非日常の官能に耽ってデトックス! 知的な女性に贈る「日活ロマンポルノ」のススメ(後編)

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更新日:2014/9/29

 1970~1980年代、男性たちのために作られた「日活ロマンポルノ」。前半では、”ポルノ”という扇情的なネーミングとは裏腹に、良質な映像美、性と人間というテーマに迫るまでのストーリー性、そして美しい女優たちの醸し出すリアルな色気など、女性をも酔わせる官能コンテンツであることを、女性のための官能小説レーベル「fluer」編集部の面々とともにひも解いてきました。後半では、さらに「日活ロマンポルノ」のエロスがもたらす効能に迫ってみましょう!

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参加者

日活ロマンポルノには、「性を包括した大人の恋愛」がある

【編集H】一般的に、男性用の官能コンテンツは即物的である一方で、女性用のそれはストーリー性がとても重要とされていて、Fleur編集部でも「官能はステキなラブストーリーあってのもの」と考えているけど、すごく共通するものがあると思った。

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(C)1983日活株式会社

【G】私が不倫を扱った『ダブルベッド』を観て、性の価値観について考え込んでしまったぐらいに…。「fluer」では純愛こそが女性を満たす官能につながるという考え方でコンテンツを提供しているし、私もそうだと思う。だけど、『ダブルベッド』では男女が魅かれ合ってセックスするまでの経緯には説得力があるから、「何が理由でこういう結果になったんだったんだろう?」と考えてしまった。

(C)1976日活株式会社

【営業M】花芯の刺青 熟れた壺』では、谷ナオミさん演じる女性が、結局は少女時代に愛した歌舞伎役者への一途な思いを捨てられない。その結果、自分の体に入れ墨を彫ったり、自慰行為にふけったりするんですよね。

(C)1983日活株式会社

【編集H】美女縄地獄』も、高倉美貴さんの美しさが圧倒的すぎて、こんな女性なら男性を狂わせてしまうのかもしれない…という妙な説得力がある。拉致監禁から愛が芽生えるという発想自体は男性のファンタジーだけれど、戦時下という時代設定が男性の精神をギリギリに追い詰めたのかなんて想像も手伝って。

【G】エロスも、ノーマルなセックスから濃厚なSMプレイまでさまざま。そこは“日活ロマンポルノ”の名に恥じない表現が堪能できる。

【営業M】もちろん、今の男性用AVのように行為そのものだけを切り取って、性器や結合部、女性の顔だけを写す…といったものではない。構図や陰影の妙も、リアルながら風情のあるエロティックさを演出していて。

【編集H】大人の恋愛であれば、性は必ず包括されているもの。それをきちんと描くという点では「Fleur」ととても近い。映画も小説も究極は人間を描くもので、人間を描くときに性は切り離せない。そのさまざまな性の形を一つ一つのパッケージに閉じ込めてあるのが、「日活ロマンポルノ」なんじゃないかな。

 

カルチャー好きな知的女性に“日活ロマンポルノ”をすすめたいワケ

【G】日活ロマンポルノって、改めて不思議だよね。性や愛といった根本的で普遍的なテーマはありながら、リアルになりすぎない世界観や舞台設定で描かれているから、フラットな目線で今を見つめ直したり、愛の本質について考えたりすることができる。

【営業M】ラインナップも豊富ですしね。拉致監禁するほどの愛があったり、不倫や浮気があったり、プレイとしての性があったり…。

【G】それらを見渡すことで、自分の性や愛や人生観を見つめ直していくと、人生が豊かになるんじゃないかとすら思ったもの。他の作品も、もっと観てみたい。

【営業M】映画だからこそ、男性のファンタジーなんだろうなという性や愛のあり方も、「男性はこういう願望があるのか…」と勉強になったりもしました。

【編集H】受け入れられるかどうかは別として、「これが男性のファンタジーなんだな」って、そういう興味の持ち方もあると思う。AVは男性のフィジカルなファンタジーが描かれているけど、日活ロマンポルノでは男性の精神のファンタジーが描かれているんだよね。

【営業M】確かに…。

【編集H】ともあれ、面白い作品がたくさんあるので、”ポルノ”というハードルや先入観を設けずに、さまざまな女性にまずは一度手に取ってみてほしいな。映画やドラマが好きな方なら間違いなく楽しめるので、新しい選択肢としてオススメ。

【G】もちろん、作品は選ぶ必要があるよね。

【編集H】そうだね。例えば、『ダブルベッド』みたいに今も活躍している俳優さんが出ているものだったり、自分の好きな映画監督が手がけていたりと、自分と何らかの共通項がある作品から観てみるのもいいんじゃないかな?

【G】自分の趣味が反映された作品を選ぶのもいいかも。歌舞伎好きの人は、『花芯の刺青 熟れた壺』がいいかもしれない。歌舞伎が重要なテーマになっているし、美しくてあでやかな着物も見どころだし。

【編集H】近代の文学作品が好きな人にもすすめたいな。谷崎潤一郎作品のように、ちょっと執着する愛情の世界にひかれる人。実際に、谷崎潤一郎や永井荷風が原作を手がける作品もあるしね。

【営業M】自分の体に自信がないっていう人も、ぜひ!自然な肉体美もいいな~って思えるはずです。

【G】体にしろ所作にしろ、女優さんの多様な美しさにも、学ぶべき点はたくさんあるよね。”憧れの女性”の幅を広げてくれること間違いなし!

 

現実から解放されて非日常に浸る! 週末は“日活ロマンポルノ”でデトックスして

【G】今回、6作品を鑑賞してみて、日活ロマンポルノって一種の癒しになるなと思ったんだよね。世界観が完全に非日常的だから、仕事からやプライベートで考えなきゃいけないことから全部解放されて。観終わったときに、フラットな感情になっていたんだよね。

【営業M】わかります! 雑誌で「仕事をがんばっている女性へのオススメ映画特集」とかよくありますが、そういう作品って日常と地続きすぎて、どうしても自分の仕事や恋愛についてフッと考えがよぎる瞬間があるんですよ。でも、日活ロマンポルノはある意味、ファンタジーの世界だから、異次元に連れて行ってくれるんですよね。

【G】すごく疲れてる金曜の夜とか、一切の現実から解放されたいときにピッタリだよね。部屋の照明を暗めにして、お酒を飲みながらほろ酔い加減で世界に浸りたい~!

【営業M】立派なデトックスになりますよ! あと、ストーリーしかり、衣装や映像の美しさしかり、俳優さんの層も厚さしかり、6作品のカラーがあまりに違ったので、見比べてみるのも面白いのかなと思ったんですよ。

【編集H】1本だけ観てもいいし、数本観比べても面白いよね。その場合は、一人で、もしくはパートナーと会わないで過ごす週末もいいかも。日活ロマンポルノは、観やすさも魅力の一つじゃない? 1本が70~80分の作品が多いから、気軽にサクッと観られる。

【営業M】そうですね! 今の映画って2時間半とかの長い作品も多いから、面白くても疲れちゃうことってあるし。

【編集H】非日常を味わいつつ、もちろんエロスも堪能しつつ、インプットもできると思う。本気でのめりこんでしまうようなラブストーリーもあれば、ちょっと笑っちゃうような作品もあるし、ものによっては男性のファンタジーに腹が立つものもある(苦笑)。

【営業M】観たら、何かしら話したくなることは間違いないですよ。

【G】そうそう。ただ、いろいろなことを思うけれど、やっぱりもともと映画の世界で生きてきた職人たちが作り上げたものだから、内容なり映像の妙なりがいいインプットになるんじゃないかな。それに、知らない世界を見ることで、自分の知らない感情や嗜好に気付いたりもできるんじゃないかな?

【編集H】お仕事している女性なら、映画人たちの仕事の「プロジェクトX」的な見方もできるかも。「10分に1回、からみのシーンをどうやって入れてくるんだろう?」「2週間で撮るには、どんなスケジューリングなんだろう」なんて考えても面白い。

【営業M】「10分に1回」は、気になっちゃいますよね。「だから、ここで女同士がちょっとイチャイチャするのか~」とか変に納得したりして(笑)。

【G】AVだと、まずこんな風に「あそこがよかった」「ここがすてきだった」なんて話し合うことはないよね? だけど、ここまで盛り上がれるのが日活ロマンポルノなんだなって。親しい間柄の友人と鑑賞後にわいわい話したり、みんなで鑑賞女子会をしたりしたっていいと思うな。