声と言葉で物語を紡ぐ声優 花澤香菜インタビュー
更新日:2014/2/21
本誌でも連載中の新海誠監督作品『言の葉の庭』で、主人公が想いを寄せる女性・ユキノを演じた声優・花澤香菜さん。読書家としても知られる彼女に、おすすめの一冊と〝言葉〟に込める想いをうかがった。
はなざわ・かな●2月25日生まれ。東京都出身。2004年、『LAST EXILE』で声優デビュー。06年『ゼーガペイン』で初ヒロインを演じる。現在は『となりの関くん』(横井るみ役)、『ニセコイ』(小野寺小咲役)などに出演。ソロでの音楽活動もおこなっている。
花澤香菜オフィシャルサイト
「まだ子役の事務所にいた14歳の頃、初めてアニメのオーディションを受けさせていただいたのが、声優をはじめたきっかけです」
14歳で声優デビューを果たし、近年では年間20作品以上のアニメ作品に出演する人気声優の花澤さん。そんな花澤さんも、デビュー当時は苦労したようだ。
「なかなか思うように芝居ができず、反省ばかりでした。でも、スタッフさんや先輩が優しく、自分を必要としてくれたので、声優を続けたいと思うようになって。『ぽてまよ』という作品に出会ったことも大きいですね」
2007年に放送された『ぽてまよ』は、花澤さん演じる謎の生物ぽてまよと主人公の森山素直の交流を描くほのぼのギャグストーリー。
「アドリブを求められる作品だったので最初は悩みましたが、自分で考えていくうちに楽しくなっていって、〝声だけでキャラクターを表現すること〟の面白さを知ることができました。声だけでいかに表現できるかというのは、いまでも大切にしていることです」
言葉を紡ぐ大変さと面白さを実感した
読書家としても知られる花澤さん。なかでも思い入れの深い一冊が川上弘美さんの『パスタマシーンの幽霊』。恋にからめとられた女性の心理を描く短編集だ。
「川上さんの大ファンなんです。特にこの作品は優しいタッチで描かれていながらも、チクリと心に刺さる痛みもあって、ものすごく共感します。お気に入りなのが、『染谷さん』。落ち込んだときに卵をいくつも割って、痛快な気持ちになるというお話。私は、もやもやすると手を洗うことが多いので(笑)、親近感が湧きました」
また、川上さんの作品を「シンプルな言葉で柔らかい世界を創り上げているところに圧倒される」と評する花澤さん。セカンドアルバム『25』の制作を経て、そのすごさを如実に感じたという。
「今回、4曲の詞を書かせていただきました。言葉を紡ぐことの難しさを改めて実感しました。もともと自己表現が苦手なんです。でも、自分の気持ちをストレートに伝えたいと思って。そういう意味では、過去のシングルやアルバム以上に、〝私の思い〟が詰まっていると思います。大変でしたが、自分の思いを表現する面白さを知ることができたので、機会があればまた挑戦したいです。
発売後にイベントも開催するのですが、女性限定というのが初の試みなのでとても楽しみです。会場も自分で選んだんですよ。ファンの方と距離の近いものにしたいなと思っているので、ちょっとおしゃれして、友達に会いにくるような気持ちで来てほしいです」
取材・文=岩倉大輔 写真=NAOKI LUCKMAN(LUCKMAN PHOTO)
花澤香菜さんオススメの一冊
『パスタマシーンの幽霊』
川上弘美 新潮文庫 578円
恋人のパスタマシーンに別の女の存在を感じた唯子が、別れを決意するにいたるまでを描く表題作や、海の穴に住む女の子が男のもとを転々とする「海石」など、全22編の短編を収録する。恋の迷いを描きながらも、さらっとしていて心地よい読後感が残る短編集。