今年も鉄道は面白い!『散歩の達人』2年ぶりの鉄道特集!「ライトライン」「サフィール踊り子」のこぼれネタ。編集長コラム

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公開日:2021/8/21

散歩の達人
『散歩の達人』 9月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 8月も下旬、朝晩は過ごしやすくなり、暑さもすこしは和らいできたでしょうか。でもまだ緊急事態宣言が続き、遠くへのおでかけは難しい時期。そこで今月号の散歩の達人は誌上で旅気分を楽しみ、また近場でも鉄道浪漫を感じられる鉄道特集をお届けします。

 2年前の特集時に比べると、コロナ禍で鉄道界の動きは穏やかですが、それでも今年ならではの心躍る鉄道ネタはいくつもあります。一方で、パレットタウンの観覧車とゆりかもめの競演や、山手線に唯一残る踏切、2階建て新幹線Maxの定期運行終了など、今年で見納めの鉄道風景もあるので、ぜひ誌面でチェックしてほしいです。

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 そんなさまざまな企画が盛りだくさんの鉄道特集。土屋としてもおすすめしたい企画ばかりなのですが、今回のコラムでは、実際に取材同行した、宇都宮「ライトライン」と「サフィール踊り子」の誌面に掲載できなかったこぼれネタを紹介したいと思います。

 まず宇都宮のライトライン。JR宇都宮駅東口から芳賀町まで14.6kmを結ぶ、2023年の開業を目指している路線です。じつは私が旅の手帖編集部時代の2004年と2007年にまだ計画段階だった宇都宮市のLRT計画を取材したことがあり、当時の担当者にもお話をうかがったのですが、その時はイメージ路線図とイメージ画像だけの資料しかなく、まだまだ先の夢ある話かなと思っていました。

 ところが今年の5月にそのLRTの新車両まで誕生したというニュースが! かなりの現実味を感じ、「これは取材しなければ」と、実際に下平出の車両基地まで行ってきました。ご対面した新車両はまるでヨーロッパの路面電車のようなカッコいい外観。黄色と黒のカラーも鮮烈です。車内に入ってみると、また感動。つり革には木目調のデザインも施されていて、シートも座り心地よし。対面のボックス席の床下には大谷石風のパネルも。洗練されたデザインで車内全体から高級感を感じました。

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宇都宮ライトラインHU300形。これが2023年開業時には17編成そろう予定。

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スタイリッシュな内観。間接照明も合わせ、長時間乗っても心地よい空間を目指している。
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座席下には大谷石風のパネルもあしらわれ、地元感を演出する。

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許可を得て運転台に座らせてもらった。自然と笑みがでてしまう。

 そしてびっくりしたのは車両だけではなく、路線全体の整備も進んでいること。一般車道との併用区間はまだガイドレールとコーンが立っているくらいですが、一番大変そうな鬼怒川を渡る鉄道専用橋がすでに完成しており、その先ではグリーンスタジアム前の停留場までできていました。グリーンスタジアムといえば、Jリーグの栃木SCの本拠地。実際にLRTができれば、宇都宮駅からバスじゃなくてLRTに乗ってサッカーを観に行き、帰りに餃子を食べて帰る、というのも楽しそうです。J2ウォッチャーの編集部員Tも喜びそうだなと感じました。宇都宮のLRT、かなり実現に近づいてきています。開業が本当に楽しみな路線です。

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鬼怒川を渡るLRT専用の鉄道橋。3年がかりで造られたという。

 続いて、7月末に取材した「サフィール踊り子」。こちらは全席グリーン車という豪華さ。いつも東京駅でこの列車に乗っていく人をうらやましく思いながら眺めていましたが、今回の特集ではこの列車にも乗車取材できることに! 残念ながらグリーン個室は予約がいっぱいでとれなかったのですが、グリーン車を予約。もう東京駅にサフィール踊り子1号が入線してくるときから心躍ります。なにしろ紺碧の色をまとった外観からカッコいい。じっくり全車両の外観を眺めながら乗車します。

 そして乗車してもまた感動。グリーン車自体は新幹線でも乗ったことはあるものの、荷棚がガラス製なのと、天窓があることで、思った以上に天井を高く感じます。実際に列車が走り出すと、途中の駅ではいつも乗る電車とは違うという非日常感を感じ、街中を抜けると車窓に流れる緑と天窓から見える空を一度に見晴らす特別感を感じます。さらに国府津駅くらいから車窓に海が見えるようになると、天窓から見える空と合わせて想像以上の開放感! これこそがサフィール踊り子に乗る醍醐味なのでしょう。

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サフィール踊り子のグリーン車。天窓と木目調の天井と床のデザインも高級感を醸し出す。

 熱海を過ぎ、13時から予約していたカフェテリアでの料理を楽しみますが、これもこの時間でよかったです。伊豆急行線内を走る列車は、車窓が海でいっぱいになるような景色も多々あり、窓向きのカウンターで食べる料理が何倍もおいしく感じます。誌面で紹介したのは伊豆産フレッシュトマトのスパゲティですが、私はサザエとリングイネのジェノベーゼを注文。バジルのさわやかな風味とリングイネのしこしこ食感にサザエの風味が加味され、もう一皿食べたくなるほど美味でした。そうこうしているうちに終点・伊豆急下田に到着。乗車時から車窓の魅力、カフェテリアでの食事の魅力など感動しっぱなしであっという間の2時間半でした。

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カフェテリアで注文していたジェノベーゼパスタを食べる(パン付き)。合わせて頼んだトマトジュースも美味。

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終点の伊豆急下田駅で特別にグリーン個室を見せてもらった(写真は6人用)。右上の棚にカフェテリアに注文した料理が運ばれてくる。

 さて、伊豆急下田からの帰りもサフィール踊り子で、というのもいいと思いますが、もう一つの楽しみ方をご提案。伊豆急行には「キンメ電車」という列車が走っています。この列車は、海側にベンチのようにシートが並んでいる車両があることが特徴。そこで海を見ながら、キンメダイのお寿司などを食べながら帰る、というプランです。サフィール踊り子のように特急運転ではなく各駅停車ですが、逆に行きに食事などでゆっくり海を見られなかった分、海を堪能しながら帰るのでおすすめなのです。

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伊豆急下田駅でサフィール踊り子と並んで停車しているキンメ電車。

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キンメ電車でキンメダイの押し寿司と伊豆の地ビールを(写真は緊急事態宣言前のものです)。

 さて、ライトラインやサフィールだけじゃなく、表紙にも登場してもらった徳永ゆうきさんと東急世田谷線の記事や、漫画家・中村明日美子さんと小田急線、渋谷&下北沢の線路跡ストリート、ドキドキ鉄道ポイントを見よ!、身近な廃線跡さんぽなどなど、楽しい企画は盛りだくさんなので、ぜひ発売中の本誌をご覧ください。

 そして今月号では、本誌にプラス「スタンプノート」の付録つき。じつは昨年7月から首都圏のJRの78駅で駅スタンプがリニューアル。遠くまで行けなくても身近なスタンプ集めに使える便利な一冊です。ぜひご利用ください。

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 ワクチン接種は進む一方、感染者数は増えており、まだまだ気を緩められない日々ですが、今月も密を避けつつ、本誌を参考にして、できる範囲で散歩を楽しんでください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

『散歩の達人』最新号は8月20日(金)発売!