向井理×斎藤工W主演『アキラとあきら』発売&ドラマ化記念 池井戸潤インタビュー

ピックアップ

更新日:2017/7/3

池井戸潤(原作)×青木泰憲(プロデューサー)対談「ふたりの“AKIRA”ができるまで」

原作小説とドラマは、階堂彬と山崎瑛と同じく、双子の兄弟のような関係!? 互いを信頼し敬愛する原作者とドラマ制作者が、友情と成長の物語、その誕生から完成までを語ります。

(左)あおき・やすのり●ドラマプロデューサー。1969年生まれ。WOWOW制作局ドラマ制作部で「連続ドラマW」ほか数々の制作に携わる。2009年の『空飛ぶタイヤ』で民間放送連盟賞テレビドラマ番組最優秀賞、ATP賞テレビグランプリほか受賞。近年の作品に『沈まぬ太陽』『楽園』『株価暴落』『震える牛』などがある。

自分を振り返り、人生を見つめ直したくなる物語

池井戸 僕の周囲には何人か、信頼できる評論家というか、読み手がいるんです。おべんちゃらを言うのではなく、自分の意見をストレートに言ってくれて、かつそれが一般読者に近い人。青木さんはそのおひとりで、ずっと放置していた『アキラとあきら』についてドラマ化したいという熱いメールをいただいた時、「青木さんがここまでおっしゃるのだったら」と思ったんです。

advertisement

青木 ありがとうございます。池井戸さんの作品で書籍化されていないものはいくつかあって、僕、けっこう読んでいるんですよ。ドラマの原作にするなら、実は別の、町工場を舞台にした小説がつくりやすそうだなと思っていたんですが、以前に『下町ロケット』を作らせていただいたこともあり、今回はまったく違うものにチャレンジしたいと思いました。それに『アキラとあきら』は、池井戸さんの新しい世界を発見したという感じがすごくしたので。

池井戸 そうですか?

青木 ええ。まず、子ども時代がここまで描かれている作品はあまりなくて新鮮だったし、ふたりのルーツ探しのような筋立てが、大人目線で読んでも面白かった。小説は「あなたは子どものころ、どうだった?」という感じの投げかけから始まるじゃないですか。それをきっかけに自分の過去を思い出して、彬と瑛の物語を追いながら、どういう幼少期、青年期を生きてきたから今があるのかという、ある種、読み手もふたりと同じ体験をさせてもらえるというか……。僕自身も、なぜ今この仕事をしているかというと、やはりちょっと父の影響があったりするので。僕の父、テレビコマーシャルのディレクターだったんですよ。

池井戸 へぇー。

青木 小さいころから父が作ったCMを見て育ったから、この仕事を選んだ時も何となく、父がやっていたから自分もやれるんじゃないかと思う部分がありました。最初から「これだ!」というわけじゃなくて、あくまで、やっているうちに向いていることがわかってきたという感じではあるんですが。

池井戸 そういうことって、ありますよね。僕の父はアマチュアで現代詩を書いていて、うまく書けると見せてくれて、僕はそれを読んできた。だから、創作がわりと身近にあったんですね。まあ、現代詩と小説は世界観がまるで違うので、直接的にはリンクしませんが。

青木 そうでしたか。今、こうして映像づくりをやっているのが運命的な感じもしていたんです。本作は「宿命」がひとつの重要なキーワードですが、読者と同じようにドラマの視聴者も、人生を見つめ直すきっかけになるんじゃないだろうかと。

池井戸 原作を預ける立場としては、青木さんはオーソドックスにきっちりつくる方だと認識しています。WOWOWは、視聴者がどんな人であるかがはっきりとわかっている。だから、その人たちに合ったつくりができるし、中身を重視し、ストーリー性を保ったドラマができるんでしょうね。

階堂父子はできすぎ? 原作さながらの清々しい配役で

青木 池井戸さんは「小説は山崎瑛を主役にする」とおっしゃっていましたが、ドラマは、どちらかというと連載の原稿をベースに階堂彬に重きを置いたつくりにしました。小説がそうであるように、たぶん多くの人は、圧倒的に庶民の瑛のほうに感情移入しやすいと思います。が、彬の側も後半、父や弟との関係などがどんどん盛り上がってくる。父と息子、兄と弟でしか語れないシーンもあって、そういうところもいいなと思いました。

池井戸 小説の書き直しとドラマ制作が同時進行だったので、今回はもとになる本がない。ですから、連載の原稿をベースに自由にどうぞということにしたんですよね。

青木 僕としてはもちろん原作の最新版は読ませていただいて、どういうふうに変わっていくんだろう?というのも常に気にかけていました。こちらからは台本もお送りしていたんですが……。

池井戸 僕はもともと、台本はあまり読まないことにしているんです(笑)。青木さんサイドは「こうしたら面白い」という映像をつくればいいし、僕は僕で小説を面白く書けばいいということで。

青木 そうですね。運命に翻弄され、やがて共通の課題に向き合っていくふたりの友情物語だという軸は変わらないので、そこに行き着くまでの見せ方にはいろいろあるだろうし、「自由に」というお言葉をいただいていたので、最終的には迷いなくつくれました。小説では削られてドラマでは生かした場面のひとつに、幼い彬が塾をサボった時に人助けをする場面があるんですが、毅然としていていいんですよね。瑛も、周囲の大人たちから学習していくまっすぐさがあって、地に足がついている。「さすが池井戸さんのつくった子どもたちだ!」と感心しました。

池井戸 ハハハ。それはそれは。

青木 彬は向井理さんにお願いしましたが、清潔で正義感が強く、頭のいいプリンス感がイメージ通り。瑛のほうは、もう少し泥くさいというか、泥をかぶってでも人を救うような純粋さが出せればと思い、斎藤工さんに。今回はセクシーさを封印してすごく純朴な感じで、とてもいいです。それに、彬の父親の一磨がまたすばらしい人物で……。本当に、「この親父あっての息子だ!」と。塾をサボった時に、今こうやっていろいろなことを経験しておくことのほうが人生では大事だと言う場面が、とても印象的で。

池井戸 フフフ。

青木 原作を読んだ時から、一磨は石丸幹二さんに決めていました。ルックスも何もかも容赦がないくらいすべてが揃っていて、彬と同じく汚れないオーラがある。あんなサラブレッド感のある俳優さん、なかなかいないです。

池井戸 僕はミュージカルや舞台をよく観ていて石丸さんとも何度か接点があるんですが、確かにプリンス感、ありますよね。でも、小説で書いていて楽しかったのは、一磨の弟たち。晋、崇という、彬にとっては叔父たちですが、家業を傾けるあのバカっぷりがね。もう、彼らが主役でもいいと思うくらい、書いていて楽しくて(笑)。映像でも「腹立つなぁ、こいつら」というところを見せてほしいです。

青木 ドラマで演じるのは、木下ほうかさんと堀部圭亮さんですね。お兄さんから能力が若干欠ける人物、ということで、人選はけっこう悩みましたが、おふたりとも相当いい、というか悪いので、どうぞご期待ください(笑)。

対決に次ぐ対決。最終回まで、ご期待ください!

池井戸 それにしても、予告映像を見た時は、驚きました。ふたりが銀行の新人研修で激突する、小説では中盤の山場になる場面が最初に出てきたので。このあとどうやって続けるのかな?と、若干心配になりましたが(笑)。

青木 ハハハ。物語は少年時代から始まりますが、ドラマではやはり、主役ふたりを初回に出す必要がありますので。ふたりが対決してその後のある種の友情を感じるという彼らの宿命や運命を象徴するには、あの場面が最適かなと。

池井戸 なるほど。あそこ、実は僕がいちばん好きなシーンなんです。それに、毎回思うことですが、映像は着るものもセットも最初に全部用意するのが、本当に大変ですよね。小説だと、書きながら「ああ、彼はこういうヤツだったんだ」と気づいていく部分があるんですが……。撮影現場を見に行くと、普段、自分の想像がいかに足りていないかがよくわかります(笑)。

青木 フフフ。ここに注目していただきたい!というのは、まだ撮影中ですが、やはり最終回になるでしょうね。彬と瑛、並行して動くふたりの物語が、最後にぐっと近づく。それまでの成長を見守ってきた視聴者の方に、きっと満足していただけると思います。
 

「ダ・ヴィンチニュース」にてあらすじコミック配信予定!

コミック

イラスト/きっか

取材・文=大谷道子 写真=干川 修

WOWOW『連続ドラマW アキラとあきら』
7月9日(日)夜10時放送スタート(全9話) 第1話無料放送

特設サイト:http://www.wowow.co.jp/dramaw/akira/


今月のおすすめ書籍を紹介中!