「読書は冒険だ」特集の3つの見どころをご案内!『散歩の達人』編集長コラム

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公開日:2020/10/23

散歩の達人
『散歩の達人』11月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 こないだまで暑かったのに、急に涼しくなって、秋を感じる今日この頃。散歩にはもってこいの季節ですね。秋といえば、食欲や運動など、皆さんいろいろ思い浮かぶと思いますが、今年こそは「読書の秋」とまいりましょう。コロナ禍の今、必要以上にいろんなところへ出かけたり、不特定多数の人に会ったりすることが、多少なりとも感染リスクを伴う行為であることを考えると、「読書」は、多くの人に会わずとも、いろんな考え方や知識を得たり、視野を広げられる絶好の機会となるはずです。

 今月号の大特集は「読書は冒険だ」。表紙には映画監督・俳優の塚本晋也(※)さんに登場していただきました。本特集では本にまつわるさまざまな企画で構成していますが、今回のコラムでは、特におすすめしたい特集の見どころを、3つのポイントにまとめて紹介したいと思います。

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 まず1つ目は、表紙の塚本晋也さん、女優の秋元才加さん2人による書店の冒険。いつもは街を歩く散歩の達人ですが、当企画では書店を街に見立て、本との出会いを繰り返しながら、フロアや棚をじっくり巡る冒険を著名人2人に依頼。塚本さんには『ジュンク堂書店 池袋本店』を、秋元さんには『東京堂書店 神田神保町店』を冒険してもらいました。『ジュンク堂書店 池袋本店』は地下1階地上9階、売り場面積約2000坪に約150万冊が並ぶという巨大書店。店内をただ歩くだけでもなかなかの時間を要しますが、実際に取材にもかなりの時間が……(塚本さん、ありがとうございました!)。そんな塚本さんの読書体験も交えた冒険ルポはぜひ本誌で確認を。

 一方、秋元さんに巡っていただいた『東京堂書店 神田神保町店』は明治23年(1890)創業の老舗書店。3階までの3フロアで構成され、独自の棚づくりで知られる書店ですが、なんといっても名物はレジ前の“軍艦”こと「“知”の泉コーナー」。文芸・芸術・理工・人文・社会など総勢5人の担当者が話題の新刊書をセレクトしているそうで、秋元さんにはその“軍艦”をはじめ、各フロアを巡っていただきました。秋元さん自身が思考のアップデートができたという冒険の内容については本誌をご覧ください。

40代座談会の3名を『BOOKS青いカバ』(駒込)で撮影。この後の座談会も大いに盛り上がった。(撮影=三浦孝明)

 続いて2つ目は、「読書をめぐる同世代座談会」。30代、40代、50代の3世代に分けて、著名人と書店店主の座談会を開催しました。30代は、小田原のどかさん(彫刻家・評論家)、パンスさん(テキストユニットTVOD)、コメカ/下田裕之さん(テキストユニットTVOD/『早春書店』店主)の3名。

 40代は、サンキュータツオさん(日本語学者・芸人)、牟田都子さん(校正者)、小国貴司さん(『BOOKS青いカバ』店主)の3名。50代は、荻原魚雷さん(文筆家)、ヤマダトモコさん(マンガ研究者)、笈入建志さん(『往来堂書店』店主)の3名。そんな錚々たる面々にそろっていただき、本について熱く語っていただきました。

 この企画、編集部や取材スタッフも全員30代、40代、50代に分かれて参加。各世代それぞれの思いをより抽出しやすいように考えました。編集部では、私、土屋が40代、Webさんたつ編集長の武田憲人が50代、編集部の渡邉恵が30代の座談会に参加しています。いま気になる本の話題から同世代ならではの関心事まで、それぞれ読み応えのあるページになっています。

『死都調布』(斎藤潤一郎 著/リイド社)に登場した、多摩川住宅給水塔(国領)。つげ義春の『無能の人』でも描かれた。

 3つ目のポイントは「マンガと街」。東京の街を描いたマンガを12作品選んで、印象的なコマとそのコマのモデルとなったと思われる風景を編集部員・スタッフが撮影してきました。時間も早朝や深夜など作品の流れに合わせて撮影に出かけているので、作品セレクトとともに、小さいですが写真もぜひご覧ください。私も2009年8月号のマンガ特集でコマと同じ風景を撮影に出かける取材をしましたが、その時以上にコマに近い風景を探してきています。

 また、マンガがらみでは、LINEマンガの『ぐるぐるてくてく』とコラボして、作品に出てきた場所を作者の帯屋ミドリ先生にインタビューしながら、私、土屋が巡っています。今回は雑司が谷近辺の数スポットだけの散策でしたが、それぞれの場所はコマのカットそのもので、風景の再現性と描き込みの細かさは本当に見事。ぜひ本誌誌面とマンガを見比べてみてください。

LINEマンガ『ぐるぐるてくてく』1巻4話目のトビラにも登場した富士見坂と日無坂の三差路。

 さて、大特集「読書は冒険だ」にはほかにも様々な企画がずらり。散歩の達人ならではの本の街案内では、今までも下北沢、西荻窪、清澄白河などいろんな街を紹介してきましたが、今回はまず常に注目の神保町からはじめ、気になる新たな“本の街”として「小石川・白山エリア」「本所・向島エリア」を紹介。

 また、実在の街が舞台になっている作品について読書人に聞いた「街にゆかりの本が知りたい」。そして、このコロナ禍で本屋さんが何を考えてきたのかを探る「思考する街の本屋」。さらに藤井誠二さん、河合香織さんというノンフィクション作家2人による「熱きノンフィクションの世界」などなど盛りだくさんにお届けします。

 また、第2特集は、「東京で日本ワインを楽しむ方法」。近年ますます注目を集めている日本ワインについて、改めてその定義や歴史、選び方などを識者にインタビューしたほか、東京で日本ワインをおいしく飲める店を紹介。さらに都心でワインを醸造するマイクロワイナリーにも注目してみました。詳しくは誌面をご覧ください。

醸造タンクを眺めながらワインを飲めるバルを併設した『渋谷ワイナリー東京』は、今年8月にオープンしたマイクロワイナリー。

 気持ちのいい季節が到来し、いろんなキャンペーンが行われ、人の行き来が活発になってきました。でもまだウイルスが去ったわけではありません。今月も本誌を参考にしていただき、3密に気を付けつつ、街歩きを、そして書店巡りを楽しんでください。

(※)塚本晋也さんの「塚」の正式表記は旧字体です

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

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