昭和歌謡、超高層ビル…!? 昭和の東京を楽しむおすすめ3テーマ『散歩の達人』編集長コラム

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公開日:2019/6/27

『散歩の達人』7月号(交通新聞社)

 こんにちは。月刊『散歩の達人』編集長の土屋です。

 7月号の大特集は「昭和の東京を歩く」。昭和時代は震災復興、戦災復興、オリンピックに向けた都市整備により、今の東京を形づくった時代。決して物質的に豊かではなかった「昭和の東京」が華やかで魅力的に見えるのは、当時の空気が今よりも純粋でエネルギッシュだったからかもしれません。今回の特集では、昭和時代から残る建築や商店などを訪ねたり、当時の写真や地図と現在を比較しながら歴史的な背景や変化を楽しむ、ひと味変わった東京さんぽを提案する大特集になります。

 とはいえ、「歴史」というとちょっと難しくて固いイメージがあるかもしれません。そんな皆さんに、昭和の東京を魅力をわかりやすく3つのテーマでご案内しましょう。

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 まず1つ目は「古い地図を見ながら歩く」こと。とくに戦前の地図だと今とはかなり違うところもあります。そんな違いを調べながら歩くのは楽しいものです。

 例えば、浅草。戦前の地図を見ると、浅草寺の西側に「大池(ひょうたん池)」があるのがわかります。この池は明治16年(1883)に、浅草寺の境内と所有地を「浅草公園地」として整備する際にできた池でした。池越しに明治23年(1890)に建てられた凌雲閣(通称:十二階。関東大震災で崩壊)が見える風景は浅草を象徴する風景だったと聞きます。夏には納涼船も浮かんでいたという、浅草に四季の彩りを添えていた存在でしたが、昭和26年(1951)に埋め立てられ、現在はウインズ浅草(場外馬券売り場)に。今や全く当時の面影は感じられませんが、近くの凌雲閣跡にはビルが立っており、壁面に凌雲閣の絵図が描かれていて、往時を偲ばせます。昔の地図を見ながら歩くと、きっと想像力を掻き立てられるでしょう。本誌では「タイムスリップ東京さんぽ――銀座・浅草・新宿」でたっぷり紹介しています。

今でも昭和情緒が漂う、浅草・初音小路。小路を覆う藤は昭和30年代に植えられたという。
昭和64年(1989)正月の浅草六区。まだ映画館も健在で、興行街の面影を残していた。

 2つ目は「昭和の超高層ビル」。昭和時代に建てられたビルや建築物はたくさんあって、どれも同じに見えてしまうかもしれません。それなら、昭和後期に建てられた超高層ビルというのはいかがでしょう。じつはそもそも日本には大正9年(1920)に発令された「百尺規制」という法律があり、百尺(31m=9階相当)の高さの建物しか建てられなかったという歴史があります。それが撤廃されたのは昭和38年(1963)、東京オリンピックを控えた建設ラッシュ期。その後、超高層ビルが次々と建てられました。じつは超高層ビルが建てられるようになったのは50年ほど前でそれほど昔ではないのです。誌面では、昭和40~50年代に建てられ、高さを競い合った超高層ビル3棟を紹介していますが、それぞれビル内にも入れますし、ビル内に入るとより昭和らしさも感じられるはずです。とくに世界貿易センタービル(高さ152m)のエレベーターのボタンは必見です。

世界貿易センタービル。茶褐色の外観が特徴。展望台からは東京湾が一望できる。
新宿三井ビルディング。地上52階、高さ210m。黒い外観と側面の耐震補強のXが特徴。

 最後の3つ目は「昭和歌謡」。昨年くらいから、当時を懐かしく思う人たちだけでなく、若者や外国人を巻き込んで昭和歌謡がじわじわとブームになっています。昭和歌謡が聞ける喫茶店やバーも増えて、店内で合唱する様子をテレビで見た方も多いのではないでしょうか。本誌でも昭和歌謡の対談を紹介していますが、昭和歌謡の特徴のひとつが地名の入ったタイトルが多いこと。函館とか長崎など、日本各地の地名ももちろんありますが、東京の地名の入った曲名もかなりの数。「東京ブギウギ」など「東京」自体が入っていることも多いですが、「銀座」「六本木」「新宿」など東京の地名も結構あるのです。取材で教えてもらった、水谷豊「表参道軟派ストリート」は、表参道がタイトルに入っているというのもレアですが、聞いてみると気になるのが歌よりもセリフの多さ。セリフが多いのも昭和歌謡の特徴なのだそうです。ちょっとマニアックですが、ぜひ聴いてほしい一枚です。

DJ吉沢dynamite.jpさんと『つむじ風』の田近さんの昭和歌謡対談では、取材スタッフ全員で盛り上がった。
今も昭和歌謡が聞こえてきそうな、東武練馬・北町楽天地。「東京狭隘路地酒場巡り」で紹介している。

 さて、特集では、ほかにも昭和の東京を楽しめる企画がずらり。イラストで紹介する「令和の考現学的東京観察」や、「山手線の駅、今昔ものがたり」「看板建築が残る街を歩く」「お好み焼き東京発祥ものがたり」「東京狭隘路地酒場巡り」などなど盛りだくさんです。

 懐かしく、でも新鮮な気分で、「昭和の東京さんぽ」を楽しんでみませんか? そしてそんな情報が満載の本誌を、どうぞ一度、手に取ってみてください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

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