リアル『火花』!? 後輩芸人が又吉直樹を語る ジューシーズ児玉×フルポン村上×パンサー向井【WEB番外編】

特集番外編1

更新日:2015/6/5

リアル『火花』!? 後輩芸人が又吉直樹を語る ジューシーズ児玉×フルポン村上×パンサー向井【WEB番外編】

『火花』の神谷にもまして、後輩たちからの信頼が厚い又吉直樹さん。同居生活を送り、まさに公私を共にする児玉智洋さんと向井慧さん、そして本好きとして文学の話もするという村上健志さんの3人が、先輩芸人・又吉直樹について愛情たっぷりに語ります!

※ダ・ヴィンチ本誌に掲載できなかったエピソード公開! ぜひ、本誌の本編も合わせてごらんください。

鼎談 児玉智洋(ジューシーズ)× 村上健志(フルーツポンチ)× 向井 慧(パンサー)

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三人で家にいる時は、ずっとふざけてます

――児玉さん、向井さんと、又吉さんとの3人暮らしは2年が過ぎたところですね。当初の予定を1年延長したそうですが、やはり延長してよかったですか?

児玉 僕はもう万々歳ですよ! お前は……ちょっと考えてるよな。
向井 いや仲が良すぎて、キリないんですよ! だから最初2年って決めてたんですけど……やっぱりまだ離れたくないってことで結局延長したんですけどね。

――家事の分担は決まっているんですか?

児玉 掃除と洗濯とゴミ捨ては俺です。こいつがひとりでキムチ鍋とかやって散らかしたあとも、俺が片づける。全然片づけないんですよ! 深夜帰ってきて、俺が一人でごしごし洗って……。
向井 だって家賃5万でしょ。
村上 それなら絶対やんなきゃだめよ。

児玉 うん。不思議とムカつかないもん
向井 (笑)
村上 もっとやんなきゃいけないくらいだよ。
児玉 そうだね!
向井 三人で家にいる時は、ずっとふざけてます。
児玉 うん。配信しようかみたいな話もしてたよな。

又吉さんは、みんなの駆け込み寺

向井 あと、又吉さんと一緒に暮らして何がいいかって、すごく基本的なことなんですけど、何か悩んだ時にすぐに相談できるんですよ。又吉さんって、昔からみんなの駆け込み寺みたいなところがあって。みんな又吉さんに相談するんです。
児玉 そう。だから仲良くなり始めた頃、ちょっと自慢じゃなかった?
村上 うん、最初の頃は特にね。
向井 それはありましたね。みんなにうらやましがられた。

――みんなが又吉さんに相談に行くのはなぜですか? 話しやすいから?

三人 話しやすくはない!
向井 だってあの感じですから。
児玉 奇妙でしょう。どんな人なんだろうって思いますよね。おとなしいし。
村上 本音を言ってるかどうかもわからないし。

向井 会っても散歩しかしなかったし。最初に遊びに連れてってもらったのって、吉祥寺を散歩するだけなんですよ。夜、どんどん、吉祥寺の真っ暗な住宅街に入っていって。まじで殺されるんじゃないかって思った(笑)。
児玉 ほんとそうだよね。最初の頃って又吉さんもお金ないから、缶コーヒー買って井の頭公園を何周もしたり。
向井 ほんとそれだけ。

――「奇妙な」又吉さんなのに、みんなが相談に行くわけですね。

児玉 奇妙なのは、最初だけですけどね。
村上 ほかの人でも、相談すると、ダメなところは言ってくれるんですよ。でも又吉さんはダメなところを言うだけじゃなくて、代替案を出してくれる。このボケはどうだとか、この流れでこうしたらどうだ、っていうふうに具体的に、そのままネタになることを言ってくれるんです。
向井 ほんとに悩みを解決してくれる。
村上 だから逆に、軽はずみに相談できないですよね。常に真剣に考えてくれちゃうので。もう一緒にネタ作る、みたいな空気になる時もあって。そんなつもりじゃなかったのにって。
向井 親身になってくれ過ぎる。
村上 やっべえ!と思うことがある。自分の中で答えが決まっていて、「うん」か「いいえ」でいい時ってあるじゃないですか。でも、又吉さんはがっつり「じゃあ、それ考えよか」って言ってくれるから。
児玉 うわー、すっげえわかる! 全然違う方向のおもしろい提案をしてくれるじゃん。そうすると、それをやらざるを得なくなる。
向井 それがちゃんとおもしろいからね。

村上 人と向き合い過ぎちゃう人ですよね。
向井 一度、面倒を見るって決めたら、とことんまでの人だと思います。
村上 パッと見はそんなに後輩思いな感じはしないんだけど。ドライなイメージだし。
向井 むしろ人と深くかかわりたくないのかなって感じだし。
村上 もしかしたら最初はバリアを張ってるのかもしれない。みんながみんな又吉さんのところに来ちゃったら困るから。
児玉 なんなんだろ。やっぱりやさしいんだよなあ……。

向井 ほんとにやさしい。又吉さん自身が風呂なし、トイレ共同のアパートに住んでた頃から、どれだけ飯食わせてもらったか……。いつも「何食いたい?」って聞いてくれて。「又吉さんの食べたいものにしてください」って言っても「いや、お前らの食べたいもんが俺の食べたいもんやねん」って言ってくれるんすよ。
児玉 ……ちょっと気持ち悪い(笑)。そこまでいくと。
向井 そこまでのやさしさなんだよ。
村上 破滅型っちゃ破滅型なんすかねえ。

又吉さんの生ケツをパーンと蹴った

向井 飯に連れてってもらうようになった頃に言われたのは、「吉祥寺に入ったら、もう友達な」と。その頃僕も又吉さんも吉祥寺のほうに住んでいて。「仕事場では先輩・後輩でやらな、お前が損するから先輩後輩やけど」って。
児玉 又吉さん自身は先輩に対してすごくちゃんとしてるんだけど、僕らにとってはゆるいというか。先輩で唯一、誘われても「ちょっとだるい」って理由で断れる人。
向井 吉本って先輩に誘われたら基本的にはどんな予定があっても行く、みたいな感じがあるんですけど、又吉さんの場合はないですね(笑)。
児玉 たぶん断れるような空気を作ってくれてるんでしょうけどね。
向井 最初の頃なんか、誘われて「行きたいです!」って僕が言うと「でも、女の子と予定が入ってるんやったら断ってくれてええよ」「そんなのないです、行きます」「でも、もし明日仕事が早いんやったら全然断ってくれてええよ」「ないです」「でも、もしお前がちょっとでも体がしんどかったら……」「いや行きます!」みたいな(笑)。もう又吉さんが行きたくなくなってんじゃないかな?って思うくらい気をつかってくれて。
児玉 誘ってきてるのに。
村上 又吉さんも不器用だしなあ。二人と又吉さんの関係は友達だと思うんだけど、僕と又吉さんの関係は、先輩と後輩っぽいところがあるかもしれない。でも僕はどの先輩にも、最初からナメてる感じでしゃべっちゃうんですよ。最初に又吉さんと仲良くなった時も、何か聞かれて「違います」じゃなくて「全然違います」って答えたら、「お前それ、“全然”つける? 先輩に?」みたいなやりとりがあって。
向井 全然(笑)。
村上 自分が気をつかう人だから、後輩に気をつかわれてるんじゃないかって思って、なかなか自分からは近づけないんだと思うんですけど、二人に対してだけはそれがなくて。又吉さんを救ってるんだと思う、友達として。
児玉 そう……なのかな?
向井 確かに、友達じゃないとできないことはやってますよね。児玉さんくらいじゃないですか、又吉さんのケツ蹴ったりするの(笑)。銭湯に行った時、児玉さんがすごいテンションあがって、僕の生ケツをパーン!って蹴ってきたんですよ。全員全裸の状態で。僕が「痛いっすよ!」って叫んでたら又吉さんが危険を察知してササッと風呂のほうに逃げようとして。そしたら児玉さんが「お前もだぞ!」ってパーン!と又吉さんのケツを蹴った(笑)。さすがにそれはびっくりしました。
村上 超友達だもんねえ(笑)。
児玉 ……ほんと、友達です。いや、でもすごく尊敬してるんですよ!
村上 そらそうでしょう。
児玉 又吉さんのこと、ほんとにおもしろいと思ってる。後から「おもしろかったんだ」って思うことが唯一ある人なんですよ。
向井 どういうこと?
児玉 言われた時は「どういう意味だ?」って思うんだけど、後で「あ、あれめっちゃおもしろいじゃん!!」って気づくんだよ。すごいわ、ほんとに。

ほんとに感謝してる。泣けるくらい

――普段面と向かって言えないことで、又吉さんに言っておきたいことはありますか。

向井 あんまり言えないこともないんですけど(笑)。でも大げさでもなんでもなくて、今、僕が仕事できてるのは、又吉さんのおかげです。8割くらいは、又吉さんのおかげ。
児玉 俺もそうだな。なんかさ、感謝してないように思われてる感じしない?
向井 うん。めちゃくちゃ感謝してるのに。
児玉 (村上さんに)お前も、俺が又吉さんに感謝してないって思ってるだろ。
村上 そんなことないですよ。しなきゃ、って思ってますよ。
児玉 「しなきゃ」ってなんだよ! してんのよ、俺、めちゃくちゃ。ほんとに感謝してる。泣けるぐらい。
村上 僕は二人とはちょっと違うんで……なんですかねえ、「『火花』が映画化される時には出してください!」。
向井 やらしいよ!
村上 本人に直接言うと、断りづらかったら悪いから。
向井 だからって『ダ・ヴィンチ』通して言うなよ!
村上 「若手芸人が出ている舞台のMC役でもいいので、お願いします!」ということで(笑)。

こだま・ともひろ●NSC東京校第9期生。1979年東京都生まれ。2006年、赤羽健一、松橋周太呂とともに「ジューシーズ」を結成。劇場でのライブを精力的に行うほか、ジャングルポケット、パンサーとともにテレビ朝日『333トリオさん』にレギュラー出演中。最新DVD『ジューシーズ エキゾチックゾンビのクルクルパジャマ』が発売中。

むらかみ・けんじ●NSC東京校第10期生。1980年茨城県生まれ。2005年、亘健太郎とともに「フルーツポンチ」を結成。ボケ担当。テレビ東京『ピラメキーノ640』、フジテレビONE『爆笑レッドシアター』レギュラー出演中。また NHK Eテレ『短歌de胸キュン』では短歌に挑戦中。

むかい・さとし●NSC東京校第11期生。1985年愛知県生まれ。2008年、菅良太郎、尾形貴弘と共に「パンサー」を結成。ツッコミ担当。2015年「よしもと男前ランキング」1位。『333 トリオさん』のほか、TBS『王様のブランチ』、テレビ東京『おはスタ』などにレギュラー出演中。

取材・文=門倉紫麻 写真=江森康之