ご近所さんぽを楽しむ方法、教えます!『散歩の達人』編集長コラム

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更新日:2020/5/23

『散歩の達人』6月号(交通新聞社)

 こんにちは。月刊『散歩の達人』編集長の土屋です。

 さて未曾有のウイルス禍の真っただ中、今月も私たち編集部はリモートワークをしながら、なんとか編集業務を続けております。きっと読者の皆様も「もうそろそろ外へ出たい」と思っていることでしょう。私たちももちろん同じ気持ちです。6月号は、皆さんのそんなお出かけへの思いを少しでも応援したいと思い、大特集で「ご近所さんぽを楽しむ15の方法」をお届けします。

「近所の散歩っていっても大概歩き尽くしたからなぁ」とお思いのアナタ。もしかしたら見逃しているものがあるかもしれませんよ。本特集の15テーマをあえて並べさせていただくと、「短歌」「よき文字」「無言板」「散歩本」「ねこと豆本」「珍樹」「野草」「バードウォッチング」「健康」「チェアリング」「My商店街ランチボックス」「電線」「暗渠」「旧町名」「ご近所闇」。

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 まず「無言板」「珍樹」「チェアリング」なんて、言葉も知らない方がいると思います。それもそのはず。それぞれ創始者が命名した、全く新しい発想の街歩きの提案だからです。今回はいつも見慣れている近所の景色や散歩道も、視点を変えたり、想像力をプラスすれば、もっと楽しめるということを言いたい特集なのです。まだもう少しだけ自粛が必要な時期。本特集をヒントに、日々の散歩を楽しくしてもらえたらうれしいです。今回のコラムでは、そんなご近所さんぽの中で、私が実践してみたいくつかをご紹介しましょう。

 今回のテーマの中でわかりやすいのが「バードウォッチング」と「野草」でしょう。まず一つ目は「バードウォッチング」。特集では「鳥さんぽ」と言っていますが、鳥を探して楽しむこと。だから双眼鏡でじっくり見たり、カメラで撮影することができなくても、鳥の声を聞いてどこにいるか探すだけでもいいのです。

 今回の取材で♪鳥くんに教えてもらい、シジュウカラの「ツピーツピー」やキジバトの「デーデーポッポー」など、鳴き声の特徴も教えてもらったので、そんな声が聞く方向を見やると意外に簡単に見つけることができてしまうのです。

 特に私が好きなのはオナガ。カラスの仲間だということですが、名前の通り、尾が長くて、黒と白とブルーグレーの渋い色味の鳥。見た目は美しいのですが、鳴き声は「ギューイギューイ」とお世辞にもきれいとはいえない声。でも特徴的なので、その声がするとつい目を向けてしまうようになりました。

 この野鳥、じつは関東以北の本州にしかいないそうで、意外に貴重な野鳥なのです(関西のバードウォッチャーには羨ましがられるとか)。ほかにも川に行けばコガモやコサギなどちょっと大きな野鳥も見られるはずです。

鳥の写真が撮れなかったので、ガードレールの絵で。オナガは世田谷区の鳥でもあります。

 二つ目は野草さんぽ。誌面ではハーブ王子こと山下智道さんに野草さんぽの楽しみ方を教えてもらいました。今の時期はいろんな野草が花を咲かせています。カタバミやハルジオンはそこらじゅうで見られるので、それ以外を積極的に探しましょう。

 本当はスミレ系が見たいのですが、住宅地ではなかなか見られないので、ヒマラヤ原産の丸いピンクの花がかわいいヒメツルソバとか、日本古来のハーブであるヨモギなどを探してみます。

 ヨモギは犬が入れないところで私有地でなければ、ちょっと持って帰ってお菓子作りに使うのもいいかも。野草さんぽは野草を識別するだけでなく、食べたり香りを楽しんだりできることも魅力なのです。

 本誌では、ヨモギのケーキとセイヨウタンポポのコーヒーゼリーを紹介しているので、ぜひ挑戦してみてください。

ヒマラヤ原産の野草、ヒメツルソバ。直径1㎝ほどのピンクの花がかわいい。

 さて、続いては少しだけ想像力が必要になるテーマを2つ。1つ目は「無言板」。無言板とは、楠見清さんが命名した、街角にある「文字の消えてしまった看板」のこと。それを作品として鑑賞するのです。

 雨風や紫外線の影響で塗料が落ちたり、印刷があせたりして文字が消えてしまったのでしょうが、何かの目的で立てられたはずなのに、本来の目的を果たせない無意味ともいえる存在。そんな存在に目を向けると、見慣れた街がちょっと変わって見えます。路地や裏道など無言板が残っていそうな場所をあえて歩いてみたり、いつもは見逃していた軒先や塀などに見るものも変わってくるはず。

 私としては見つけた作品を撮影して、自分なりの「タイトル」を作ることも重要だと感じました。それをすることで、無言板探しは昇華する気がするのです。

近所の商店街で見つけた無言板。タイトルは「では、スナックで一句」。

 2つ目は「珍樹」。木を眺めていると模様や形が動物や物に見えることがあるでしょう。「珍樹」とは、そんな珍しい木を探す、小山直彦さんが提唱した自然遊びのこと。探すことを「ハントする」、というのも「珍獣ハンター」みたいでいいですよね。この珍樹ハント、森や公園まで行かなくても近所の街路樹などでも探せるのです。

 小山さん曰く、街にある木の方が、剪定などで人の手が加わっているぶん、珍樹になりやすいのだとか。樹木の種類は、アオギリやマテバシイ、ユズリハ、カエデなどが珍樹を見つけやすいそうなので、ぜひチェックを。探すコツは本誌にも6つのポイントで書いていますが、何より必要なのが観察力と想像力。そして、見つけて撮影した後、こちらも「タイトル」を付けるのが大切です。

 前述の無言板もそうですが、撮影したその場ではタイトルを思い浮かべられなくても、家に帰って、コーヒーやお酒を飲みながら写真を眺めていると思いつくこともあります。そしてその時間も楽しかったりするのです。珍樹を意識するようになると、何気なく見ていた街路樹の剪定の跡も珍樹に見えるのではないかと気になってきました。

 と、4つのテーマを上げましたが、これらはすべて一緒に楽しむことができるのも魅力。今日は「珍樹」と「野草」をメインに歩こうだとか、その日の気分に合わせて歩いてみましょう。いろんな視点を交えて、いつもの散歩道の可能性を広げてみてください。

外濠通り沿いで見つけた珍樹。タイトルは「傘にかくれたタヌキ」。見つかっちゃった感あり。

 そしてもう一つの特集「ユニークキッチンカーを追え!」も必見。今やテイクアウト花盛りでさまざまな媒体でテイクアウトを特集していますが、散歩の達人では「キッチンカー」にこだわってテイクアウトを楽しむ方法を提案。エスニックから健康志向メニューまで、特徴的なテイクアウトメニューをずらり集めてみました。最後には「散歩の達人がキッチンカーをつくるなら」という座談会もイラスト付きで掲載。こちら座談会ロングバージョンを弊誌WEBメディア「さんたつ」で公開予定ですのでお楽しみに。

 もう少しだけ自粛が必要な時期ですが、ただお出かけを我慢するだけでなく、まずは3密を避け、本誌を参考に、ご近所さんぽ&キッチンカーのテイクアウトで楽しんでください。一日も早くいつも通りの散歩が楽しめるよう、私も心から祈っています。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

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