【ダ・ヴィンチ2017年8月号】今月のプラチナ本は 『あるかしら書店』

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あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

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『あるかしら書店』

●あらすじ●

「あるかしら書店」は〈本にまつわる本〉の専門店。店のおじさんに「○○についての本ってあるかしら?」と聞くと、「ありますよ!」と出してきてくれる。月明かりで光るインクで書かれた〈月光本〉などのめずらしい本や、欲望まるだしの本のカバーを変えてくれる〈カバー変更器〉などの読書にまつわる道具、本にまつわる仕事や、本にまつわる名所などなど……。「あったらいいな」と思う本や読書グッズが手に入るあるかしら書店には、今日もいろんな理由を胸にしたお客さんがやってくる。「BOOK OF THE YEAR 2016」(『ダ・ヴィンチ』2017年1月号)に描き下ろされた「大ヒットしてほしかった本」も収録。

よしたけ・しんすけ●1973年、神奈川県生まれ。2013年に刊行した絵本デビュー作『りんごかもしれない』で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、『りゆうがあります』で第8回同賞第1位、『もうぬげない』で第9回同賞第1位の三冠に輝く。『このあとどうしちゃおう』で第51回新風賞など受賞作多数。著書に『なつみはなんにでもなれる』、子育てエッセイ『ヨチヨチ父―とまどう日々―』など多数。

『あるかしら書店』

ヨシタケシンスケ
ポプラ社 1200円(税別)
写真=首藤幹夫

編集部寸評

 

あなたの妄想機能は錆びついていませんか

目標を立て、手段を検討し、スケジュールを組む……現実的な思考ばかりに囚われて数十年を過ごしてきた中年にとって、「ただひたすらに空想する」という本書の爽快さたるや! 幼いころには自分も使っていたはずの、脳内の夢想・妄想機能。今やそれがすっかり錆びついており、この本の楽しさも最初はよくわからなかった。でも、なんだかきらきらした感じがする……読み返すうち、長らく放置していた「わくわく」にエンジンがかかり始めた。「○○についての本って あるかしら?」「これなんかどうかしら。」お客と店主のシンプルなやりとりから、どれほどの想像が広がることか。それも、「役立つ」「モテる」なんていう実利を求めない、純粋に「楽しい」想像。出来ることを増やしているつもりで減らしてきた、すべての大人におすすめします。

関口靖彦 本誌編集長。本書以外にも、妄想機能の錆落としとして、怪談実話の本を愛用しています。最近では、平山夢明さん久々の怪談実話新刊『怪談遺産』(竹書房)がガツンと来ました。

 

物体ならではの「本」のおもしろさを再発見

本は「読む」もの。たしかにそれだけだったら、電子書籍でも十分。でも、こんな楽しみ方もあるんですよ! そんなことを教えてもらった絵本だった。ヨシタケさんは、さまざまな立場になって、本という宝物を味わい尽くす術を考え抜いてくださったに違いない。『本が好きな人々』といったリアルあるあるネタや、『書店婚』(これはすでに誰かやっているのでは?)といった身近な話から、ここからさらにストーリーが紡げそうなファンタジーテイストの『水中図書館』や『世界一周読書の旅』、書店や出版界から切望間違いなしの『文庫犬』など、本が好きな人はもちろん、興味がなかった人でも思わずクスッと微笑んでしまうようなユニークな切り口がたくさん。最終章の『大ヒットしてほしかった本』は、出版に関わる人ならきっと涙なしには読めない。

稲子美砂 プロレス特集を担当。ほぼ知識がない私でしたが、レスラーの方、ファンの方からお話を聞くたびに元気をいただき、それと同時にズブズブとプロレス沼に。今夏はぜひプロレス体験を!

 

いろんな角度から本を愛でる

本好きなら、にやにやうんうん言いながら読んでしまう本。弊誌のブック・オブ・ザ・イヤーで描いていただいた「大ヒットしてほしかった本」はもちろん好きだけど、個人的には「ラブリーラブリーライブラリー」が大好きです。その3で描かれている、分別のある本たちのおかげで、我々の心とプライバシーは守られていたのか…!となんども読み返して癒されました。そして見返しに描かれたいろんな形の本屋さん。国や時代を勝手に妄想して至福のぼんやり時間を過ごせました。

鎌野静華 川原泉さん特集取材のため、お仕事場のある鹿児島へ。初鹿児島でしたが、自然もゴハンも街並みも最高でした~。今度は遊びに行きたい!

 

ヨシタケさんの「ありますよ!」劇場

この「あるかしら書店」、本当にあったらどうだろう? 店のおじさんに「あるかしら?」と尋ねれば、たいてい「ありますよ!」と応えてくれる。人に何かを聞くのって勇気がいるけど、それを引き出しているのはこのおじさんだ。ヨシタケさんの作品は「なんかこんな本読んでさー」と気軽に人に話したくなりますよね。そこはやっぱりリンクしていて、そういう伝えたい気持ちを許してくれるのがヨシタケさんの本だと思うし、本書はそんなヨシタケさんの凄さを知る一冊でもあった。

川戸崇央 自分にしては珍しく色んなものにハマった一カ月。ハーゲンダッツ・クリスピーサンド、サラダチキン、スマホ・アプリ、ショパン。全部片仮名だ。

 

本作りへの想像もまた広がる

「こんな本あるかしら?」というお客さんに、「ありますよ」と様々な本を出してくれる店主。かわいく描かれる妄想から飛び出した「本」を眺めながら、編集の身としては、「このアイデアいいな」という、未知の「本作り」への想像まで広がった。常識にこだわらず可能性を広げるべきなのかもなあ、と。そして、いま小説の編集進行真っ只中の私は、最後、「え、あるの?」と食いついて……ページをめくって笑ってしまいました。本への愛がたくさん詰まっている本です。

村井有紀子 今年に入ってから本作りに携わることが多く、気づけば春になってた、という感覚でしたが、きっと夏もあっという間に通り過ぎてく予感……。

 

あなたは本のどこが好き?

本が大好きで選んだ今の職業、お陰さまで充実した毎日だが、趣味を仕事にしてしまう常か、時々忘れてしまうことがある。そういえば自分は本のどこが好きだった? そんなモヤモヤをこの作品は晴らしてくれた。本は単に印刷された文字情報ではなくて、触れて、嗅いで、読んで、あじわうことで未知の世界に自分をぶっ飛ばしてくれる想像力の発射台だったのだ。この本が秘めた自由な可能性を、ヨシタケさんは「あるかしら」という言葉にこめて描き出してくれている。

高岡遼 作中に登場する本はどれも読んでみたいものばかりだが、個人的なイチオシはカバーの見返しに登場する『バタ足入門の本』。発想が素敵すぎる。

 

自分ならどんな本を買いにいくのかな?

「こんなにたくさん本があるのに、読みたいものがわからない」ことがしょっちゅう。だから「こんな本あるかしら?」と明確に聞けるお客さんが、なんだかとても眩しかった。今の私ならどんな本を「あるかしら?」と言うだろう。読んでいると次第にそんな問いが浮かび、いつのまにか「自分が本に何を求めているのか」を考えさせられている。あまりにも多くの本が生まれては、すぐに見えなくなっていく時代に、自分にとって本とは何かを考えさせてくれる1冊でした。

西條弓子 私のスマホは「あるかしら?」と尋ねる前に欲望ジャストな本をレコメンドしてくれます。ダイエット本ばかり薦めるな。

 

 



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