【ダ・ヴィンチ2016年6月号】今月のプラチナ本は 『地獄のガールフレンド』

今月のプラチナ本

更新日:2016/5/13

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『地獄のガールフレンド』(1~2巻)

●あらすじ●

「お友達のいない方大歓迎!」アパレルショップを経営し、一軒家を持つ謎多き超モテ女・奈央(36歳)のルームシェア募集に引き寄せられたのは、他人から「お母さん」と呼ばれることに戸惑いを感じるバツ1シングルマザー・加南(31歳)と、不倫歴アリのセカンド処女にしてまじめ過ぎるOL・悠里(28歳)。三者三様の女たちの同居生活。非モテ、オバサン問題、受け身の性欲……。“あるある”なネタを肴に女たちのおしゃべりは今日も続く──。

とりかい・あかね●1981年、大阪府出身。2004年、『別冊少女フレンドDXジュリエット』でデビュー。『おんなのいえ』が第39回講談社漫画大賞一般部門ノミネート。他に現在、『先生の白い嘘』を連載中。

地獄のガールフレンド

鳥飼 茜
祥伝社フィールC swing 各680円(税別)
写真=首藤幹夫
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編集部寸評

 

名言だらけのリアル会話劇

超モテ汚部屋女36歳・シングルマザー31歳・8年彼氏のいないOL28歳。この3人の同居生活を描くマンガということで、読み始める前はもっと「恋愛マンガ」なのかと思っていた。もちろん恋愛要素もあるのだが、それはあくまで1要素。回を進むごとに多彩なテーマが出てくる。親子、仕事、男女の違い、「人を人としてみる」こと……。誰もが抱えている「なんだかもやもやする、さびしい、イラッとする」瞬間をリアルに切り取りながら、3人の会話を通して「なぜもやもやするのか」を言葉で解き明かしていく名言連発マンガなのだ。シェアハウスという設定も効いていて、外ではこんなに赤裸々に話せないし、家族にはこんなに冷静にツッコめない。女友だちならではの、共感しながらも一定の距離を取る視点が、読者のもやもやにも風穴をあけてくれる。

関口靖彦 男女ということでいえば書店で『夫に死んでほしい妻たち』(小林美希 朝日新書)という本を見かけた。すごく読みたいと思う一方で、怖くて手に取れず……。心の平穏はいずこに。

 

旦那よりも……!?

独身のアラフォー女子なら、きっと誰しもが考えたことのある老後問題。気の合う女友達とのシェアハウス構想を心の支えに、うまくいかない婚活から足を洗った人も多いのではないか。そんな人にお薦めしたいのが本書。各々事情を抱え、利害一致で同居を始めた3人。まったく違うタイプながらも、女であるということだけで助けあったり、共有したり、慰めあったりすることも多いのだ。私が思わず唸ったのは、モテ自認のオジサンのプライドを傷つけて「ドブスが…!」と罵られた奈央が、落ち込むでもなく同居仲間としゃべりたい欲求に駆られるシーン。旦那よりも自分の感情の揺れを共有できる仲間のほうが女性にとっては必要なのかも。3人のおしゃべりや独り言の中に思わず心を掴まれる言葉が潜んでいるので、泣かないように注意しよう。

稲子美砂 横山秀夫さん特集で、映像関係の方々に多数取材。自分の担当する本も映像化を目指すなか、むっちゃ参考になりました。横山さんご自身への取材はなんと12年ぶり。感無量!

 

魅力的な3人の女性がルームシェアを

加南、悠里、奈央の3人がはじめたルームシェア。各々の経済的な自立というハードルはあるものの、それをクリアしたら女性だけの共同体は楽しそうだなと思った。男との関係は外、そして女のいる家に帰る。男性もそうだろうが、同性のほうが仲間って感じがするし、居心地がよさそうなのは確か。でも奈央さんの「モテる秘訣わかったよ。『男に自分ほど関心持たないこと』」。名言だけど共感できないよ(笑)。私も男より自分に関心があるけど、モテ街道走ってこなかったし!

鎌野静華 最近テレビで海外サッカーと海外ドラマしか見ない。雑学なく興味あるものだけを見るのがインターネットの使い方と似てる、と個人的な変化。

 

マンガの形をした金言集

再読の際、フセンを貼り始めたら止まらなくなる自分がいた! のちのち繰り返し思い出すことになる知人の言葉は、そのシーンごと映像として残っていたりするのですが、そんな人と人とのやり取りの妙味、一緒の空間に人がいて言葉を交わす醍醐味がビジュアル込みで詰まっています。女子コワイ!知りたくなかった……、ではなく男の俺も知りたかったぞ! と思えるシーンが満載で、私のような「無自覚なおっさん」全員が本作を読めばもっと世界は平和になる気がします。

川戸崇央 子どもの頃に大好きだった『少年アシベ』が23年ぶりにアニメ化! 原作者の森下裕美先生にインタビューさせて頂きました。本誌84~85Pです

 

女性の“心の味方”でいてくれる

デビューの頃から著者の大ファン(全作品コンプリートしてます)。アラサー・アラフォー女性を対象にしたマンガは多々あれど、著者の作品は、どの作品より女性が日々生活を送る中で“じんわり”感じている「心の奥底にある」言葉をくれる。「くれる」と表現したのは、それを“否定”にしないでいてくれるから。さらに今作は3人の女性がいることで、デトックスまでしてくれる。日々、感情的になる自分に悩む。でも「それでいいのかもね」と思える。女性の味方でいてくれる作品。

村井有紀子 御手洗潔特集を担当。本格ミステリーに溺れた至福の2か月。また、鳥飼茜さんをご紹介できてうれしい!『おはようおかえり』も大好きです。

 

軽快ポップ、時々シュールな女子トークマンガ

3人のアラサー独女から見える世界や関わる他者への、クールかつコミカルなツッコミと本音。本作で描かれる彼女たちの不満や不安や鬱憤は、自分が同世代・同性だからだろうか、共感の楽しみが強い。章題が文章の形で、テーマあるいは結論のようになっているのも見どころ。各章それぞれ真をつく台詞にハッとさせられる。「男の子(人)って……怒らない女が好きなんだよね」「私たちはいったい誰にいつまで謝りつづければ自由の身になれるのでしょうか」……うん、わかるわー。

地子給奈穂 本作の忘れちゃいけないキャラは処女厨イケメンの鹿谷。アラサー女子3人の個性に、さらにいいスパイス効かせてる。推しメンです(笑)。

 

「あるある」を外輪から楽しむ

生き様も男との付き合い方も異なる3人の女の共同生活、その生々しさに女子はきっと共感するはず。でも男の自分は本作の「あるある」を、輪の外側から楽しんだ。まさにドキュメンタリーとして。そうか、女の人ってこんな風に考えていたのか! という新たな学びの連続でした。そしてそんな生々しさの中で唯一、男キャラの鹿谷(処女しか愛せない爽やかイケメン)の現実感の希薄さが、いろいろな毒素を中和していて、一服の清涼剤としてナイスな役割を担っています。

高岡遼 毎年、だましだまし過ごしていた花粉シーズン。今年ついにコップが溢れてしまったようで、テッシュを小脇に抱え続ける新生活を迎えました。

 

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