ジブリ最新作『風立ちぬ』のヒロイン役・瀧本美織さんにインタビュー

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更新日:2013/8/13

 2013年7月20日(土)に上映が始まるジブリの新作『風立ちぬ』。この作品は零戦の設計者・堀越二郎の半生を描く映画で、“「エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明が主人公を演じる” “これまでのジブリで一番大人の恋愛が描かれる”といった点で注目を浴びている。今回はこの作品のヒロインで、病を患った少女・里見菜穂子役である女優の瀧本美織さんに話を伺った。

瀧本美織

瀧本美織
たきもとみおり●1991年10月16日生まれ、鳥取県出身。2010年1月に公開された映画「彼岸島」でヒロインに抜擢され、女優デビュー。同年9月~放送されたNHK連続テレビ小説「てっぱん」でヒロイン・あかりを演じる。11年には「美男(イケメン)ですね」で民放連続ドラマ初主演を果たす。初主演の時代劇「妻は、くノ一」(6月からNHK総合で再放送中)では凄腕の忍び役を熱演。また初主演映画『貞子3D2』が8月30日より公開する。
瀧本美織オフィシャルブログ「Miori Takimoto」

二郎と菜穂子は古きよき日本の夫婦。その関係性に憧れます

――菜穂子役に決まったときの率直なお気持ちを教えてください。

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瀧本:オーディションに行ったその場で宮崎監督に「オッケー、これからよろしく」と言われて。まさかその場で決まるとは思っていなかったので驚きましたし、うれしくて泣いてしまいました。

――宮崎監督とのやり取りで、特に印象深いことを教えてください。

瀧本:あまり指示は出されず、自然体でやらせてもらいました。ただそれでも宮崎さんと鈴木(敏夫)さんが「菜穂子、よかったね」と話しているのを聞いたときは、すごくうれしかったです。

――演技されるうえで難しかったことはありますか。

瀧本:毎日繰り返されている日常の作業をしながらセリフを言うのが難しかったです。洗濯物を畳みながらとか、旦那さんが帰ってきたときに上着を取るとか。

――菜穂子はどういう印象ですか。

瀧本:好きになってしまいそうなくらい素敵な女性ですね。凛としていて、きちんと自分の運命や立場を受け入れて、しっかりと生きていて。

――菜穂子とご自身で似ている部分はありますか。

瀧本:明るいところは似ているかもしれませんが、生きた時代が違い過ぎますし、私は大きな病気をしたこともなくて……病院では点滴をしたことがあるくらいです(笑)

――二郎と菜穂子の関係性についてどう思いますか。

瀧本:古きよき日本の夫婦に見えました。旦那さんは自分の夢を追いかけていて、奥さんはそれを献身的に支えて。憧れますね。

――二郎を演じられた庵野さんの印象はいかがでしたか。

瀧本:元々、何かの監督だとしか知らなかったんです。『新世紀エヴァンゲリオン』もかなり世代がずれているので……。なので実際にお会いした時は「背が高いなぁ」くらいでしたが、声を初めて聞いたときに、若々しい青年のような声で驚きました。

――アフレコ現場はどんな雰囲気ですか?

瀧本:アフレコ中はシーンとしていて、息をするのも緊張をするくらいです。でも庵野さんから「今の菜穂子のパートよかった」、「宮さん、俺は1個前のほうがよかった」とか言ってくださって。それに宮崎さんも「僕も前のほうがよかったと思います」と答えてくれたりして、監督が2人いるようで面白かったです。

――演じていて印象に残っているシーンはありますか?

瀧本:結婚式があるんですけど、すごい映像が綺麗で、見とれてしまいました。結婚式を行なってくれた夫婦にお礼を言うところで感極まりましたね。

――アフレコ時に未完成ではあるものの絵が動いていたそうですが、感想はいかがですか。

瀧本:震災や戦争といった厳しい状況のなかでも、みんなが自分に与えられた時間の中で、いきいきと清々しい印象を受けました。「自分も地に足をつけて生きていかないといけないな」という力強いメッセージを受け取りました。

――周囲の反応はいかがでしたか。

瀧本:ずっと秘密にしていたし、(インタビュー時は)まだ携帯を見ていないので友達や知人の反応はわかりません(笑)。ただ両親にだけは報告をしたのですが、「ジブリってすごいねー」とよろこんでもらえました。

――最後に、この映画をどんな人に観てほしいですか。

瀧本:特定の対象というのはなく、老若男女問わず観てほしいです。世代ごとに感じることや受け取り方も違いそうな気がしますし、きっと背中を押してくれる作品だと思います。

――ありがとうございました。

『風立ちぬ』

『風立ちぬ』

原作・脚本・監督/宮崎駿 音楽/久石譲 出演/庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎 2013年日本 126分 配給/東宝 7月20日(土)全国ロードショー

宮崎駿の「崖の上のポニョ」(2008)以来5年ぶりとなる監督作。零戦設計者として知られる堀越二郎と、同時代に生きた文学者・堀辰雄の人生をモデルに生み出された主人公の青年技師・二郎が、不景気や貧困、震災などに見舞われ、やがて戦争へと突入していく1920年代という時代をどのように生きたのか、その生きざまや薄幸の少女・菜穂子との出会いなどを描く。
© 2013 二馬力・GNDHDDTK

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宮崎駿監督最新作「風立ちぬ」のストーリーを完全収録したビジュアルガイド。鈴木敏夫プロデューサーと菜穂子役・瀧本美織さんの対談、時代背景の解説など、主人公・二郎たちの想いを追いつつ、映画の感動を再体験できる。主題歌の『ひこうき雲』を“荒井由美”の名の時代に歌った松任谷由美さんのインタビューも収録されている。