5年ぶりの深川特集の魅力は? そして、東京で台湾旅行気分を味わうには?『散歩の達人』編集長コラム

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更新日:2021/6/25

散歩の達人
『散歩の達人』7月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 ようやく緊急事態宣言が解除され、少し鬱屈した気分から解放された気がします。ただこうムシムシした気候が続くと、少しでも涼しげな水辺の街の散歩が恋しいですよね。そんなときこそ「深川」。今月号の散歩の達人では、東京の中でも一番水の都にふさわしい「深川・清澄白河・門前仲町・森下・木場」を大特集しています。

 深川は2021年の今も進化中。由緒ある寺社が息づく一方、面白い個人店がどんどん増えているのです。近年ではロースタリーカフェで一躍話題になりましたが、カフェは今も進化中。多国籍きわまりないグルメ店、独自色を押し出したラーメン店も増え、さらにはビールやワインまで醸造し始め、「自由」が街にあふれています。本誌では、さまざまな人が暮らし自由に楽しむ、古くて新しい粋な下町をたっぷりと紹介しています。

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 さて、今回のコラムでは、7月号「深川特集」の読んでほしいポイントと、第2特集「東京台湾散歩」の魅力をお伝えしたいと思います。

 今回の特集では2人の著名人のインタビューも掲載。まずは表紙を飾っていただいている寺島進さん。生まれも育ちも深川の寺島さんに清澄公園界隈を案内してもらいました。清澄庭園に忍び込んだ話や高校時代の話など、やんちゃな深川時代を語る様々なエピソードは、寺島さんの人柄と相まって、とっても味わい深いです。

 もうひとりは、深川を舞台に様々な時代小説を発表している作家、山本一力さん。一力さんには、門前仲町近辺を案内していただきながら、「散歩」の楽しみについて語っていただきました。一力さんの話は、深川案内になっているのですが、じつは特定の街に限らず、いろんな街でも応用できる散歩のコツが詰まっています。遠出をせずに身近な街を楽しむためにも、ぜひ本誌掲載のインタビューをじっくりお楽しみください。

 本特集では、ほかにもさまざまな視点で深川を紹介していますが、私が特におすすめの企画を2つご紹介。

 まずひとつは、深川で生まれ育った写真家・大西みつぐさんによる「私の1960s深川記憶地図」。50年前の記憶を、写真と文章、そして手描きの地図でつづっていただきました。とくに手描き地図が素晴らしい。60年代の友人宅の場所やよく行った書店やレコード店などが記されており、まるで大西さんの頭の中をのぞいているかのような心に残る地図でした。内容はぜひ本誌をご覧ください。

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閻魔像前の賽銭箱には、願い事別の投入口が。再選を入れるごとに閻魔様のありがたいお言葉が聞ける。

 もうひとつのおすすめの企画は、体験作家・中野純さんによる「エンマの休日――日帰り深川地獄見物」。発売中の7月16日(と1月16日)は地獄の釜の蓋が開く日。地獄の鬼もお休みするから、この世の者も一緒に休もうという日なのです。この日は、地獄を身近に感じられる貴重な機会で、全国さまざまな閻魔堂が開扉され、地獄絵を公開したりします。ぜひこの日は身近な閻魔堂を訪れてほしいですが、深川にある「法乗院 深川ゑんま堂」はいつでも地獄絵を公開しているから、時間があるときに思う存分堪能することができるのです。地獄絵は細部までじっくり見ていると、地獄の世界が恐ろしいということ以上に、亡者や鬼それぞれの個性が際立ってきます。本誌を読めば、地獄のテーマパーク・法乗院をこれまでとはちょっと違った視点で楽しめるはずです。

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地獄絵の中の一枚。「九相図」と呼ばれ、人が死んでから朽ち果てる経過を描いている。
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地獄絵の中の一枚。奪衣婆が亡者の衣類をはぎとって、衣領樹の上にいる鬼(懸衣翁)に渡している。

 そして、今月号では大特集だけでなく、第2特集「東京台湾散歩」もおすすめ。特集の案内人は、弊社からムックを含め3冊の台湾関連書を発行している、散達スタッフきっての台湾マニア・奥谷道草さん。東京都内で台湾旅行気分が味わえる、妄想台湾ツアー17ページです。シーン別に使用できるグルメ情報や気軽に楽しめるテイクアウト情報ももちろん便利ですが、特に秀逸なのが、「東京⇔台北鉄道駅フンイキ比較」。散歩の達人Pocket『オモシロはみだし台湾さんぽ』では、台北駅の鉄道路線図を元に、東京のどの街と似ているかの比較をしていますが、今回は東京の鉄道路線図を元に台北のどの街に似ているかを比較。東京ドームと台北アリーナ、両国国技館と台北駅……などなど、異論は多々あるでしょうが、楽しんでいただけると幸いです。

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第2特集の案内人・奥谷さんは、写真の散歩の達人Pocket2冊と散歩の達人MOOKを手掛けた。

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現地・台湾にいる錯覚に陥る下北沢の『大浪漫商店』(編集部・吉岡撮影)。

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第2特集では自宅で再現できる台湾料理のレシピも紹介(編集部・吉岡撮影)。

 やっと緊急事態宣言が解除され、少しほっとできる日々が戻ってきました。今月も密を避けつつ、本誌を参考にして、できる範囲で散歩を楽しんでください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

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