Cover Model 櫻井 翔 2011年9月号

Cover Model 紹介

更新日:2013/10/11

Cover Model 櫻井 翔

原作の一行が役作りの一歩となった

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映画『神様のカルテ』で、地方医療の現実に立ち向かう
若き医師・栗原一止を演じた櫻井翔さん。
日々激務をこなしながらも、真摯に患者一人ひとりの命と向き合う一止の姿は、
櫻井さんの目にどう映ったのだろう。
「やったことなかったんです、こういう役を。前作が『ヤッターマン』ですし(笑)。
人と人との向き合いを丁寧に描いた、こういう作品が自分にできるんだろうかって
正直怖かった。ものすごい挑戦になると思いました」
そんな櫻井さんの役づくりの一歩になったのが、
〈私は悲しむのが苦手だ〉という原作の一行だった。
「その真意がわからなくて、クランクインする前に、
原作者の夏川先生にうかがったんです。先生がおっしゃるには、
患者さんが亡くなって、悲しみ過ぎれば、医者という職業をこなしきれない、
けれど悲しまなければ、人として情がなくなり過ぎてしまう。
そのバランスをとるのが難しい、だから悲しむのが苦手ということだと」
そう聞いて、彼は思った。
「一止は、きっと、悲しみ過ぎる人なんじゃないかって。
妻のハルさんのセリフにあるように、涙を流さないだけで、
心でいつも泣いているのが栗原一止だというのが僕の解釈でした」

そんな櫻井 翔さんが選んだ本は——

『もの食う人びと』
『もの食う人びと』
辺見 庸
角川文庫 720円

ダッカの残飯からチェルノブイリの放射能汚染スープまで、同じ物を食べることで、その土地に暮らす人々の苛烈な生き方に触れる。血肉にしみこませるような旅の記録は、反転して、飽食に倦む日本の今をあぶりだす。「ここで戦うんだ、死ぬまで戦うんだ」、チェルノブイリ原発30キロ圏内の村の老人のつぶやきも、そのまま今に突き刺さる。
「20歳の誕生日にマネージャ―さんからもらって、もう何度読み返したかわからないくらい好きな本です。辺見庸さんは取材目的で行っていますが、この本を読むと、いわゆる観光じゃない旅をしたくなるんですよ」(櫻井 翔 談)