「2019年を、新語・流行語大賞の言葉で振り返る」『現代用語の基礎知識』編集長コラム

文芸・カルチャー

2020/1/14

 ダ・ヴィンチニュースをご覧の皆さま、こんにちは。『現代用語の基礎知識』編集長の大塚です。前回は「新語・流行語大賞、誕生物語。」として、「『現代用語の基礎知識』選・ユーキャン 新語・流行語大賞」について言葉の賞として生まれたきっかけをご紹介しました。2回目の今回は、2019年を振り返りながら第36回「新語・流行語大賞」のトップテンをおさらいしようと思います。今年のトレンドを占うヒントとなるかもしれませんよ。

 まずは食の話題から。ここ数年ブームの兆しをみせていたタピオカドリンク。タピオカ入りドリンクを飲む、タピオカを食べるという意味の【タピ活】がトップテンとなりました。受賞者は「たぴりすと。」の華恋さんと奈緒さんのお二人です。若い世代から人気に火がつき、年初から長きにわたってブームが続きました。数カ月ほどで「そろそろブームも終わるんじゃないかなぁ」なんて思っていましたが、そんなことはない。タピオカ店が地元の商店街にもできるのを垣間見て、「ブームの継続」を強く感じました。

 4月、池袋で高齢ドライバーによる悲惨な交通事故が起きてしまいました。今年、高齢ドライバーの事故は数多く報道され、トップテンに選ばれた言葉は【免許返納】です。実際に返納する方も多かったようです。

 5月、改元で【令和】がスタート。半年以上が経ちすっかり「令和」が定着したように思います。定着というか慣れ? でしょうか。新元号発表がハロウィーンなどのお祭りのように騒がれていたことが懐かしいようです。「令和元年」と書きたいだけなんじゃないか? と思うような書類が増えたように感じませんでしたか? 領収証を発行してもらう際に平成の時代は「西暦」で書いていたんじゃないかなぁと思わずにはいられません。今年の記録としては、すでに定着した「令和」ははずせませんでした。【令和】の受賞者は、坂本八幡宮宮司の御田良知さん。おごそかな衣装でのご登壇で、場の雰囲気がピシッと引き締まりました。

 6月の言葉からは【闇営業】と【#KuToo】です。闇営業が世間を賑わすきっかけとなったのは写真週刊誌『フライデー』が報道したお笑い芸人のスクープからでした。受賞者は、FRIDAY編集部さんです。また、アクティビスト石川優実さんが発信した「#KuToo」は、2017年から性暴力被害者支援の草の根活動のスローガンとして世界的な動きとなった「#MeToo」運動からの流れで、女性にだけ職場でハイヒールやパンプスを強いる企業の服装規定をなくし、選択肢が男女同じになることを目標にした活動のことです。「靴(くつ)」と「苦痛(くつう)」をもじっています。造語としてのセンスのみならず、この活動をとおして性差別解消の訴えが広がることが誰にとっても生きやすい社会になるための一歩になるように思いますし、応援したい動きです。

 8月、【スマイリングシンデレラ/しぶこ】誕生です。受賞者はもちろん、プロゴルファーの渋野日向子さん。AIG全英女子オープンでの優勝で一躍話題になり、飾らない笑顔とともに「しぶこ」として多くの人に受け入れられました。さらなる活躍が期待されますね。

 そして、秋。今年も甚大な台風被害が各地を襲いました。「命を守る行動」を呼びかける気象庁の事前避難のアナウンスとともに、鉄道各社により【計画運休】が実施されました。受賞者は国土交通省さんです。計画運休が多くの方に納得してもらえるほど自然災害の数が増え、私たちの暮らしに影響を及ぼすことが多くなりました。これからも増えることが予想されますが、事前準備を怠らないように過ごしたいものです。

 また「消費税増税」が10月から始まり、わかりにくかった【軽減税率】や、現金を使わないキャッシュレス決済の【◯◯ペイ】というキーワードがあちこちで聞かれました。軽減税率の受賞者には、スーパー・アキダイの秋葉弘道さんが駆けつけてくださいました。また◯◯ペイにはPayPay株式会社の中山社長が受賞者として登壇してくださいました。

 満場一致、年間大賞に輝いた【ONE TEAM(ワンチーム)】。受賞者はラグビー日本代表チームさんで、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会会長の森重隆さんにご登壇いただきました。多くの「にわか」ファンも含め、アジア初の日本大会で史上初の決勝トーナメント進出を決めた日本代表チームに多くのファンが熱狂しました。そんなファンへ向けた熱いメッセージを森会長が語ってくださいました。

 ワンチーム。単純なようでいて、実に奥が深い言葉だと感じさせられました。

 最後に。忘れてはいけない今年のビッグニュースから。3月に大リーグ・マリナーズのイチロー選手が引退を表明し会見を開きました。深夜の長時間にわたる会見の中から【後悔などあろうはずがありません】という言葉がうまれました。数々の「イチロー語録」を発信したイチロー選手に、選考委員特別賞の授与を決めました。

 2019年の新語・流行語をふり返り、いかがでしたでしょうか。記憶があせてしまったもの、日常に定着したもの、様々です。「つい使いたくなる言葉、フレーズ」が広く使われる流行語になるんだなぁと感じながら、そんな言葉を日夜拾い集めて、今年もまた1年を記録していきたいと思っています。

 昨年リニューアルされた『現代用語の基礎知識2020』には、新語・流行語大賞に選ばれた言葉はもちろん、さまざまな言葉の数々で1年を振り返り、また次の時代を生きるために必要な用語解説が掲載されています。装いも価格も手に取りやすく新しく生まれ変わりました本誌、ぜひ書店で手にとっていただけたらと思います。次回コラムは、過去の新語・流行語の言葉をご紹介したいと思います。

大塚陽子
『現代用語の基礎知識』編集長
2008年版から「現代用語の基礎知識」編集部に配属。

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