東京4つの街で!『散歩の達人』流「落語の楽しみ方」、教えます!

エンタメ

更新日:2019/8/22

『散歩の達人』9月号(交通新聞社)

 こんにちは。月刊『散歩の達人』編集長の土屋です。

 9月号の大特集は「もっと知りたい東京落語」。テレビドラマや漫画などをきっかけに、落語ブームがたびたび起きた平成の時代。令和のはじめの落語界を見渡せば、個性豊かなベテラン勢が多方面で活躍する一方、勢いある若手の人気も沸騰中、まさに百花繚乱です。

 落語はもともと、江戸や上方の街場で発展した都市ならではの芸能。独創的な新作落語も増えていますが、庶民のユーモア、生活や人生の機微、街の文化を描く基本は変わりません。だからこそ落語は東京の街に長く息づいてきたはず。

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 今回の特集では、落語家と街の関係、落語の舞台歩きをはじめ、落語にまつわる東京を大ボリュームでご案内。もっと落語を知りたくなる内容満載でお届けします。

 とはいえ、「落語」って古典芸能だし、難しいのでは? という方や、単なるイメージで敬遠している方にこそ、本誌を読んでほしい! なんといっても東京ほど落語が気軽に見られる街はありません。定席(ほぼ毎日興行が打たれる寄席)が上野、新宿、浅草、池袋と4つもあり、そのほか、神保町の「らくごカフェ」など、気軽に行ける落語スポットもたくさん。

 また、落語の「噺」自体も江戸の街を舞台にしているものが多く、その舞台を歩くこともできます。さらにはかつての名人ゆかりの神社に訪れてみたり、名人が愛した味を改めて味わってみたりなど、東京ならではの落語散歩ができるのです。

 本誌でも上記のような情報をたっぷり紹介していますが、まずは、私の寄席の楽しみ方をご紹介しましょう。基本的に寄席は昼の部、夜の部ともに3~4時間くらいですが、好きな時に入っていいし、好きな時に帰っていい(ただし、出演者の交代時に出入りするのがマナー)。だから、お目当てや気になる演者さんの登場に合わせて行って、最後まで観覧します。

 そしてやっぱり落語を聞くというちょっとした非日常体験に合わせて、その街らしくて、ちょっと歴史を感じる店に、寄席の前後に寄って行きたくなります(むしろそれが楽しみでもあります)。散歩好きの読者の皆さんならわかってくださるはず。

 例えば、自宅が近いから『新宿末廣亭』に行くことが多いのですが、その前に時間があるときは裏手にある『楽屋』でひと休み。この喫茶店は出番前の落語家さんも訪れる、知る人ぞ知るスポットで、本当に末廣亭の楽屋にいるような気分で過ごせます。そして寄席の後は、新宿三丁目の酒場で飲んで帰るのがいつものコース。

 上野鈴本演芸場の場合は、始まる前に『みつばち』か『みはし』で甘味を食べて、帰りにアメ横の安い酒場で飲んで帰るか、『井泉』でとんかつ。浅草演芸ホールの場合は、芸人さんもよく行く『アロマ』で喫茶し、帰りは『駒形どぜう』でどじょう鍋。

 池袋演芸場の場合は、演芸場上にある『カフェ・ド・巴里』でお茶して、帰りは『大都会』で一杯。それぞれ、ただその街に行った時に使うよりも、その店の魅力を味わえる気がするし、時には落語家さんに会えて落語気分が増すこともあります。

新宿末廣亭の昼席。この日の主席は桂文治さん。その高座の様子は誌面でぜひ。
浅草演芸ホール帰りに寄りたくなる『駒形どぜう』。並木藪でそばもいいですね。

 ところで、今回の取材で印象的だったのが、昭和の二大名人、五代目古今亭志ん生と八代目桂文楽ゆかりの地を訪ねたこと。黒門町(上野)の師匠と呼ばれた、文楽さんが好きだったという『うさぎや』の石衣は、この店ではどら焼きしか知らなかった私には衝撃のおいしさ。

 また、おりがみ会館のあった場所(かつての小林染紙店)に昔、文楽さんが勤めていたこともびっくりしました。あの落語の名人がかつては紙染め職人だったとは。

『うさぎや』の石衣。この日は4種類ありました。すっきりした甘さが癖になる。(撮影=編集部・佐藤七海)
「おりがみ会館」の場所には、文楽さんが働いていた「小林染紙店」があったという。

 志ん生さんゆかりの谷中・千駄木では、志ん生さん宅にお酒を届けていた『やべ酒店』のご主人を取材。志ん生・馬生父子が大好きだったという菊正宗の特選を手に、貴重な思い出話を聞かせてくれました。

 そして、志ん生さんゆかりの店が並ぶ谷中銀座を通って、志ん生さんが稽古をしていたという諏方神社の境内に行くと、そこは京浜東北線などの線路が一望できる地でした。それぞれ2人の落語を聞いてから歩くとより感慨深い散歩ができるはずです。

諏方神社境内。写真右の奥からJR線が走っている様子を見下ろせる。

 さて、大特集では、ほかにも東京落語にまつわる企画がずらり。イラストで紹介する「まずは寄席に行ってみよう」は、落語初心者にこそ読んでほしい、イチオシページですし、昨年ドラマになってまたファンが増えた『昭和元禄落語心中』作者・雲田はるこさんインタビューも必見。そのほか、柳家小三治さんや森山未來さんのインタビューもあり、盛りだくさんです。

 そして第2特集「食で楽しむラグビーワールドカップ」では、9月20日から開幕するラグビーワールドカップに合わせて、気になる出場国グルメを探ってみました。

 猛暑が落ち着いてきて、きっと歩きやすくなるこれからの季節。そして9月7日には落語協会の「謝楽祭」が湯島天満宮で行われるいい機会に、ぜひ「落語」を楽しんでみませんか? そしてそんな情報が満載の本誌を、どうぞ一度、手に取ってみてください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

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