特集番外編1 2011年11月号

特集番外編1

更新日:2013/8/8

文庫ランキング特集番外編


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それぞれのプロが太鼓判を押す 偏愛文庫をお楽しみください。

編集M.I

今号の特集では、「プロが案内する! 太鼓判文庫ランキング」としまして、さまざまな“プロ”のかたがたに、おススメの文庫をご紹介いただきました。多くの人の投票で決定されるランキングも興味深いですが(そういえば、「BOOK OF THE YEAR 2011」の投票アンケート締め切りは、本日10月6日です! みなさまご協力ありがとうございました)、特定の分野に精通したかたに個人的な偏愛ランキングの形で紹介してもらうのもおもしろいもの。今回はそのようにして特集を作りました。
私が今回インタビューしましたのは、サラリーマンや女子高校生など記号的なモチーフの写真を多数手がけている写真家の青山裕企さんと、写真評論家としてのキャリアもさることながら、最近は「きのこ文学評論家」としてもきのこ愛をふりまきまくっている飯沢耕太郎さん。
青山さんは、『SCHOOLGIRL COMPLEX』個展の会場にお邪魔して取材(いまは、国分寺で10月9日まで、『schoolgirl complex 2』の展示をやっていらっしゃいますので、ご興味ある方はぜひ! 詳細は→ http://yukiao.jp/)。今回は、「記号的モチーフ写真のプロ」としてご登場いただきましたが、直接写真にかかわる本というよりは、青山さんのこれまでの人生の要所要所で方向付けをしてくれた文庫を3冊ご紹介いただいています。写真に興味がある人もない人も、大変面白いラインナップになったと思います!
飯沢さんに選んでいただいたのは、「文庫で読めるきのこ文学ベスト3」。絶版になっていない本から選んでいただきました。小説の中で、きのこがどのような役割を果たしているのか、民族的な違いの話など、次から次へと繰り出されるきのこ話が大変面白い取材でした。飯沢さんの新刊『きのこのチカラ』は、先日「王様のブランチ」でも紹介されましたが、取材があまりにも面白かったので、「ブランチ」に出演しておりました服部に話したところ、あれよあれよと取り上げの運びになったのでした。きのこ、女子向けの本も続々出ていて、マジで来てます!
本読みのかたには、ダ・ヴィンチ太鼓判の作家を、その作家の作品に精通している書評家のかたなどにセレクトしていただいた企画もおススメ。赤川次郎、伊坂幸太郎、冲方 丁、江國香織、海堂 尊、角田光代、京極夏彦、東野圭吾、宮部みゆき、村上春樹と、これぞ!という作家の作品を取り上げています。特別拡大版として、道尾秀介×杉江松恋、三浦しをん×藤田香織、吉田修一×瀧晴巳の対談企画も。(敬称略)
ご協力くださったみなさま、ありがとうございました。
ほかにも、たっくさんのプロのかたがたに登場していただいています。
ぜひ本誌をご覧いただいて、あらたなジャンルや作家にチャレンジしていただけたら嬉しいです。

 


ダ・ヴィンチ読者が選んだ
「この人の愛読書が知りたい」ランキング、
第1位はピースの又吉直樹さん

※ダ・ヴィンチ読者モニターへのWEBアンケートによる集計

文庫偏愛ランキング特集をするにあたり、『ダ・ヴィンチ』読者はいったい誰の偏愛本を知りたいのか、WEBの登録モニターに緊急アンケートを行った。その結果、見事第一位に輝いたのがピースの又吉直樹さん。これはどうしても取材させてもらわねばと、「ルミネtheよしもと」の本番後、楽屋でのインタビューを敢行。

小説にハマった経緯から、近代文学の魅力、太宰治の〈話を盛るセンス〉、毎日古本屋通いをしていた頃の思い出、読書スタイル、本の買い方など、約7000字のインタビューを本誌に掲載。又吉さんは、それぞれの作品のディテールを本当によく記憶していて、ストーリーの説明や作中の好きな言葉を求めても、全く淀みがない。

「おもろい話を人に伝える時に、実際起こったのと同じこと書いても、うまいこと人に伝わらへん。実際にその場におった人よりはどうしても質が落ちるじゃないですか。そこで起こったことと同じだけの感動を呼びおこすにはそのための仕掛けが絶対に必要で、たとえば『富嶽百景』で太宰は井伏鱒二さんが放屁したって書いてるけど、実際は退屈そうに岩に座っていただけなんですよ。それをそのまま伝えても、その時の感じは伝わらない。よく〈話を盛る〉って言いますけど、その盛り方が嘘じゃないっていうか、盛らへんほうが嘘になる。盛ることによって、その場にいたのと同じことを感じさせようとしてる。たぶん太宰は井伏さん見て、おもろかったんだと思うんですよ。なに、この人。頂上まで来て、こんな退屈そうにして……ここで屁をこくぐらいが井伏さんのその時の感じが明確に伝わる、そのための工夫をやったんじゃないか。井伏さん、否定してますからね。俺は屁はこいてないって。有名な〈富士には月見草がよく似合う〉っていうくだりも、あの時間に月見草は咲かない、でも咲いてると言ってちょうどいいくらいの何かがあったんじゃないか。そういう作中の工夫の仕方に身に覚えがあると言うか、感覚的に芸人に近いものを感じますね」
(インタビューより一部抜粋)

インタビューの中からピックアップした偏愛文庫15冊も紹介している。知られた作品も多いが、又吉さんのコメントを読むと再読したくなること必至。

だから、私は又吉さんの愛読書が知りたい

(読者コメント)

●太宰が好きというのは知っているのですが、他にどういう方の影響を受けてあの独特の世界観が作られたのか知りたい。

●無類の読書家。センスが好き。以前ヨシモトファンダンゴTV『ワイ!ワイ!ワイ!』での文学のコーナーが大好きでした。ブログ「猿」での読んだ本の紹介も最近はなし……ぜひとも又吉の渾身の紹介本が知りたい。

●太宰作品のフェイバリットを教えてほしい。

●以前、又吉さんが自宅の本棚の前で撮ったと思われる写真を見かけた。エンターテインメントから文学まで興味ある本棚だったので、きちんと紹介してほしい。

●文豪好きがキャラになっているけれど、正直、誰の何のどこがいいかをきちんと聞きたい。

●太宰治以外で薦めてほしい。物事の真実だけ見つめて(?)そうな瞳だから。

●まだ私が読んだことのない、面白い小説を知ってそうだから。

写真=首藤幹夫