「蒲田・大森」といえば、羽根付き餃子と文士村なのだ!『散歩の達人』編集長コラム

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公開日:2021/9/23

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『散歩の達人』 10月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 いよいよ秋本番。散歩にぴったりの季節になりました。今月号は、日蓮上人の命日・10月13日を中心に行われる池上本門寺の御会式に合わせて「蒲田・大森・池上」の大特集をお届けします。残念ながら今年は屋台の出店や12日の万灯練供養は中止ですが、法要は10月11~13日の3日間にわたり行われ、13日の臨滅度時法要はインターネットでライブ配信される予定。ぜひご覧くださいませ。

 今回の特集エリア「蒲田・大森・池上」は、3つの街それぞれが個性豊か。どこまでも続く商店街に町工場に銭湯と昭和の風情あふれる蒲田。行楽地として栄えた海側と、ちょっぴりハイソで文化の薫る山側という2つの顔を持つ大森。そして多くの参拝客で栄えてきた門前町・池上。この街は、表紙に登場した丸山桂里奈さんのインタビューにも出てきたように、人々がみんなフレンドリーで、誰でも受け入れてくれる度量の広い街。コロナ禍で疲れた心を癒やしに行くのにぴったりの街なのです。

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 そんな「蒲田・大森・池上」。今回のコラムでは、個人的に大好きな「羽根付き餃子」と、今回の取材でいっそう興味を深くした「馬込文士村」を紹介したいと思います。

 まずは「羽根付き餃子」。もはや蒲田きっての名物ですよね。今回の表紙に登場してくださった丸山桂里奈さんも通う、「歓迎(ホワンヨン)」は私も大好きで、とくに羽田空港で東京に来た友人などにも東京イチうまい餃子を食べに行こう、と連れて行っています。弊誌では何度も紹介してきましたが、蒲田の羽根付き餃子の名店「你好(ニイハオ)」「金春(コンパル)」「歓迎」はすべて兄弟つながり。1983年に「你好」が開店して以来、前述の店が相次いで開店し、蒲田名物にまでなったのです。見た目も特徴的な餃子はパリパリの皮を噛むとジュワッと肉汁とスープがあふれ、大きさもちょうどよく何個でもいけちゃうほど。ビールやご飯にのおともにぴったりです。

 じつは10年ほど前までは「歓迎」の本店では土曜日だけ餃子が安くなっていたので、わざわざ土曜日に合わせて出かけたものでした。羽根付き餃子の名店は「歓迎」「你好」「金春」(大森には「大連」もあり)それぞれに少しずつ味わいが違うので、ぜひ食べ比べてしてほしいです。ちなみに「歓迎」は直営店が現在8店舗あるのですが(西口店を除く)、「その8店すべてで同じ餃子が食べられます」(山崎社長)とのこと。

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「歓迎」の羽根付き餃子と台湾ラーメン。丸山桂里奈さんが最後の晩餐にしたいというコンビ(撮影:三浦孝明)

 続いては「馬込文士村」。ここは錚々たる文士が住んでいたことで知られていますが、戦前や昭和30年代くらいまでという昔の話で、いつもあまり名残がないし、歩いていて実感がないなーと思っていました。ただ今回の特集で、この馬込文士村にかつてあった古書店「山王書房」の店主・関口良雄氏が文士との交流を書いた随筆集『昔日の客』を読んだことと、良雄氏のご家族が営む「昔日の客」というカフェを取材したことで、この街の印象が全く変わってきました。

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落ち着いたたたずまいのカフェ「昔日の客」。外観からはかつての古書店をイメージできないかも(撮影:鴇田康則)

 関口良雄氏の『昔日の客』を読んでみると、伝説的な文士や近くに住んでいた方々の人柄がにじみ出ていて、良雄氏はもちろん、文士それぞれの人物像が浮かび上がってくるようでした。さらにカフェ「昔日の客」店主であり、良雄氏の長男である関口直人さんによる、まるで見てきたかのような当時の文士の話を聞いていると、『昔日の客』を読んでイメージしたものがより立体的に見えてくる、そんな不思議な感覚を覚えました。そのイメージを持って馬込文士村を歩けば、きっと今までとは違う馬込文士村散歩ができるはずです。10月2日(土)のYouTUBEトークイベントでも、関口直人さんによる生の言葉をお届けする予定ですので、ぜひご視聴いただければと思います。

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左は2010年に夏葉社から復刊された『昔日の客』。沢木耕太郎の『バーボンストリート』(新潮文庫)にも「山王書房」の話が掲載されている。

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尾崎士郎直筆の「山王書房」の書。現在のカフェ入り口付近に飾られている(撮影:鴇田康則)

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カフェには関連書籍も置かれ、馬込文士村の雰囲気も感じながら過ごすことができる(撮影:鴇田康則)

 さて、餃子や馬込文士村じゃなく、今月号の大特集「蒲田・大森・池上」では、様々な企画が続きます。表紙にも登場してもらった丸山桂里奈さんの味わいある地元インタビューをはじめ、「菅野製麺所と蒲田ラーメン」「通い詰めたい、界隈三つ星ベーカリー」「本門寺門前、テイクアウト隠れ名物」「縄文海岸つたい歩き」「残したい“地獄谷”の記憶」などなど、楽しい企画は盛りだくさんなので、ぜひ発売中の本誌をご覧ください。

 さらに第2特集「今日の気分はベジタリアン」も必見。ヴィーガン、マクロビオテックなど、意識高そうな用語にひるむことなく、気軽においしく野菜を食べられるお店やお取り寄せをご紹介しています。

 感染者数は少なくなってきました。リバウンドも怖いですし、まだ気を緩められないものの、せっかくの散歩しやすい陽気です。今月も密を避けつつ、本誌を参考にして、できる範囲で散歩を楽しんでください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

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