むかし街へ、森へ。あえての「ひとりさんぽ」を楽しもう! 最新号は“日本一ひとりが似合う男”ヒロシが表紙の『散歩の達人』編集長コラム

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更新日:2021/3/23

散歩の達人
『散歩の達人』4月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 東京は例年にも増して早い桜の開花を迎えました。もうすっかり春ですね。

今回、散歩の達人では、初めてそしてあえての「ひとりさんぽ」大特集。舞台は東京のみならず、普段より少し離れたあちこち。いつもとは違う場所をひとりで歩くからこそ、冒険心や好奇心が増すはずです。ひとりなら密も避けられ、誰かの意見に合わせたり、同行者と予定を調整する必要もありません。手段もコースも自由自在。本特集ではそのヒントになればと、日帰りで十分に楽しめる東京近郊の散歩を、「温泉」「湖」「森」「むかし街」「歴史」「鉄道」「道」と7つのテーマに分けてご案内。

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 表紙は、日本で最もひとりが似合う男、ヒロシさん! 巻頭インタビューでは、ヒロシさんのご近所さんぽから今までの散歩について、そしてBS朝日で放送中の人気番組『迷宮グルメ 異郷の駅前食堂』でのひとりさんぽエピソードなどを、たっぷり語ってもらいました。ぜひ本誌をご覧くださいませ。

 さて、今回のコラムでは、ひとりさんぽ特集で紹介できなかったおすすめの街をご紹介。「ひとりさんぽ」特集の7つのテーマの中で、個人的に最も惹かれるのが「むかし街」。どこか懐かしい風景の中を歩いているだけで楽しいし、いろいろなお店やスポットが点在して賑わいのある様子は、ひとりだからこそ好奇心の赴くまま楽しめるはずです。

 東京近郊でも、誌面で紹介している桐生、三崎をはじめ、川越、佐原、秩父などいろいろな街がありますが、昨年実際に行ってみてとくに印象に残っているのが「栃木市」。栃木は日光例幣使街道の宿場町として、そして巴波川の舟運を利用した商業の街として江戸時代から栄えてきた街。蔵造りの建物や洋風建築も多く、重要伝統的建造物群保存地区もあり、見どころはたくさん。巴波川沿いはとくに歩いていて楽しく、川には遊覧船も運航され、川沿いにはむかし街らしい和菓子屋や喫茶店のほかに、地元の人に日常的に使われている昭和感も漂う八百屋さんや魚屋さん、さらにはなぜか手作り雑貨を扱う洋品店などもあり、ついいろいろ立ち寄りたくなってしまいます。

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巴波川沿いの「塚田歴史伝説館」の外観を撮影。外観がフォトジェニックで人気だが、館内も見ごたえあり。

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巴波川沿いの洋品店では、紙でできた手作り雑貨を販売していた。

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左右2つの石蔵が印象的な「横山郷土館」。庭にある洋館も見学できる。

 その中で実際に寄ってみたのが、たばこの卸売商を営んでいた大正時代の建物を利用したカフェが「Parlour Tochigi」。蔵の街大通りに面した入り口から奥に細長く続く造りで、手前がカフェとなっています。店内の雰囲気もかつての建物の造りをうまく生かしていて、懐かしい雰囲気ながら、洗練されていて、居心地よし。名物のプリンも濃厚でカラメルの苦みもほどよく、深煎りのコーヒーとよく合います。

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蔵の街大通り沿いの「Parlour Tochigi」と「五十畑荒物店」。どちらも素晴らしい建築。

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「Parlour Tochigi」の入り口からカフェを望む。天井が高くて気持ちがいい。

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「Parlour Tochigi」のプリン。ほかにも食事メニューや焙じ茶、焼き菓子もある。

 また、撮影スポットとしても人気の「塚田歴史伝説館」は、館内も必見。案内してくれるおばあちゃんロボットやそれを聞いているおじさんロボットもとってもリアルで、私も訪れた時、つい声を出してしまったほど。また、人形ロボットによる「蔵芝居 うずま川悲話」も見ごたえありです。重伝建地区のほうも雑貨屋さん「ツクモマメ」や食事も楽しめる「カフェバザール」もあり、ゆっくり1日過ごせる街です。私はさらに電車で宇都宮に行って、餃子を食べて(おみやげにも買って)帰りました。ひとりでもたっぷり楽しめるはずです。

 また、7つのテーマの中でもう一つ、新緑の季節だからこそ「ひとりで森さんぽ」というのもいいものです。今回掲載した湘南平に同行取材したのですが、大磯駅から3時間ほどで行って帰ってこられるちょうどよい距離感にある森。途中は旧東海道の松並木や大磯の豪邸を眺めながら歩ける、思った以上に見どころの多いコース。

 そしてなにより20~30分ほど丘を登った後の長い森の尾根歩きが楽しいのです。途中には休憩にぴったりのテーブルなども点在しており、湘南平に行くまでも十分に楽しめます。そして湘南平に着けば、360度の大展望! 南は相模湾、北は丹沢山地や富士山がパノラマで望めるのです。私はとくに丹沢の山々がいちいちくっきり眺められて大満足でした。

 そんな景色を眺めながら食事やお茶ができるのが、「湘南平展望レストランFlat」。神奈川県の地物を使ったメニューが魅力的で、三崎のマグロを使ったマグロカツカレーや、地アジのフライバーガーも絶品でした。丘を下りた後も見どころがたくさん。旧島崎藤村邸やちょっと歩けば、旧吉田茂邸のある大磯城山公園にも行けます。ぜひ、春の一日、歩いてみてはいかがでしょうか?

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JR大磯駅から高来神社へ向かう途中にあった旧東海道の松並木。

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湘南平へは森の中を歩く。アップダウンもほとんどなく歩きやすい。取材時には野鳥のレンジャクを見に来たハイカーが多かった。

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湘南平から相模湾を望む。高麗山公園には取材時には梅が満開だった。

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湘南平から北側の丹沢山地を望む。右が大山左には表丹沢の山々がくっきり。

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湘南平展望レストランFlatにてまぐろカツカレー。カレーはほどよい辛さ、マグロカツのジューシーさもしっかり感じられ、ごはんが進む。

 さて、本誌の大特集「東京近郊ひとりさんぽ」には、そんな散歩ゴコロをくすぐる企画が盛りだくさん。「森」では湘南平のほかに「奥武蔵の秘境・ウノタワへ」。「温泉」では「熱海で湯めぐり&路地探訪」。「湖」では「霞ケ浦一周! 自転車さんぽ」。「むかし街」では「桐生レトロさんぽ」など。「鉄道」では「小湊鐵道→久留里線 乗り継ぎさんぽ」など。「道」では北千住から草加までの「おくのほそ道さんぽ」など。「歴史」では今注目の渋沢栄一ゆかりの深谷や王子などをご案内。ほかにもさまざまなコラムやエッセイで「ひとりさんぽ」のヒントをたっぷりお届けしています。

 ようやく緊急事態宣言も解除され、おでかけムードが盛り上がってくる季節です。でも、ウイルスは去ったわけではありません。今月も密を避けつつ、本誌を参考にして、できる範囲で散歩を楽しんでください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

『散歩の達人』最新号は3月19日(金)発売!