【ダ・ヴィンチ2016年4月号】「A.B.C-Z まだ見ぬ明日へ」特集番外編

特集番外編2

更新日:2016/3/6

【ダ・ヴィンチ2016年4月号】「A.B.C-Z まだ見ぬ明日へ」特集番外編

少し長めの取材後記 

ダ・ヴィンチ編集部担当 

 本特集の取材日は、2016年2月1日でした。デビュー4周年の記念日を弊誌特集のために、あててくれたA.B.C-Zのメンバー、マネージャーさん、ありがとうございました。

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 朝から、撮影、座談会、インタビュー、対談など、盛りだくさんなメニューをこなしていただき、一冊ムックが作れるくらいの情報量をいただいたと思っています。

 今回、取材には、3名のライターさんに関わっていただきまして、そのみなさんから、取材後記ということで原稿をいただきましたので、この場でご紹介いたします。
    

 

語りたくなるアイドル 

ライター 門倉紫麻 

「あのー、何時までいらっしゃいますか?」
 撮影スタジオの方の声にハッと顔をあげると、午後9時。取材終了後2時間以上、我々取材陣はA.B.C-Zについて話し続けていたことになります(帰りの駅までの道中も話は止まらなかった)。
 それぞれが担当した取材の情報共有と誌面をどう作るかの打合せ、ではありますが、そう呼ぶにはあまりにも楽しい、おしゃべりの時間でした。
 A.B.C-Zというグループは、「語りたくなる」魅力を持っている……そしてそれは愛されるアイドルに必須なものなのではないか、とあらためて思ったのでした。

 ファンの方たちから送っていただいたアンケートの文言にもそれが表れていて、とにかくみなさまの語り口が素晴らしい! ほとばしる愛はもちろんですが、随所に冷静な分析とブラックユーモアを投入しながら(アンケートでは少々珍しいことです)、自分の言葉で5人を語る、語る! 何度もなるほどと膝を打ったり、吹き出したりしながら拝読しました。

 パーソナルインタビューで私が担当したのは五関晃一さんと河合郁人さんのお二人。

 クールな印象が強かった五関さんですが、対峙した印象はむしろ「ほがらか」な方。終始にこにこと語る姿に、なんだか部屋はあたたかな春の空気に(マンガ好きの方にお伝えするならば、『ガラスの仮面』の王女アルディス的な空気です)。いろいろなマンガについて語っていただく中で、「あの作家さんって……失礼な言い方になっていたら申しわけないんですけど、ストーリーがぶっ飛ぶ瞬間が多々ありますよね」と鋭いひとこと(をやっぱりにこにこ顔で)。「王道系作品が好き」と言いつつ、ディープな作品へのマンガ愛もあること、伝わってきました。

 そして河合さんは、その「らしさ」がよくわかるエピソードを。
 屋外での撮影(座談会ページに掲載)に向かう途中。底冷えするような真冬の一日にも関わらず、春の衣装で撮影に臨んでくださった5人。寒いに決まっているのに、笑顔で次々と外へ。そんな中、スタッフの一人が一番薄着に見える河合さんに「寒くないですか?」とストールを差し出しました。すると河合さん、元気な声で「寒いっす!」とひとこと。そしてすかさず、「でも大丈夫です」と笑顔。
「寒くないです」ではなく、「大丈夫です」だけではなく。本音を混ぜることで逆に相手の気持ちを軽くする――河合さんならではの「やさしさ」の示し方にぐっときたのでした。
 本誌記事では、そんな自分のやさしさを本気で否定する河合さんの様子も、ぜひご一読ください!
   

 

A.B.C-Zをとりまく応援パワーの熱さと強さに圧倒されっぱなしでした 

ライター・編集 立花もも 

 
 今回のA.B.C-Z特集で、私は塚田僚一さんを取材させていただきました。
 当日、少し前に塚田さんが掲載された雑誌を資料として抱えていたところ、撮影の合間に「それ、この間のですよね?」とはにかみながら話しかけてくれました。少しでも休憩時間があると、私たちスタッフに笑顔で話しかけてきてくれて、テレビの印象そのままに明るく優しい方だなあと感じたのを覚えています。実は当日、塚田さんはテレビ番組の収録が入っていて、途中で抜けなくてはならなかったのですが、終わったあとに一人で戻ってきてくれて、疲れた様子など少しも見せずに取材に応じてくれました。

 特集では書ききれなかったのですが、メンバーのことをすごくよく見ているのだなあというのをお話の中で感じました。戸塚さんについては、『ダ・ヴィンチ』での連載も本当によく読んでくださっていたようで、「とっつーはとても近い存在で、いつも同じ方向を見ているし、熱量も同じな気がする。もちろん正反対の部分もあって、とっつーはかたくて、僕はやわらかいと思っていた。だけど連載を読んでいて、『あ、やわらかさがある』って思ったんですよね。僕は、人には必ずいいところが一つはあるからそれを絶対見つけたいと思っているけど、とっつーは二つも三つも見つけているんだってわかった。ああ、僕がなりたい自分があるなって感じたんです」というお話をしてくださって。だからこそ表面的なもので判断するようなことはしないようにしているし、自分も中身を磨いていきたいとおっしゃっていた塚田さんは、誰よりも本質的な、本当のことを見たがっている方なのではないかなという気がしました。

 それからもうひとつ、「ファンが0人になるまでアイドルはやめません!」「最後の一人がいてくれる限り、僕はこの仕事を続けていきます」と強くおっしゃっていたのも印象的でした。本当にファンのことを一番に考えているのだなあと。そして最後に「でも、けっきょくは神頼みだと思います! だから毎日神社に行きます!」と笑っているのを見て、この明るい前向きさが塚田さんの強さで、ファンの皆さんを魅了しているのだなと感じた次第です。 

 今回、わたしは塚田さんの取材のほかに、A.B.C-Zをよく知る方々に、彼らの魅力を伝えるべくコメント取材をさせていただいたのですが、こちらも誌面に載せられたのはほんの一部で、皆さん、おさまりきらないほど熱い想いを語ってくださいました。さらには読者アンケートでも、短い期間だったにもかかわらず、選びきれないほど素敵なコメントをたくさんお寄せいただきました。全体的な編集作業にかかわったこともあり、今回の特集では、A.B.C-Z本人たちだけでなく、彼らをとりまく応援パワーの熱さと強さに最初から最後まで圧倒されっぱなしでした。

 ご協力してくださった皆様、本当にありがとうございました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。
 一人でも多くの皆様に、特集を楽しんでいただけることを祈っております。
   

 

不安や悔しさをバネにしてきたからこそ、今の彼らがある         

ライター・瀧 晴巳 

 A.B.C-Zは、舞台からの叩き上げである。テレビにあまり出てこなかった彼らのことを「知らなかった」という人も少なくないだろう。

 ジュニア時代は実力派と言われ、ライブではスキルの高さを見せつけてきたけれど、どういうわけかデビューの機会はなかなかめぐってこなかった。華やかに見えるアイドルの世界にも下積みがあるのだ。華やかな世界だからこそ、それは一層シビアなものだったに違いなくて、ある時は「このままではバッグダンサーで終わるかもしれない」と葛藤しながら、またある時はあとから入ってきた後輩に抜かれるという悔しさをかみしめながら、5人それぞれのやり方でのるかそるかのところを潜り抜けてきた。

 春は新スタートの季節。憧れた夢のぶんだけ、誰もが「こんなはずじゃなかった」という思いに揺れる季節というわけで、A.B.C-Zは、たぶん、そういう時に語れる言葉を持っているんじゃないか。そんな予感があった。先が見えない不安や思い通りにならない悔しさをバネにしてきたからこそ、今の彼らがある。

 バラエティ番組でブレイクした塚ちゃんは、気遣いの人だった。番組収録のため、いったん取材から抜けなくてはならず「あとからコメントをもらいにスタジオまで行きますよ」と伝えたのに「収録が早く終わったから」とわざわざ戻ってきてくれた。

 とっつーが突然坊主にした時も、塚ちゃんだけは「特に驚かなかった」と発言して、みんなから「驚かないほうがおかしい」とつっこまれていた。

「僕も金髪にした時は、ジャニーさんから“ユーは外国人だね”って言われて、あまりウェルカムな感じじゃなかったんで。とっつーには“俺はこうだ”っていう頑固なところがあるから、坊主にするくらいのことは想定内」。

 やりたいことを本気でやろうとしたら、そのくらいのことはフツーにあるよ、と言える人なのだ。柔らかな物腰の下に、不思議なタフさを持っていた。

 おにいちゃんキャラのごっちは、ごっちスマイルと呼びたくなるような穏やかな微笑を常に浮かべている。そういうごっちが、ちらりとアグレッシヴさをのぞかせると「キターッ!」という感じで、メンバー全員がやたらと盛り上がるのが面白い。

 たぶんこの人がこのグループの守りの切り札であり、同時に攻めの切り札なのかもしれない。最年少のはっしーが、ごっちに向かって「年上ぶらなくていいから」と発破をかけるくだりは、今回の座談会でも、ぐっときた瞬間のひとつ。

「今日は調子のって、あんなこと言ったけど、いつもは言えない」と、あとではっしーが反省していたことも付け加えておきたい。

 河合君は、どんな話題の時も率先して口火を切ってくれた。自分の役割というものにとても自覚的な彼は、憧れと現実の間でいやってほど葛藤してきたに違いない。最初は誰だってなんでもできると思っている、頑張れば、努力すれば、どうにかなる、と。でもそうじゃないこともある。悔しさや諦めを突き付けられて、初めて立てるスタート地点があるのだ。客観的に自分自身を見ること、できることできないことを冷静に判断すること、彼の言葉からはそうして積み上げてきた経験値を感じた。

「小説を読むの、あんまり得意じゃないんで」。

 何度もそう言っていたけど、河合君の『コインロッカー・ベイビーズ』の感想は、まっすぐで、とても的を得ていた。何より「自分はこうだ」という限界をもう一度突破したいという思いに溢れていた。

 はっしーは、否定しない男である。「へえ。この写真集みたいな部屋に住んでいるなんて、オシャレですね」と水を向けても「そうなんですよ、オシャレなんです」とニッコリ笑ってみせる。さすがセンターに立つ男、へんに謙遜したりしない。

 万事「俺はこうだね」とさらりと言ってのける彼に、座談会では先輩たちに思い切ってダメ出しをしてもらった。そのダメ出しがまた絶妙で、いやはや、彼にドSっぽく叱ってほしい女子は結構いるのではないかと思ってしまった。

 余計なお世話かもしれないが、はっしーこそ「最年少ぶっている場合ではない」、ここはひとつ、その攻めのキャラ全開のコーナーをラジオで持ってもらって、全国の女子を叱ってあげてはどうだろう。

 そして、とっつー。本誌連載『ジョーダンバットが鳴っている』、お疲れ様でした。ガチでマジなとっつーが「行きつけのバーでも書いていた」と証言してくれたのは、ごっちである。

「バーでも、じゃなくて、バーで書いてたんです。うちにいるとギター触っちゃったり、気が散るんで」ととっつー。

 河合君も言う。
「ほんと、いつでも書いてたんで。うちでひとりビール飲んでる時も、あー、今頃またとっつー書いてるのかなと思うと、俺、ビールなんか飲んでていいのかなーって後ろめたくなっちゃって」。

 連載中、V6の井ノ原さんに話を聞きにいった時には、録音もせず、ひたすらノートにメモをとりつづけたという。

「あとで、なんで録音しなかったのかと聞かれて、なるほどねと思ったけど、この間柄で録音なんてしちゃいけないような気がしたんです。『ジャージー・ボーイズ』という映画に『俺たちに契約書はなしだぜ』というせりふがあって、それと同じで、この間柄でそれはなしだぜ、って」。

 どうやら彼のする突飛な行動には、いつもこんなふうに理由があるらしい。連載でも何度もとりあげた大好きな伊坂幸太郎さんの本は、単行本で買い、文庫が出るとまた買って読み直すので、だいたい2冊持っている。読み返した時に気になるから、本に線をひいたりはしない。それなのに好きなフレーズはちゃんと暗記していた。新刊が出るのが待ち遠しい作家がいる、その喜びを彼はよく知っている。

 伊坂さんの作品で誰かを演じるとしたら『死神の浮力』の千葉をやりたいという。

「伊坂ファンとしては、千葉の“晩年も悪くなかった”ってせりふを言いたいんですよ」。

 とっつーは愛が深い男なのだ。

 ジャニーズなんて、と思っていた人が思わずハマってしまう魅力が、彼らにはある。
 この特集は、ファンの方々はもちろん、「A.B.C-Z? 誰ソレ」な人にもぜひ楽しんでもらえたらと思っている。