“鉄道ラノベ”がいま熱い!ブームの火付け役が語るその魅力

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更新日:2014/1/29

みなさんは、“鉄道ラノベ”という言葉をご存知でしょうか? “鉄道”と“ライトノベル”が融合したこれまでありそうでなかったこのジャンルが、実は今注目を集めているんです!

火付け役はゲーム業界から小説家に転身したという異色の経歴を持つ豊田巧氏。著書『RAIL WARS! -日本國有鉄道公安隊-』はアニメ化も発表されたので、知っている方もいると思いますが、同氏は、昨年末にゲーム会社・サクセスが新たに立ち上げたライトノベル専門レーベル『SuperLite文庫』からも、鉄道旅行ラブコメ『君(×に)とのりたいっ!』をリリース。鉄道ファンもうなる新たなジャンル“鉄道ラノベ”のトップランナーとして大活躍中です。

 

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そこで、今回はそんな“鉄道ラノベ”を次々と生み出す豊田氏に直撃インタビュー! 声優の養成所に通う新人声優・高野麻里佳(こうのまりか)が、“鉄道ラノベ”と“鉄道”の魅力について、また氏の最新作『君(×に)とのりたいっ!』について、たっぷりとお話を伺いました!

 

■“鉄道”と“ラノベ”が融合! その相性は?

──アニメ化発表で話題の『RAIL WARS! -日本國有鉄道公安隊-』、どんなきっかけで書き始めたんですか?

豊田:創芸社さんがラノベを始めるって聞いて、鉄道に絡めたアイディアを3つくらい持っていったんです。そしたら一番過激なのが選ばれました。鉄道ものってなかなか爆破ってできないんですよ。でも国鉄時代だったらいいかなって。鉄道ファンが集ると、よく「国鉄がまだ残っていたら……」っていう話をするんです。それくらい国鉄好きな人が多いので、そこに焦点を絞りました。でも、こんなマニアックな内容のものがうけて、まさかアニメ化までされるとは思っていませんでした。

豊田巧
とよだ・たくみ●元ゲーム会社の宣伝プロデューサーで、数多くの電車運転ゲームを担当する。2011年、集英社より『電車で行こう!』シリーズで小説家デビュー。主な著書 に『RAIL WARS! -日本國有鉄道公安隊-』シリーズ (創芸社)、小説『宇宙戦艦ヤマト2199』シリーズ(マッグガーデン)、『君(×に)とのりたいっ!』(サクセス)などがある。

──そんな豊田先生が鉄道を好きになったきっかけを教えてください。

豊田:うちの父が撮り鉄で、兄が乗り鉄だったんです。兄なんて、日本全国の鉄道を乗り潰したような人でした。そんな家で育ったので、鉄道のことについて詳しいのが普通なんだと思っていました。でも僕なんて、鉄道ファンの中ではライトな方ですよ。本当の鉄道ファンの人たちには「君は何も知らないよね」って言われます。

──それは意外です! 作家さんになる前はゲーム会社の広報をされていて、そこでも鉄道ものに携わっていたんですよね。

豊田:そうなんですよ。実はミリタリーが好きでゲームメーカーに入ったんですが、その会社がたまたま『電車でGO!』を出して、広報や宣伝を担当することになって。そしたらユーザーの方々もものすごく濃くて知識が豊富だったので、僕もまた父や兄のことを思い出しながら鉄道について勉強し始めたんです。

──なるほど。そんな先生が、なぜ小説を書き始めたんでしょうか?

豊田:ゲーム会社をリストラされたのがきっかけです。その後、「ひとりでゲームクリエイターとして食べていってやる!」って思っていたのにどこからも声がかからなくて、ゲームの仕事も宣伝の仕事もなくて……。毎日暇でずっと飲んでいたら、たまたま飲みの席である編集プロダクションの方から「何か本書けないの?」って聞かれたんです。僕、小説なんて一行も書いたことなかったけど、その時仕事がなかったので「書けますよ」って言っちゃって。子どもたちがトラベルミステリーを解いていく児童書を提案したら「面白いね!」って話が進んでいきました。

──では、小説家を夢見ていたというわけではないんですね。

豊田:そうなんです、僕は本当はゲームクリエイターで一生生活するつもりだったんです。『マリオ』や『ドラゴンクエスト』を作った人みたいになる予定だったんですが、何をどこで人生間違ったのか、小説家に……。これまでずっと理系人生だったのに、不思議なものですね。

高野麻里佳
こうの・まりか●2月22日生まれのA型。マウスプロモーション附属養成所に所属。代々木アニメーション卒。憧れの声優は大谷育江さん。twitter:@marika_0222
blog:まりかさんのブログ

──ライトノベルと鉄道を組み合わせてみた手応えは?

豊田:僕、これまでライトノベルって知らなかったんです。「え? 小説ってそんなに細かい区分けがあるの?」って思いました。でもライトノベルと鉄道の相性はすごくいいです。ライトノベルは学校から始まるファンタジーが舞台となるものが多いのですが、今の読者の方は旅行へ出かけることが少ないので、鉄道に乗って日本の色々な地域へ出かける鉄道ものは、ある意味ファンタジーのようだと、よく感想をいただきます。

──では、豊田先生にとって“鉄道の魅力”とは?

豊田:やっぱり誰でも日本中どこまでも行けることですね。大人でも子どもでも切符さえあれば乗れますから。

──初心者におすすめな鉄道の楽しみ方はありますか?

豊田:旅行ってお金がかかるって思ってる人が多いんですが、お金をかけないで鉄道に乗る方法もあるんですよ。130円で関東一周できるんです。

──えっ!? そうなんですか?

豊田:はい、この範囲はどのルートを通って目的の駅に行っても同じ値段ですよっていう範囲があるので、隣の駅に行くのに、普通に1駅で行くんじゃなくて、逆方向に行ってぐるっと大回りして、隣の駅に戻ってくれば、130円でずっと電車に乗っていられます。駅が重なっちゃいけないのと、駅から出てはいけないという制限はありますけどね。一筆書きルールを間違えないように気をつければ問題ありません。

──なるほど! では、おすすめの路線ってありますか?

豊田:八高線とかおすすめですね。東京の八王子から群馬県の高崎まで行く路線です。高崎の改札内で駅弁を買って、別ルートで戻ってくる旅なんて、いいと思いますよ。しかも高麗川以北は電車じゃなくてディーゼルですから、とってもいい雰囲気ですよ。

──えええー! 驚きです! 先生はやっぱり、小説のアイディアも電車の中で思いつくんですか?

豊田:そういう時もありますね。でも僕の小説は、アイディアを練って書いているっていうんじゃなくて、自分の頭の中で流れているアニメーションを文章に書き写している感じなんです。だから最初にキャラクターさえしっかり作ってしまえば、あとは勝手にストーリーが進んで事件が起きていく。そんな中でのキャラクターたちの会話を、横で眺めながら書き写す作業をしているだけですね。

 

■豊田先生の最新作『君(×に)とのりたいっ!』に迫る!

──では続いて、『君(×に)とのりたいっ!』を書いたきっかけを教えてください。

豊田:高校生の日常の中にある“旅行感”みたいなのを書きたかったんです。ずっと修学旅行しているみたいな部活があったらいいなって思って。あとは、ラノベを書き始めた時に「今は部活ものしか当たらないっすよ!」と言われていた影響もあります(笑)。

──なるほど(笑)。本編には鉄道の知識が盛りだくさんで、寝台列車に乗って出雲大社に行きたくなりました!

豊田:そう読者の人が思ってくれるといいなと思っています。僕は小説の舞台として書いている場所には、必ず同じルートを実際に取材に行っているので、本編のまま行けばちゃんと旅行できますよ。時刻表も、何番線ホームに着くかも。寝台列車・サンライズ出雲の車内もあのままですしね。旅行に行けない人にはこの本を読んで旅行している感が伝わればいいし、興味を持ってくれて旅行に実際行ってくれればなお嬉しいですね。

──その他にこだわった点はありますか?

豊田:この作品には自分の旅先での経験をかなり反映させています。旅行って、行くと結構不思議なことがあったりするんですよ。今ラノベを呼んでいる中高生の人たちって、なかなか旅行に行かないので、そういう経験も少ないと思うんです。出雲界隈ってUFOがよく目撃されることで有名なエリアなんですが、そこから、もしかしから現実に起こるかもしれないことを描いているんです。小説なのでもちろん架空のお話なのですが、鉄道・旅行だったらあるかもしれないリアリティをなるべくたくさん描いて行ければと思っています。

──豊田先生、ありがとうございました! 続編も期待しています!

 

■ゲーム会社が立ち上げた新レーベルに大注目!

豊田先生の最新作『君(×に)とのりたいっ!』は、ゲーム会社・サクセスが新たに立ち上げたライトノベル専門レーベル『SuperLite文庫』にて連載されていた作品。こちらのレーベルはWebサイト上で毎週作品が無料配信され、連載開始時から、フルカラーイラストとWeb未掲載の後日談が収録された電子書籍が発売される面白い仕組みです。創刊ラインナップも、ファンタジーあり、妹ものあり、学園バトルラブコメありとバラエティに富んだ内容になっています。

 

ラノベ戦国時代と言われる今、なぜWeb連載&電子書籍専門のレーベルを立ち上げたのか!? 『SuperLite文庫』プロデューサー・鈴木政幸さんに伺いました。

「これまでサクセスが提供してきたアドベンチャーゲームのユーザーはライトノベル読者層と非常に近い嗜好を持っています。そんなユーザーに対して手軽に作品を提供していきたいという思いから、『SuperLite文庫』を創刊したんです。……と、かっこいい事を言いましたが、正直にいえば、僕、アニメとかコミックとか、ラノベとか大好きなんですよ、はい(笑)」

ではなぜ電子書籍での販売に限定したのでしょうか?

「最近のライトノベルは、表紙も非常に萌え萌えしており、書店での購入を躊躇する方もいると思います。しかし電子書籍なら問題ありません。ライバルはネット通販ですが、買ってすぐ読める即時性などは電子書籍にはかないませんからね。電子書籍なら本の保管場所にも困りません! さらに、作り手側としても冒険的な作品を出版しやすくなります。なので『SuperLite文庫』文庫では【絶対!どたばた主義!!】を標榜し、コミカルで冒険的なジャンルを狙っていきたいと思っています。完全に“俺得”ですね!」

なるほど! これからも『SuperLite文庫』から面白い作品が続々と生み出されることを楽しみにしています。豊田先生の『君(×に)とのりたいっ!』続編にも期待ですね!

(インタビュー=高野麻里佳、編集=福島槙子、撮影=山本哲也)
 

■レーベル作品紹介

『君(×に)とのりたいっ!』

豊田巧/サクセス

「長野電鉄屋代線・断固存続研究部」廃部の危機!(まあ既に廃路線だが…) とにかく部活の多い我が校でいきなり始まった部活統合計画!まるでどこかのラノベのごとく無節操に設立された部活に新理事長と生徒会長の魔の手が伸びる! とりあえず一まとめにされた鉄オタ1人と4人の残念美少女が己の部活存続をかけ(各自勝手に)立ち上がる!

『ケンと魔砲と剣とマホ』

富沢義彦、吉岡榊/サクセス

網手県警のしがない巡査、片倉が拾った1本の剣、そして彼の前に現れる美少女。その剣の名は「ショユー剣」。その剣を所有する者に特殊な能力を与えるというが…「キョジュー剣!」「サイクツ剣!」振りかざす剣から繰り出される技は…ダジャレ? 権利と法が、ダジャレ魔法として炸裂する! 実力派アニメ脚本化がライトノベルに初挑戦の、もう意味がわからないよファンタジー開幕!

『妹は幽霊ですが、何か?』

仲野ワタリ、南条アキマサ/サクセス

俺には三歳で亡くなった妹がいる。でも彼女は今もすぐそばに居て、15歳に成長さえして…つまり…幽霊なのである。その妹から離れる為、俺は大学入学を機会にこれから単身東京へ赴くのだ。そこは伯父が経営するシェアハウス。入居者は全員女性ということなのだが…え? 沙羅、お前付いてきちゃったのか? 禁断の妹らぶコメ、ついに登場!

『君が死ぬほど君が好き!』

番棚 葵、平尾 リョウ/サクセス

俺は自慢じゃないが非モテ系男子としての自覚がある。そんな俺が美少女4人から告白?これはなにかの間違いだ!そうだ陰謀に違いない!! しかし現実はさらに過酷なものだった…全員、憑依型宇宙人に憑り付かれてる?え?俺襲われてる!ってか殺される寸前じゃないか! 宇宙人の愛情表現は恋人を殺すこと!? 正統派(?)学園バトルラブコメ登場!

 

■『SuperLite文庫』公式サイト

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