ダ・ヴィンチ本誌で、鳥飼茜のマンガ連載『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』スタート! ■記念対談(後編) 岸田繁(くるり)×鳥飼茜

ピックアップ

更新日:2017/6/8

ダ・ヴィンチ7月号からスタートした、鳥飼茜さんの新連載『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』。この作品が、昨年リリースされた、くるりの『琥珀色の街、上海蟹の朝』に強くインスパイアされたということで企画された本対談。後編は、岸田さんのエッセイ集『石、転がっといたらええやん。』の話題から始まった。本作は『ROCKIN’ON JAPAN』で2006年から続く11年以上も続く連載の書籍化。京都のこと、旅のこと、電車のこと、酒のこと、そして、音楽のことなど、内容も語り口もさまざまで、そのときどきの岸田さんの頭の中を覗き見してるような気分になる大ボリュームの一冊だ。

※ダ・ヴィンチ7月号本誌には、鳥飼さんのインタビューも掲載。本編『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』とともに、そちらもぜひごらんください。

(右)きしだ・しげる●1976年、京都府生まれ。作曲家。ロックバンド・くるりではギター&ボーカルを務める。2016年に結成20周年を記念し、ベストアルバム『くるりの20回転』を発売。今年5月、岸田が初めて交響曲を作曲した『岸田繁「交響曲第一番」初演』がCD化された。

advertisement

(左)とりかい・あかね●1981年、大阪府生まれ。2004年デビュー。10年より『モーニング・ツー』で『おはようおかえり』を連載し、『地獄のガールフレンド』『おんなのいえ』などで大きな注目を集める。現在、『先生の白い噓』『ロマンス暴風域』『前略、前進の君』を連載中。

理想半分、不安や懸念半分みたいな世界を
自分の力で作り出してみたい。(鳥飼)


僕はたまに先行しすぎて、
現実が歌詞の通りになったこともあるんです。(岸田)

  

ロックは軽薄だと思っていました

鳥飼 『石、転がっといたらええやん。』を読むと、ずいぶん昔からクラシックがお好きだったんですね? ヨーロッパを回っていろんな音楽家を訪ねたお話を読んで、「ああ、この頃から『交響曲第一番』をやりたかったんやなあ」って勝手に想像しました。

岸田 クラシックは、小さい頃から両親が聴かせてくれて。あと、映画が好きやったんです。当時は「インディ・ジョーンズ」シリーズみたいに、オーケストラ楽曲が多かったから。ロックって、ずっと軽薄やと思ってたんですよ。自分のリテラシーとして、「なめ猫」でギリギリアウトみたいな。コンプレックスなのか嫌悪感なのかわかりませんけど、ずっとそういう気持ちがありましたね。

鳥飼 えーっ、幾つくらいまでですか?

岸田 今でもありますよ。バンドも、まさか自分でやるとは思ってなかったですし。小さい頃は、バイオリンですら自己顕示欲の表れのような気がして、ちょっと無理と思ってました。ピアノも嫌で習いませんでしたし。大人になってから、めっちゃ後悔しましたけども(笑)。

鳥飼 『石、転がっといたらええやん。』は、2006年からの連載ですよね。その時々に作ったであろうCDを聴くと、これまで以上に立体的に感じられるようになりました。

岸田 そんなにたくさん聴いてくださって……。

鳥飼 文章もとてもお上手ですよね。内容も、日常的な日記風のものから小説まで多岐にわたっていて驚きました。SF小説の「東京――山の手の内側、森林へ」は、本当にすごいと思いました。

岸田 それ、書いたのが08年ですから、もちろん震災や今の社会状況なんか意識しなかったんですけど、ずいぶん重なるところがありますよね。僕、たまに先行しすぎて、現実が歌詞の通りになったこともあるんです。「東京――山の手の内側、森林へ」は、なんか自分で書いた気がしないですね。

鳥飼 多分、日常に予兆がいっぱい落ちているんでしょうね。それを集めると予言みたいに当たってしまう。

>>鳥飼作品はハードコアです