Cover Model 松坂桃李 2012年11月号
更新日:2012/12/28
Cover Model松坂桃李
受け止めたのは小さくて特別な幸せ
松坂桃李さんの初の単独主演作となったのは、
辻村深月原作の映画『ツナグ』。
たった一度だけ、死んでしまった人との再会を叶える仲介人“ツナグ”
の歩美を演じている間は、日常との切り替えが困難なほど、
命をテーマにした作品の世界に入り込んだという。
それは心の限界への挑戦でもあった。
「ふとニュースから流れてくる死亡事故が、そこだけ切り取られた
ように耳に入ってくるんです。
そして亡くなった方は、どんな想いを抱きながら逝ったのか、
残された人は、今どんな気持ちでいるのかと考え込んでしまう。
メンタル的にどんどん削られていってしまったある日、
撮影を終えて、家に帰った時、突然、悲鳴のようなものが
口を突いて出てきてしまいました。“もうムリだ!”って。
親も友だちも、当たり前のようにそばにいるけれど、
別れは突然やってくるかもしれないという現実に無意識に
なっていたんですね。
一緒にいる時間のほうが、実は奇跡のように特別なもの。
そこに流れている、あたたかくて小さな幸せを、
この作品と関わったことで感じ、受け取れるようになったことは、
僕にとって大きかった。
映画を通し、この想いをたくさんの人に届けたい」
そんな松坂桃李さんが選んだ本は——
『空白』
井上雄彦 スイッチ・パブリッシング 1470円
2012年3月よりついに連載を再開した『バガボンド』。体調不良による1年半の休載期間中の、井上雄彦の思考と行動が、みずからの言葉で刻まれた一冊。ツイッター上で公開する「Smile」シリーズ、東本願寺の依頼で制作された屏風「親鸞」など、他のワークを精力的に進めるなかにあった、ひとつの創作の、沈黙の過程を辿る。
「武蔵は井上さん自身なんだな、と感じました。描けない、それでも自分はその先を描かなくてはいけないという難しいライン上で苦悩し、自我を見つめ、達観していく様が。井上さんが捉え、描き続ける武蔵の心境が、この本を読んだことで、さらに深く自分の中に入り込んできました」(松坂桃李 談)