Cover Model 荒木飛呂彦×岸辺露伴 2012年8月号

Cover Model 紹介

更新日:2012/12/28

Cover Model荒木飛呂彦×岸辺露伴

25年言い続けてきたから、
「人間讃歌」に説得力があるのかも(笑)



マンガ家が本誌の表紙に登場したのは、創刊以来初めてだ。
しかも、マンガ家が自ら生み出した人気キャラクター
「岸辺露伴」とのツーショット。
「ホントに畏れ多いです。『ダ・ヴィンチ』の表紙を飾ってきた
みなさんに対しても、露伴先生に対しても(笑)」

やわらかい笑顔を見せる荒木飛呂彦は、1960年生まれ、宮城県仙台市出身。
1987年に連載開始した大河マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』が、今年25周年を迎えた。
25周年記念の「JOJOイヤー」となった今年は、各種イベントが目白押しだ。
7月28日より、自身初となる大規模展覧会
荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町」が仙台で開催される。
「自分はアウトサイダーで、正統派じゃないなって
ずっと思ってたんですよね。
こんなに大きな展覧会をさせていただけるなんて、
25年前を考えたらありえないですよ。
びっくりしています」
時代が変わって価値観が新しくなったから、ではない。
荒木飛呂彦の筆が時代を変え、読者の価値観を鮮やかに変えたのだ。
それが可能となったのは、25年間ブレずに、
JOJOを描き継いできたからではないか。
描き継いできた“厚み”が、JOJOのテーマに特別なリアリティを
与えているのではないだろうか。
「自分にはもう描くものがなくなったと思いこむのが、
マンガ家にとって一番よくないんですよ。
自分の限界を自分で決めちゃうっていうのが、一番よくない。
なんでも同じなんじゃないですかね。
“できる”と思っていれば、本当にできる。
JOJOを25年間描いてきた人間として、
確信をもって言えるのはそのことですね。
……ただねぇ、今描いている『ジョジョリオン』は、
これから何が起こるのかが自分でも分からなすぎて、
本当に最後までちゃんと描けるのか不安なんですよ(笑)」

advertisement

そんな荒木飛呂彦さんが選んだ本は——

  • 『チョコレート工場の秘密』
  • 『ロアルド・ダール コレクション[2] チョコレート工場の秘密』
    ロアルド・ダール/著 クェンティン・ブレイク/絵 
    柳瀬尚紀/訳
    評論社 1260円
  • 『ミザリー』
  • 『ミザリー』
    スティーヴン・キング/著 矢野浩三郎/訳
    文春文庫 1000円
    • 表紙撮影はお気に入りの本を持つのがルールだが、
      今回、2冊持参してくれた。ともに海外文学だ。


      『ロアルド・ダール コレクション[2] チョコレート工場の秘密』

      貧しいチャーリー少年が暮らす町には、世界一広大で、世界一有名なチョコレート工場があった。ある日、工場の持ち主で発明家のワンカさんが、5人の子供を招待すると発表。招待状の入ったチョコレートを求めて、世界中が大騒ぎ。さてその工場の内部とは……。2005年、ジョニー・デップ主演&ティム・バートン監督で実写映画化され(映画版タイトルは『チャーリーとチョコレート工場』)、キッチュな世界観が話題を呼んだ。
      「ワクワク感とスリルと語り口が大好きで、マンガ家になる時は“こういうマンガを描きたい”と思ってましたね。推理小説的な謎も、キャラクターも良いし、ちょっとグロテスクな部分もあるのがいい。デビュー前の自分にとっての目標でもあり、これが基本みたいな感じです」(荒木飛呂彦 談)


      『ミザリー』

      コロラド州の片田舎で自動車事故にあい、半身不随になった流行作家のポール・シェルダン。元看護師の愛読者アニーに発見され自宅へと連れて行かれるが、そこで彼女に監禁される。ナンバーワンの愛読者である自分のために、「ミザリー・シリーズ」の新作を書け。シェルダンは不条理な暴力にさらされながら、筆を走らせる……。1990年、ロブ・ライナー監督により映画化。新装文庫版の巻末解説は、綿矢りさ。
      「僕が思うサスペンスの、完璧な形ですね。主人公がどんどんどんどん追いつめられていく過程が本当に面白い。しかも作家というのは、追いつめられてこそ傑作を書くものなのだってストーリーがねぇ、勇気が湧いてきます(笑)。人間の真実はここにある、この残酷さこそ人間なんだって思うと、どこか救われるんです」(荒木飛呂彦 談)