」と聞かれたとき、「こんないろんな絵本が出てるよ!」と読者に伝えることができる代表選手を『MOE』でも人気の作家の中から選ばせていただきました。絵本の多様性がわかるほどに絵の作風も表現方法もみごとにバラバラです。それぞれの部屋をつくり、作家ごとに楽しんでもらえるよう工夫してあります。「1粒で5度おいしい」内容だと思います。

■超一流の5人が集結!

 酒井駒子さん、島田ゆかさん、なかやみわさん、ヒグチユウコさん、ヨシタケシンスケさん。

 彼らはそれぞれに大きな会場で個展を開くことができるほどの人気と実力を持つ、引く手あまたの作家さんたちです。そんな5人がMOE40周年のお祝いということで快く協力してくれました。

 原画展を行うということは、展覧会の期間、作家さんの原画を預かって独占することです。『よるくま』『バムとケロ』『せかいいちのねこ』『そらまめくん』『りんごかもしれない』などの代表作も含め、それぞれ40点以上の原画を独占させてもらっています。5人の代表作を1度に見られるのは今回が最初で最後かもしれません。とても貴重な機会なのですよ。

■原画以外もおもしろい!

 作家の私物、コメント、直筆の壁面アートと原画以外のモノがお待ちしております。
そして、原画以外のモノこそ作家の人となりを垣間見せてくれます。ざっとですが、

 酒井さんは、アトリエに飾っている黒板に描いたチョーク絵を再現したものや『ロンパーちゃんとふうせん』のもとになったカフェオレボウル。

 島田さんは『ぶーちゃんとおにいちゃん』のもとになったボンゾ人形や絵本制作で島田さんが手作りしている「色見本帳」。 

 なかやさんは、デビュー作『そらまめくんのベッド』の試作絵本やペットのモルモットの写真。

 ヒグチさんは圧巻のコメント付き壁面アート(開催の前日に会場で執筆してもらいました)。

 ヨシタケさんは、いつも持ち歩いている創作手帳と自身の立体作品や大事にしている宝物(人形や書籍など)。
など、こちらもぜひ注目してみてください!

■展覧会グッズコーナーにも注目

 原画展に向けて、各作家さんたちのオリジナルグッズを作らせていただきました。Tシャツ、トートバッグ、ポストカードセット、スクエア缶、ジグソーパズル、ピンバッジ、缶バッジなどなどかわいい商品がいっぱいです。ポストカードセットには各作家の『MOE』での特集号を再編集したミニチュア版のMOE(約105ミリ×81ミリ)が入っています。こちら読めるか読めないかギリギリぐらいですがおすすめです!

 最後に出展作家をご紹介します。

■酒井駒子さん

 酒井駒子さんは読者のみならず絵本作家さんたちの中でも多くのファンを持つ作家です。受賞歴も華々しく、日本絵本賞、講談社出版文化賞、MOE絵本屋さん大賞を受賞しているほか、海外でもブラティスラバ世界絵本原画展で金牌、フランスのPITCHOU(ピチュー)賞、オランダの銀の石筆賞などを受賞しています。さらに、ニューヨーク・タイムズの「2009年の子供の絵本最良の10冊」にも選ばれています。

 技術は言うまでもないのですが、とくに注目してほしいのは子どもの絵。幼くはかなく繊細な表現に心をつかまれます。

 今回の展示作品は『よるくま』(偕成社)『よるくま クリスマスのまえのよる』(白泉社)『ロンパーちゃんとふうせん』(白泉社)『BとIとRとD』(白泉社)。

■島田ゆかさん

「バムとケロ」シリーズなどわくわくする楽しい作品で大人気の島田ゆかさん。原画1点1点の少しの妥協もない完成度の高さをぜひ実感してください。緻密に考えられた画面と色彩は本当にすごいとしか言いようがありません。絵本は、画面のいたるところに登場する小さいキャラクターたちにも物語をつくり、メインストーリーとともに進んでいきます。そんなこだわりにもぜひ注目しながらご覧ください。『MOE』に掲載された単行本になっていないレアな作品『ぼんちゃんとおとうと』も展示しております。

 今回の展示作品は『バムとケロのさむいあさ』(文溪堂)『バムとケロのおかいもの』(文溪堂)『バムとケロのもりのこや』(文溪堂)『かばんうりのガラゴ』(文溪堂)『うちにかえったガラゴ』(文溪堂)『ぶーちゃんとおにいちゃん』(白泉社)。

■なかやみわさん

 かわいいキャラクターが活躍する絵本が大人気のなかやみわさん。たくさんの親子に愛され、どの絵本シリーズもベストセラーに。累計部数はなんと800万部以上! 子どもならだれでも知っている絵本を次々と生み出しています。印刷では表現できない原画の色の鮮やかさをぜひ見てください。作品によって画材を使い分けているのもポイントなので、ぜひ注目してください。子どもたちがキャラクターに親しみやすいように考えながら描かれています。

 今回の展示作品は『そらまめくんのベッド』(福音館書店)『そらまめくんとめだかのこ』(福音館書店)『くろくんとふしぎなともだち』(童心社)『くろくんとちいさいしろくん』(童心社)『やさいのがっこう とまとちゃんのたびだち』(白泉社)「やさいのがっこう ピーマンくんゆめをみる』(白泉社)『やさいのがっこう とうもろこしちゃんのながいかみ』(白泉社)。

ヒグチユウコさん

 いま大人の女性にすごい人気のヒグチユウコさん。ヒグチさんは、ご自分のブランドグッズを展開している他に、資生堂やGUCCIなど有名ブランドともコラボしており、絵本作家の枠にとどまらない活躍をしている画家です。今回の展覧会でもヒグチさんを目当てにご来場されている大人の女性がたくさんいらっしゃいます。描かれている絵の細密さは圧巻ですが、おしゃれな服を着た猫たちが人間のように泣いたり怒ったり、感情表現の豊かさもぜひ注目してもらいたいです。ヒグチさんのユニークさが伝わる壁面アートも見逃せません。

 今回の展示作品は『せかいいちのねこ』(白泉社)『いらないねこ』(白泉社)『ギュスターヴくん』(白泉社)の原画と新連載の『ほんやのねこ』、『MOE』での描きおろし作品を展示。

ヨシタケシンスケさん

 今回の5人展で唯一の「男子」、ヨシタケシンスケさん。現在を代表する最も有名な絵本作家ではないでしょうか。ヨシタケさんは広告美術の仕事やイラストレーターとして活動していた40歳の頃、2013年に初めての絵本『りんごかもしれない』を発表し、MOE絵本屋さん大賞、産経児童出版文化賞 美術賞などさまざまな賞を受賞、一気に注目を集めました。その後もヒット作を次々と発表。大人を巻き込んだ絵本ブームを起こした張本人です。原画はすべてコピー用紙にミリペンで描かれています。色付けは本のデザイナーさんが行っているのでモノクロです。その原画の小ささにまず驚いてください。さらに時間がかかりますが、考え抜かれたコメントやセリフも見逃せません。

 今回の展示作品は『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)『りゆうがあります』(PHP研究所)『もうぬげない』(ブロンズ新社)『なつみはなんにでもなれる』(PHP研究所)『つまんない つまんない』(白泉社)と『MOE』に掲載された描きおろし作品。

 長くなりましたが、充実の展覧会なので機会がありましたらぜひご覧ください!

 

 では、ここから5月2日発売の『MOE』6月号を紹介させてください。今回、表紙と巻頭で大特集するのは現在を代表する人気作家tupera tuperaさんです。ミリオンセラーの『かおノート』や『しろくまのパンツ』『パンダ銭湯』などで有名なtupera tuperaさんはご夫婦で活動している創作ユニットです。枠にとらわれない自由な発想で絵本界に新しい旋風を巻き起こしています。先日発表された第23回日本絵本賞では『わくせいキャベジ動物図鑑』にて大賞を受賞しました。さらにtupera tuperaさんは、この夏公開される細田守監督の最新アニメーション映画『未来のミライ』にも参加。スペシャル対談でその実態をどこよりも早く『MOE』で公開! 見どころいっぱいの特集です。ぜひご覧ください!

 今回のふろくは描きおろしの絵本です。室井滋×長谷川義史コンビの最新作!

「すきま地蔵」 文/室井滋 絵/長谷川義史

「お地蔵さんとか昔からあった桜の木とか、私は命、祈りの象徴のような気がして。そういう見えないものが、見えているものより大事なのかなと。そんな思いを込めてこの絵本をつくりました。」(室井滋)あたたかい気持ちにさせてくれる楽しい絵本ができました。

 その他にも、現在開催中のくまのパディントン展情報、国際アンデルセン賞作家賞を受賞された角野栄子さんの最新レポート。イラストがかわいいお菓子のパッケージ特集などなど。大人気連載ヒグチユウコ「ほんやのねこ」では久しぶりにニャンコが登場します! 今回もMOEでしか読めない情報がいっぱいです。

『月刊MOE』最新号、好評発売中!

門野隆(かどのたかし)編集長
1974年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後の1999年に株式会社白泉社入社。青年漫画誌『ヤングアニマル』にて15年、『コンテンツビジネス部』にて2年を経て、2017年12月よりMOE編集部所属および編集長に。MOE編集部に来てはじめて子どものころ意外とたくさんの絵本を読んできたことに気づく。→『MOE』公式サイトはこちら

〈ヨシタケシンスケ×糸井重里〉『りんごかもしれない』は、りんごを一度も見ずに描いていた! 「絵本の面白さ」って?

▶次回の門野編集長のコラムは、6月初旬更新予定です!

「絵本から国民的人気キャラクターを!」
「大人が絵本を読むのって変ですか?」
「2017年絵本屋さんにもっとも評価が高かった絵本は?」
「絵本作家ってもうかるの?」
「有名な絵本って何があるの??」
「すごいぞヨシタケシンスケ!」
「大人からの絵本デビュー者募集!」